上條:そんなことを言い合えるくらい仲が良かったということなんですよね。
牧村:第1サブステージは、100人が入れば満員になるような小さい空間だったんです。ところがPAがトラブルを起こしてしまいました。それで、もうマイクが使えない状態になったんですね。観客から「人間なんて」のリクエストが来ました。この曲は拓郎がお客さんとコール&レスポンスのようにやりとりができる曲だったんです。ステージには拓郎のバック、パーカッションとエレキギターに加えて、そこに居合わせたミュージシャン全員で「人間なんて」を唄い始めました。普通にやっても20分くらいかかる曲なんですが、他にやることがないので1時間くらいやることになります。周囲にいたスタッフまでも巻き込んで、僕もステージに乗って「ラララ」のところを一緒に唄いました。この時のライブ録音を聴いてみましょうか。
──吉田拓郎「人間なんて」
牧村:これを1時間以上やったんです(笑)。最後なんて、拓郎はまったく声が出なくて空気の出る音がしているだけでした。声だけ出していると貧血が起こるんですね。体力がなくなってフラフラになっていて、いつ前のめりに倒れてもおかしくない状況だったんです。そんな状況の中でもノリつつ、クールな役を引き受けていたのが小室等だったんです。100人くらいで満員になるような空間に、1,000人以上が集まってきてしまいました。PAなしで生楽器と肉声だけでやっていますから、みんな聴こえなくて前に行きたいんです。それで前にいた人が潰されていって、いつ事故が起こってもおかしくない状況になりました。そこで、小室等が止めに入ったんです。「もうここはおしまいにしよう」と言ったんです。メインステージは夜中までやっているわけだから、「メインに行こう」と言ったんですね。ここから事件が起こります。拓郎は負けん気で「ここはサブではなくて、こっちがメインステージだ!」とアジっていたんです。それを受けて小室等は「サブステージに行こう」と言ったんです。メインステージのことです。劣悪な環境でイライラが募っている観客たちの一部が、オー! と隊列を組んでメインステージに向かってしまった。後の伝聞では、この第1サブステージでの出来事は夜に起こった、そこにいた観客がメインステージになだれ込んでトラブルが起こったと書いているんですが、この写真を見てもわかるように、まだ夕方なんです。どう考えても夜ではない。トラブルが起こったのは深夜なので、時間差が5、6時間はあるんです。G.Gはメインステージにいて、どうだったのでしょうか。
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