可憐ガールズ→BABYMETAL
BABYMETALが結成された経緯については意外と知られていない。
KOBAMETALというアミューズで閑職に回されていた男が、巨大なバイクにまたがり、奇声を発しながらさくら学院の門をぶち破ったのである。
その時のKOBAMETALは指にスカル・リングを嵌め、骸骨のシャツの上には、鋲をたくさん打ちこんだ黒いレザージャケットを羽織っていた。
縮れた長髪の中には蛇のタトゥーが彫られた凶相が浮かんでいた。
さくら学院という楽園に地獄からの使者が訪れたのだ。
そして校長室に押しかけ、校長と対面したのである。
「俺はメタルをやりたいんです。おたくの水野由結という子を使って、可憐ガールズを復活させたいんです」
そうつぶやく亡霊のような男に校長は慄然としたが、校長はさくら学院の生徒のために、出来る限り威厳を保ちながら接することにした。
「あなたのおっしゃってることは意味がわかりません。なんで水野由結がメタルをやらないといけないんですか」
だがKOBAMETALという狂人に話は通じなかった。
「可憐ガールズでメタルをやるんです」
「水野由結を加えて四人編成にするわけですね」
「年齢的にフィットする子を中心に選びたい。島ゆいかは外します。あと、ボーカルはひとりでいいので、武藤彩未は外します。中元すず香だけいればいい。中元に歌わせて武藤にダンスだけやらせると不協和音が生じますからね」
「待ってください。水野由結は武藤彩未の幼なじみで、その流れでアミューズに入ってるんですよ。武藤が連れてきた水野を可憐ガールズに入れて、可憐ガールズから武藤を外すのは無理があります」
「あくまで課外活動ということにしてくれればいいんです。可憐ガールズ復活でメタルで世界征服という野望は伏せておいて、あくまでお遊びとして始めるんです。すでにデモテープも作ってあります」
さくら学院校長はそのド・キ・ド・キ☆モーニングという曲を聴いて唖然とした。
可憐ガールズにギターサウンドを噛ませただけだったからだ。
このKOBAMETALという男がメタルで失敗して閑職に追いやられた経緯が目に浮かぶようだった。
「ともかく俺はメタルがやりたいんだよ。中元すず香・水野由結・菊地最愛の三人で可憐ガールズを復活させるのでよろしくお願いします」
「逸材を三人も使うならどんなプロデューサーでも売れますよ。確実に売れる素材を、あなたの個人的な趣味のメタルで使い潰すなんてありえない。だいたいそうやって分断されたら、さくら学院四天王の一人の武藤彩未が終わってしまう。すべての生徒を守るさくら学院校長として決して認められない。アミューズも大損害です。どうりであなたがアミューズで閑職に追いやられているわけだ」
「なんだと!」
KOBAMETALは激憤した。
これまで何度もメタル復活の野望を閉ざされてきた人生。
異端者として自分を蔑んできた世界。
その象徴がさくら学院校長に思えたのだ。
地獄の住人であるKOBAMETALにとって、遠い天上界の楽園であるさくら学院はレジスタンスの対象であった。
KOBAMETALはナイフを取り出すとさくら学院校長の胸を一突きにした。
「アイラブユー!ピーポー!」
KOBAMETALはさくら学院校長の死体を前にオジー・オズボーンさながらに叫ぶのであった。
これによってKOBAMETALの復讐劇は始まった。
KOBAMETALは校長室にガソリンを撒くと廊下に出て燐寸に火を付けて投げ入れた。
その血の色をまとい燃えさかる紅蓮の炎を背にして、新しい未来へと歩き出したのである。
校庭に出ると、避難したさくら学院の生徒が劫火の前に脅えている姿があった。
暗澹たる中世の地獄絵図の中に生け贄の少女が配置されるというメタラー好みの光景である。
KOBAMETALは水野由結の姿を見つけて近づいたのである。
「さくら学院は全焼してしまうね。これではアミューズも大変だ。君が稼いで赤字をどうにかしないといけないね」
KOBAMETALに肩を叩かれると水野由結は悄然として頷いた。
「おじさんは可憐ガールズを復活させようと考えているんだよ」
そして用意していたド・キ・ド・キ☆モーニングを聞かせるのであった。
「可憐ガールズそのままの曲ですね。武藤彩未ちゃんと一緒に武道館のステージに立つのが夢なので、やれるなら嬉しいです」
「彩未ちゃんは実力があるからソロでやっていくんだ。彩未ちゃんの代役として、君に白羽の矢が立ったんだよ」
KOBAMETALは水野由結に背を向けると悪魔崇拝者としてのほほえみを見せた。
音を立てて崩れ落ちながらも炎を吐き出すさくら学院の校舎は、まるでこれからのメタルレジスタンスを象徴しているようだった。
この時にKOBAMETALの頭の中に浮かんだのがBABYMETALというユニット名である。
可憐ガールズのパクリとはいえ、やはりまっさらなユニットとして自分の手柄にしたい。
さくら学院四天王の中で最も人望のある武藤彩未の排除に成功したのだから、実権はKOBAMETALが掌握したのである。
「これからの由結ちゃんはすべてキツネのお告げで行動するんだよ。キツネのお告げ以外のことをやってはいけない」
こうして水野由結から自由意志は奪われ、お告げのままに生きる人形になったのだ。
今や水野由結はさいたまスーパーアリーナを埋め尽くすほどのスターになったが、もはや人間ではないのである。
時折、あのもう名前も憶えていない幼馴染みと一緒に武道館を埋めるという、かつて人間だった頃に誓い合った夢を漠然と思い出して、よくわからないながらも涙がこぼれ胸が痛むのである。
KOBAMETALというアミューズで閑職に回されていた男が、巨大なバイクにまたがり、奇声を発しながらさくら学院の門をぶち破ったのである。
その時のKOBAMETALは指にスカル・リングを嵌め、骸骨のシャツの上には、鋲をたくさん打ちこんだ黒いレザージャケットを羽織っていた。
縮れた長髪の中には蛇のタトゥーが彫られた凶相が浮かんでいた。
さくら学院という楽園に地獄からの使者が訪れたのだ。
そして校長室に押しかけ、校長と対面したのである。
「俺はメタルをやりたいんです。おたくの水野由結という子を使って、可憐ガールズを復活させたいんです」
そうつぶやく亡霊のような男に校長は慄然としたが、校長はさくら学院の生徒のために、出来る限り威厳を保ちながら接することにした。
「あなたのおっしゃってることは意味がわかりません。なんで水野由結がメタルをやらないといけないんですか」
だがKOBAMETALという狂人に話は通じなかった。
「可憐ガールズでメタルをやるんです」
「水野由結を加えて四人編成にするわけですね」
「年齢的にフィットする子を中心に選びたい。島ゆいかは外します。あと、ボーカルはひとりでいいので、武藤彩未は外します。中元すず香だけいればいい。中元に歌わせて武藤にダンスだけやらせると不協和音が生じますからね」
「待ってください。水野由結は武藤彩未の幼なじみで、その流れでアミューズに入ってるんですよ。武藤が連れてきた水野を可憐ガールズに入れて、可憐ガールズから武藤を外すのは無理があります」
「あくまで課外活動ということにしてくれればいいんです。可憐ガールズ復活でメタルで世界征服という野望は伏せておいて、あくまでお遊びとして始めるんです。すでにデモテープも作ってあります」
さくら学院校長はそのド・キ・ド・キ☆モーニングという曲を聴いて唖然とした。
可憐ガールズにギターサウンドを噛ませただけだったからだ。
このKOBAMETALという男がメタルで失敗して閑職に追いやられた経緯が目に浮かぶようだった。
「ともかく俺はメタルがやりたいんだよ。中元すず香・水野由結・菊地最愛の三人で可憐ガールズを復活させるのでよろしくお願いします」
「逸材を三人も使うならどんなプロデューサーでも売れますよ。確実に売れる素材を、あなたの個人的な趣味のメタルで使い潰すなんてありえない。だいたいそうやって分断されたら、さくら学院四天王の一人の武藤彩未が終わってしまう。すべての生徒を守るさくら学院校長として決して認められない。アミューズも大損害です。どうりであなたがアミューズで閑職に追いやられているわけだ」
「なんだと!」
KOBAMETALは激憤した。
これまで何度もメタル復活の野望を閉ざされてきた人生。
異端者として自分を蔑んできた世界。
その象徴がさくら学院校長に思えたのだ。
地獄の住人であるKOBAMETALにとって、遠い天上界の楽園であるさくら学院はレジスタンスの対象であった。
KOBAMETALはナイフを取り出すとさくら学院校長の胸を一突きにした。
「アイラブユー!ピーポー!」
KOBAMETALはさくら学院校長の死体を前にオジー・オズボーンさながらに叫ぶのであった。
これによってKOBAMETALの復讐劇は始まった。
KOBAMETALは校長室にガソリンを撒くと廊下に出て燐寸に火を付けて投げ入れた。
その血の色をまとい燃えさかる紅蓮の炎を背にして、新しい未来へと歩き出したのである。
校庭に出ると、避難したさくら学院の生徒が劫火の前に脅えている姿があった。
暗澹たる中世の地獄絵図の中に生け贄の少女が配置されるというメタラー好みの光景である。
KOBAMETALは水野由結の姿を見つけて近づいたのである。
「さくら学院は全焼してしまうね。これではアミューズも大変だ。君が稼いで赤字をどうにかしないといけないね」
KOBAMETALに肩を叩かれると水野由結は悄然として頷いた。
「おじさんは可憐ガールズを復活させようと考えているんだよ」
そして用意していたド・キ・ド・キ☆モーニングを聞かせるのであった。
「可憐ガールズそのままの曲ですね。武藤彩未ちゃんと一緒に武道館のステージに立つのが夢なので、やれるなら嬉しいです」
「彩未ちゃんは実力があるからソロでやっていくんだ。彩未ちゃんの代役として、君に白羽の矢が立ったんだよ」
KOBAMETALは水野由結に背を向けると悪魔崇拝者としてのほほえみを見せた。
音を立てて崩れ落ちながらも炎を吐き出すさくら学院の校舎は、まるでこれからのメタルレジスタンスを象徴しているようだった。
この時にKOBAMETALの頭の中に浮かんだのがBABYMETALというユニット名である。
可憐ガールズのパクリとはいえ、やはりまっさらなユニットとして自分の手柄にしたい。
さくら学院四天王の中で最も人望のある武藤彩未の排除に成功したのだから、実権はKOBAMETALが掌握したのである。
「これからの由結ちゃんはすべてキツネのお告げで行動するんだよ。キツネのお告げ以外のことをやってはいけない」
こうして水野由結から自由意志は奪われ、お告げのままに生きる人形になったのだ。
今や水野由結はさいたまスーパーアリーナを埋め尽くすほどのスターになったが、もはや人間ではないのである。
時折、あのもう名前も憶えていない幼馴染みと一緒に武道館を埋めるという、かつて人間だった頃に誓い合った夢を漠然と思い出して、よくわからないながらも涙がこぼれ胸が痛むのである。