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(岩田)ありました!(田畑)何!? 本当にあったか!
(岩田)はい。これで間違いないと思います。
「1912 瑞典 ストツクホルムオリムピック記□映畫」。
ハハハハハ… これだ これだ。
やったな 岩ちん!
黒沢さんに知らせましょう。
(東)しかし 日本人が初めてオリンピックに出た時の開会式が見たいとはさすが 言うこと
が違うねえ。
当たり前だよ。 天下の黒沢 明だぞ。
カット!
(志ん生)あっ そうそう黒沢さんって有名な映画監督が東京五輪の記録映画 撮るってこの
間 新聞で発表になりましたな。
まあ どうなるかは分かりませんがしかし 何だって そんな開会式なんか見たがるんでしょ
うかね?
「例によって 時計を明治まで巻き戻してみましょう」。
(鐘の音)
(内田)事務局から プラカードの表記についての問い合わせが。
(治五郎)表記?(四三)「日本」でお願いします。
うん?日本は 日本です。
そのまま 「日本」と書くべきです。
(笑い声)
そうでなければ おるは出ません!
(大森)西洋人に漢字は読めんよ 君。
(弥彦)そうだよ。ここは 英語で「JAPAN」が無難だろう。
ばってん それは英国人が勝手に付けらした呼び名ばい。
日本人が日本のこつばな~し そぎゃん ヘンテコな名前で呼ばにゃいかんとですか。しか
しだね 金栗君日本は 初参加なのだよ。だからこそ 正式に「日本」と書くべきです。
読めなきゃ意味がないんだよ!
東洋の日本が 国際大会に参加することを世界に知らせる必要があるんだよ。
ばってん 「JAPAN」じゃ奮い立たんとです!
まあ… うん…。
金栗君の気持ちも分からんでも…。
金栗じゃなか! 俺は金栗ばい!
どうした? 日本を出る時にはみんな 仲よくやってたじゃないか。
一体 何があったんだよ。
(安仁子)ひと言では語られないよ。
おいおい…開幕まで あと1週間しかないんだぞ。
あんたのせいだよ。えっ?
12秒 12秒 12秒!
100m 12秒と言ったね?
君が12秒で 群を抜いておった。
あんたが 記録のことばかり言うから俺は 一度 押し潰されたんだ!
今頃来て 勝手なことばかり言いなさんなよ 嘉納さんよ!
わっ!ちょ… 大丈夫かね?
「日本」でなければ 俺は辞退します。
すいまっせん。俺は頑固な肥後もっこすだけん。
ばってん プラカードば持って歩くとはこん おるです!
「JAPAN」なら俺は やめさせてもらいますけん。
(ため息)だったら 僕も辞退しよう!
三島君まで 何を…。
僕と金栗君は戦友だ。
国の名前が違えば共に戦うことはできません。
頑固な肥後もっこす!
思えば 九州の山奥から東京に出てその東京ば出て 大陸に渡り 1か月。
こぎゃ~ん晴れ舞台に立つなど考えもせんかったです。
ばってん… くじけそうになったつも一度や二度じゃなか。
そぎゃん時 おるは日本の… 熊本の… 東京高師の面々の顔ば思い出して乗り越えまし
た。
西洋人ば 悪く言うつもりはこれっぽっちも なか。
ばってん「JAPAN」では対等に戦えんとです。
(大森)しかし 漢字で「日本」では君が日本人であることも伝わらないんだぞ。
それでいいのか? いいのか それで!?
構わんです。
おるは ジャパン人じゃなか。
日本人です。
嘉納先生…。
頼もしい!
えっ?
はじめは驚いたよ。
私が遅れてきたせいで 君たちの気持ちがバラバラになってしまったのかと。
いや そうじゃない。互いに認め合ってるからこそ自分の意見を 遠慮なく ぶつけ合える。
これぞ相互理解。私の不在が 君たちに成長を促した!
フフフ。 遅れてきて大正解!ハハハハハ…!フフッ。
…で あの~ プラカードの表記の方は?
(志ん生)「結果は後ほど。さ~て 7月6日は風一つない快晴なり。スタジアムの横の広場
には初参加の日本選手も加えて28か国 3,000人の代表が集まった」。
♪~
(笑い声)
♪~
「よ~うっ!」(太鼓の音)
♪~
♪~
♪~
♪~
♪~
「よ~うっ!」(拍子木の音)
すいません すいません。
(治五郎)おい。あっ お待たせしました。
うん!
ありがとうございます。(内田)田島先生 こちらです。
え~っと… あっ いました いました。
嘉納先生 お見えになりました。
(田島錦治)あ~ どうもご無沙汰しております 嘉納先生。
(治五郎)すまんね ご足労願って。いえいえ。
何か 私なんかが加わっていいものか。
問題ないよ。 日本人じゃないのも交じってるから。
(ダニエル・英語で)
オーケー 安仁子。うん?
(英語で)
おい 君 足袋で歩くのかね?はい。
笑われるよ。
しかも 何だね? これ。「JAPAN」じゃないのかね。
イタリアの次だぞ?「I」の次は「J」だよ 「JAPAN」。
いいんです これで。
(孝蔵)<午前10時半。アルファベット順に整列した各国選手団は大スタンドを埋める2万人
の拍手に迎えられいよいよ 堂々の入場行進です>
♪~
(拍手と歓声)
ワ~!フォーティースリー! 弥彦~!
「三島君が旗を持ち私が標識をささげて立てばあとに従う選手なし。たった2人の入場行進」
。
キャ~! ハハッ ニッポン!ニッポ~ン!
回想 (治五郎)ローマ字で「NIPPON」。表記は N I P P O N。 NIPPON!これ
なら 観客も外国人選手も皆日本の本当の呼び名を分かってくれるはずだ。
いいでしょう。
よかです。
よし! みんなで笑って歩こう。
(安仁子)ニッポン… ニッポン!ニッポン! ニッポン! ニッポン!
(観客たち)ニッポン! ニッポン!
「観客席から『ニッポン! ニッポン!』の声 起こる。生きた心地なし」。
(観客たち)ニッポン! ニッポン!
(一同)おお~!(拍手)
無声映画だね。そりゃそうだろ 明治45年だよ。
今じゃ カラーテレビの時代だもんね。ヘヘヘヘ…。
日章旗を持ってるのが三島弥彦選手。
…で プラカードが金栗四三選手だそうです。
(東)おっ イタリア来たぞ。 次だ 次。
あっ 来た!熱っ…!
あれ? 飛んだ? えっ これだけ?嘉納先生 いました?
ちょちょ… ちょっと待ってくれ。タバコ 逆にくわえて 見てなかった。
さっきの もう一回 もう一回。(岩田)あ~ 分かりました。
日本人が 初めてオリンピックの大舞台に出た歴史的瞬間。
たった これしか残ってないそうです。
金栗さんフレームから切れちゃってるし公式な写真も残ってるんですがせっかくの「NIPPON
」 旗で隠れちゃって金栗さん 写ってないんですよ。
ノー ノー ノー…。
(英語)
<片や 安仁子が撮った写真はというと…>
(安仁子)オール ライト…。(写真を撮る音)
(安仁子)ワッ ハハ~!(志ん生)三島君が写ってない。
もう しょうがねえ。とっとと競技に移りましょう。
男子100m走 予選です。クックッ クックッ…。
こうですかね? あいたっ。
あっ 出てきましたよ。でかいな 西洋人は。
この席は 誰が取ったのかね?
(内田)私が ひとつき前に手配いたしました。
(号砲)
(治五郎)遠いよ!(内田)えっ?
(治五郎)これじゃ どれが三島君か分からんよ。
(内田)でも 開会式は見やすかったですよね。
見てないよ。 見れんだろ開会式は歩いてるんだから。
あっ… そうでしたな。
(治五郎)三島君は 何組目だね?(内田)いや あの…。
(田島)あれは三島君?えっ 三島さん?
(田島)いや チリの選手だ。あっ フィンランド?
ああ チリ。
(号砲)
速か… 速かですね。
おんなじ人間とは思えんばい。
(号砲)
(号砲)
(号砲)
やはり おじけづいて 棄権したのかな?
いや 三島さんは やります!必ず やってくれっとですよ。
(シマ)奥様 大変です! 奥様…。
(孝蔵)<それは 弥彦が3週間前に投函した絵葉書でした>
(弥彦)「拝啓 シマよ俺は もう 何もかも嫌になった。戦意喪失。西洋人の脅威におびえる
ばかりでとても走る気になれぬ」。
「母上 兄上 これが最後の便りになるかもしれません」。
(弥彦)「これが最後の便りになるかもしれません。短い人生でしたが 弥彦は…」。
(弥太郎)今すぐ帰ってくるようスウェーデン公使に電報を打ちましょう。 おい。
たった一人で 外国人相手に戦争を仕掛けようって顔だな。
三島君 短距離はねタイムを競い合う競技だ。
つまり 敵はタイムのみ。
一緒に走る選手のことはライバルではなくタイムという同じ敵に立ち向かう同志と思いたまえ
。
♪~
ありがとうございます 監督。
楽になったかね?
はい。
もっと早く言ってもらえたらもっと楽になったと思います。
せめて 3週間前に言ってくれたら。
(和歌子)ハハハハハ! 心配せんでよか。
「弥彦は勝ちます。□摩隼人の底力 見せてやります」。
そう書いてあるじゃろが。
いや だって 母上は字が…。
字など読めなくとも息子の本心は分かります。
弥彦は必ず勝つ!
(大森)おっ 行くのかね?はい!
よ~し!
「これが最後の便りになるかもしれません」。
「短い人生でしたが弥彦は三島家の誇りのために命を賭します」。
あっ 来た… 来た!来た来た 来た来た!
三島さん! 三島さ~ん!
(治五郎)ああ 間違いない 三島君だ!
三島君!遠か~ もう!
(大森・英語で)
「ああ 神よ 神よ。無神論者でも物質論者でもこの瞬間 祈らずにいられようか。どうか 我
が友に勝利を」。
♪~
(号砲)
三島さん! 三島さん いけ!いけいけ いけいけ…。
三島さん そこから!そこから そこから!
三島さん!
(拍手)
(ダニエル・スウェーデン語で)
(田島)ビリですか。いや… しかし…立派な走りだった。 うん 立派!
ヒョウ。
エクスキューズ ミー。
えっ?
笑っとります。(治五郎)何?
あっ… 三島さん 笑ってます!
笑ってます。
行きましょう!よっしゃ!
おめでとう。ありがとうございます。
三島さん!やあ 金栗君!
ご苦労さん! よくやった。
私の記録 11秒8だそうです。
12秒 切りました。
負けはしましたが自分の最高記録を出したんだから成功だと思っています。
これから いかにして世界レベルに追いつくかですね。
うん! そうだ そうだ その意気だ!
実に 立派だったよ 三島君。
ありがとうございます。
ヒョウ。オー マイ ラブ。
(笑い声)
金栗君…やはり 日本人には短距離は無理なようだ。
えっ?
君に懸かっている 頼んだよ。
えっ… ばってん まだ 200と400が。
お~ 安仁子 サンキュー。
「三島さんは4日後 200m走の予選に出場するもやはり 惨敗」。
(円喬)フンわざわざ スウェーデンまで出向いてかけっことは…。
(せきこみ)いいご身分でげすな。
・(先輩噺家)花魁 そんなこと言ってうそじゃないんでしょうね?
(孝蔵)師匠 あたしと同じ名前の噺家がいますよ。(円喬)ああ そうかい。
見て下さいよ 「三遊亭朝太」って。
ああ それ 君だよ。
えっ?私が席亭に頼んで 入れてもらったんだよ。
(せきこみ)
まずかったかい?えっ でもまだ 小ばなしの一つも伺ってねえですし。
できるよ。
君には 何かあるから。
えっ… 何か?
・(拍手)お疲れさまでした。
(先輩噺家)はい お疲れさん。ちょいと 兄さん。
いけませんなあ あそこんとこああいうふうにやっちゃあ。
あ~ 分かってるよ。
分かってねえから 言ってんだよ。吉原に あんなゲスな女郎がいるかい!
師匠 出番です。 もう太鼓が。
じじい!(先輩噺家)はい 分かったよ!
そんなわけで初高座の日取りが決まっちまった。
<師匠の高座ぶりってえのはきちんと座布団に座ってね…懐から 小菊の紙を1枚抜いて2
つに折って チ~ンと はなかんで鼻の下をひょいと こすって座布団の下に入れる。そした
ら九谷焼の湯飲みを押し頂いて…。飲むんじゃねえ。 喉 湿らせるんだ>
でもって さびた声で…。
え~ まだ江戸と申しました時分に…。
え~ まだ江戸と申しました時分に…。
チッ…。
駄目だな。
(志ん生)九谷焼の湯飲みを押し頂いて 飲む。
(清さん)駄目だろ 飲んじゃ。
バカ野郎 分かってんだよ。
気ばっかり… 焦っちまってよ。
それなら いっそのこと一杯でも かっ食らっちまった方が力抜けて いいあんばいになるか
と思ったら これだ。
ヘベのレケだ。 ヘヘヘ。孝ちゃん お久~。
よし! あ~ 行こう 行こう 行こう。
今日は いいんだ。今日は いいんだ。 今日は いいんだ。
何よ 野暮~。これが へぼなわけじゃねえから。
おい 孝ちゃん 初高座は いつだい?
うん? 下席だから あ~ 16日か。
小梅誘って 見に行くからよ。
おい 今度は しくじんなよ。
しくじんなよ。 ヘヘッ。
(太鼓の音)
(一同)おお~!(拍手)
え~ 何事も初めてってのは要らぬ力が入っちまうもんで飲んじゃうやつもいればこんなこと
するやつもいて。
(ノックとドアが開く音)
あっ 金栗君 何をしておるんだね?
押し花ば しとります。
(治五郎)押し花? フフッ。大丈夫か? 君。
外へ出たまえ 外へ。
北欧の空気を吸って 元気を出せ。
(においを嗅ぐ音)
午前中…スタジアムば のぞきに行きました。
(歓声)
大歓声ば 聞いとるとあん旗ざおに日の丸ば揚げんといかんと思って焦って モヤモヤして。
気ば 静めるため 押し花ば しとります。
金栗君… オリンピックに出ることで君が 過重の責任を負うことは一切ないんだ。国民の期
待など考えず伸び伸びとやりたまえ。
はい。
スッスッ ハッハッ スッスッ ハッハッ…。
(ラザロ)ア~!あっ。
ハ~イ ラザロ!
カーペンター!
(コーチの指導する声)(ラザロ)アア~!
ハ~!
負けたら切腹らしい。
(ラザロとコーチの声)
♪~
(ノック)
金栗です。・(弥彦)入りたまえ。
失礼します。
ばっ!あっ すまん。
たまには 上半身も鍛えようと思ってね。
ああ…。
あっ… 明日 400mの予選だけん激励に来ました。
うん ありがとう。
どぎゃんですか?
実に楽しみだね。
一つ 聞いてもよかですかね?何だい?
100m走ったあと三島さん 言いましたよね?
やはり 日本人には短距離は無理なようだ。
あれは… どぎゃん意味ですか?
見ただろう 僕のレース。
完敗だよ。
日本では無敗の僕が 100も200も最下位。
圧倒的敗北さ。
明日も勝てるとは思っていない。
でも… 楽しみだ。
明日も走れることが 僕は楽しいよ。
こうなったら 徹底的に負けてやるさ。ハハハ。
おるは駄目です。
(ため息)
な… 何か こう…。
モヤモヤした…モヤモヤした何かがず~っと居座っとっとです。
羽田は 10里の距離ば 完走できるかそんことで頭がいっぱいで勝とうとか オリンピックと
か考える余裕もなかったですけん。
何も考えずに 走ればいいんだよ。
金栗君 我々は走ればよか。
精いっぱい やりさえすればそれでよかっですよ。 ハハハハハ…。
それができんけん つらかですよ!
す… すまん。
何ね!? 人が真剣に悩んどっとに熊本弁で バカにして!
君が言ったんだけどね。
我々は走ればよか。
精いっぱい やりさえすればそれでよかっですよ。
あれは…。
あっ あれは 短距離の話だけん。短距離と長距離は別だもんね。
ああ… そうかい。
そりゃあ 短距離ば 12秒とか…400でも せいぜい1分の勝負だけん考えんでも走れる
ばい。
ばってんこっちは2時間以上ありますけん。
考えてしまうばい。モヤモヤしたもんば ずっと…。
そのモヤモヤは 君…プレッシャーだよ。
西洋人は それをプレッシャーと呼ぶそうだ。
プレ… プレッシャー?
プレッシャー。
こん… こんモヤモヤは…プ… プレッシャー…プレッシャーですか?
西洋人も持っとっとですか? これば。
うん。 君だけじゃない。
無論 僕も持っとる。
そぎゃんですか…。
はあ~…。
正体さえ分かればこぎゃんもん… 怖くなかです!
(笑い声)
お邪魔しました!
プレッシャーが大きいと スランプに陥るからね。
ス… スランプ?
ハハハ… いや… うん 何でもない。
スランプ?いやいやいや…。
忘れてくれ。 ハハハハ。ス…?
大丈夫だ 金栗君。
スランプ?
サンキュー。
どうせなら 正面から撮ってくれよ。
はい。
よっしゃ… うん。
行ってくる!
♪~
ナンバー 743 フロム ジャパン ミシマ。
(治五郎 田島)三島君!フロム ジャパン ミシマ。
(歓声)
レディー…。
えっ 2人だけ?
<なんと 5人中3人が直前に棄権したんだそうです。2着までが予選通過なんで わざわ
ざ走らなくてもいいようなもんですが>
セット。
(号砲)よし! いいぞ いいぞ!三島君! いいぞ いけいけ!いけ 三島君!三島さん!
三島君!三島さん!
いけいけ~!
頑張れ~!よ~し いいぞ!
(歓声)
三島さん!
回想 (弥彦)僕は 勝ち負けには こだわらない。
むしろ 僕は一度くらい負けてみたいと思っている。
回想 (治五郎)世界の中心で走ってみたいと思わんかね?
面白そうですね~。
本当の僕は違う。 もう限界だよ。
三島さん 我らの一歩は…日本人の一歩ばい!
♪~
頑張れ 頑張れ 三島君!三島君!
頑張れ 頑張れ!いけ! いけ!
よしよし よしよし!
もう少しだ!いけ! いけ!三島君 頑張れ!
三島君 頑張れ!
♪~
三島さん!(田島)結局 ドベか。
ドベでも 2着だ! 予選通過!
(治五郎)56秒!
三島君 よくやった!準決勝に残るとは 大したもんだ!
日本スポーツの記念すべき日だ!
(田島)次も頼むぞ。
次は… ないです。
準決勝は やめます。
(田島)棄権するのかね?
日本人に短距離は無理です。
100年かかっても… 無理です。
(治五郎)三島君…。
もう十分… 走りました。
察して下さい。
三島君。
撮れた?
あっ… すんまっせん。
そっが 一枚も。
もう走れ~ん! 勘弁してくれ!
すんまっせん。
三島さん…。
楽しかったですか?
ああ。
(治五郎)悔いはないのか?
(弥彦)はい。
ならば よし!
準決勝は棄権しよう!
♪~
よか走りでした!
お疲れさまです。
よかったぞ… うん。
ダニエル… テイク ア フォト…。
オフコース。
レディー?
(写真を撮る音)サンキュー。
帰りましょう。(笑い声)
足が痛いよ。ああ…。
(治五郎)大丈夫か?
(拍手)
ひゃあ~!
ひゃあ~!
(弥彦)昨夜は眠れたかね?
はい!
ひゃあ~!
うそです。
白夜と プレッシャーで。
そうかい。
モヤモヤして 頭がさえてもう いっちょん眠れんかったです。
どう走ろうとかどこで ペースば上げようとかず~っと考えとりました。
もう こうなったら俺は とことん考えます。
考えて 考えて…プレッシャーと二人三脚で走ります。
ひゃあ~!
ばっ… 三島さん?
(笑い声)
一度 やってみたかったんだ。
ひゃあ~!あっ!ハハハハハ!
ひゃあ~!
気持ちいいね!
ひゃあ~!
三島さん 400m 見事な走りでした。
うん。 ありがとう!
がむしゃらな鬼の形相 奮い立ちました。
俺も 三島さんのように笑って ゴールば します。
そっだけは決まってます。
見とって下さい。うん。
(笑い声)
今日も暑いぞ~!
ひゃあ~!
ひゃあ~!(笑い声)
(可児)<韋駄天がついに世界の中心でマラソンに挑む>
(ダニエル)バッテン!こりゃ いけるばい!
火事だ 火事だ 火事だ 火事だ 火事だ!
<暑い 暑い 暑い!スウェーデンって こんなに暑いの?>
よし 来た~!
(スヤ)四三さん 頑張って~!
あっ…。
ストックホルムオリンピックで海外選手の速さを目の当たりにした三島弥彦。
100m決勝で アメリカ代表選手が出したタイムは 10秒8。
それに対し 三島は1秒以上の差をつけられ予選敗退。
「日本人に短距離は100年早い」という三島の言葉から日本のスプリンターたちの挑戦が
始まったのです。
4度のオリンピック出場を果たし日本の短距離界を長く引っ張った朝原宣治さん。
三島さんが ストックホルムのオリンピックに行った頃なんて誰も世界の現状が分からない
わけですよね。
そんな中で 自分のレベルも世界で どうなのか分からないのにいきなり オリンピックに行
って戦うっていうのはそれは まあ大変なことだったと思います。
三島から96年後北京オリンピック 400mリレーで日本男子はトラック種目で初のメダルを
獲得しました。
今の若い選手たちが堂々と戦えるっていうのもやっぱり 先人の選手たちの努力とそこまで
来てるっていうベースがあるからなんじゃないかなと思います。
現代の韋駄天たちが世界に挑戦を続けます。