牧村::忘れられないマネージャーというのが何人かいるんですが、そのうちのお二人が山下洋輔トリオのマネージャーなんです。
上條:チーフ・マネージャーが阿部登、もう一人が柏原卓。
牧村:この二人が今か今かと山下洋輔トリオの出番を待っている時に、メインステージで安田南が唄い出します。ジャズはもういい、フォークを出せという不満が溜まった観客が騒ぎ出すんですが、その時の様子を収録した音源があるので聴いてみましょう。
──観客の暴動の声、ステージの上で安田南のマイクが奪われて討論が始まる音声。
牧村:ステージに上がっていた人たちは別として、この現場を目撃し、体験したのは今やG.Gしかいないので、当時の様子を聞かせてください。
上條:いま聴いていただいたのは、ステージが占拠されて安田南がマイクを奪い取られて討論会が始まる冒頭です。1曲終わって会場がざわめいていた場で、それは言ってはいけないことを彼女は言ってしまったんです。「文句あるんなら上がってらっしゃいよ」と。それを聞いていて、僕はもうね、「ウワァ」と思いました。それで、ステージに2、30人の観客が上がってきてしまって…とにかく僕たちスタッフは楽器を守らなくてはいけない、その間にも背中に空き缶やビール瓶をボンボン浴びせられたという記憶です。
もしもあのステージ占拠事件がなかったら…
牧村:この半日の間に起こったことが、「『人間なんて』を聴いていた観衆が徒党を組んでメインステージを乗っ取った」と面白おかしく語られてきたんです。安田南自身はその後も、ステージ占拠のきっかけを作ってしまったと思わなかったようですが、タイミング悪く、苛立って待っていた観客がステージに上がるチャンスになってしまったんですね。
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