東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 筆洗 > 記事

ここから本文

【コラム】

筆洗

 作家の姫野カオルコさんは小学生の時からノートに物語を書いていたそうだ。十二歳の時、国語の授業で抜き打ちテストがあった。姫野さんは試験に動揺したか、国語のノートではなく物語用のノートに解答を書いてしまった▼試験後、採点チェックのためノートは先生が職員室に持っていってしまった。姫野さんは焦っただろう。自分の小説が読まれてしまうかもしれない。しかも「恋愛もの」。戻ってきたノートを見てびっくりした。その小説に先生が校正を入れてくれていた▼しかりも冷やかしもせず直しを入れる。それは一つの作品として見てくれたということだろう。すてきな先生である。こっちの先生のやり方はそうではなかった。大分県の小学校の二十代臨時講師。児童が間違えた国語の解答をSNSに投稿し「面白かった」とコメントを付けていた▼子どもらしい間違いがかわいかったので投稿したというが、子どもや親からすれば、失敗をあげつらわれているようで不快だろう▼子どもが考え抜いた解答を教える側が笑いの材料にするようなやり方も悲しい。その投稿が思わぬいじめにつながらぬとも限らないのである▼話題になりそうな写真を後先考えずに投稿する風潮はいいかげんなくならぬか。この誤解答もSNSではなく、数十年後の同窓会で披露すれば、懐かしい笑いをつくる大切な「宝物」だったのに。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】