---------------------------------------- (1)海外からのアクセスを遮断した理由は何ですか?イリュージョンの問題http://blog.goo.ne.jp/halt387/e/a86cdf2ceb7c84e5b795a7936cf90f3fが関係していますか? ----------------------------------------  まず、海外からのアクセスに制限をかけた理由を説明いたします。  弊社のWebサイトやソフトウェアは日本国内向けに制作しており、そもそも海外のユーザーはターゲットではありません。(これは、そもそも弊社の開発するPCゲームがノベル(小説)という分野に属し、日本語の長文を読む事でストーリーを理解することを前提にしているからです(詳細は(2)で回答しております))。  本来ならば、国内の問題である「年齢におけるゾーニング(いわゆる未成年には情報を閲覧させないという制限)」とは異なり、特に能動的に規制をかける必要性を感じない外国からのアクセスではあるのですが、既に各所で報道されている通り、(直接弊社をターゲットとした物では無いにしろ)弊社も含む業界全体に対し海外や国内団体から「海外で問題になっている」と抗議があったようなのです(これがご質問にある「イリュージョンの問題」ということでよろしいでしょうか?)。  そこで、弊社を含むこちらの業界の制作するソフトウェアが「海外において問題になる状況である」と海外の方、国内団体、政治家の方々等が主張されるのであれば、不用意に問題となる可能性のある情報を海外へは流さず、とりあえず、現状では問題の無い(適法である)と確信のおける日本国内のみに制限しておくのは、弊社が社会における企業であり続ける以上、倫理的に当然の事だと思います(もちろん、国内においても、ゾーニングなどの処置は状況に応じて必要であり、こちらも対応しています)。もし、海外において弊社の商品やWebサイトに掲載している画像を単純所持していただけで、当該国において犯罪者となる可能性がある人がいらっしゃるのなら、それは弊社の配慮不足を起因とした問題ですので、悲しむべきことなのです。弊社は当然の事ながらその可能性をできるだけ低くする努力をしています(例えば、弊社のソフトウェアは日本語版のWindows以外では動作しないようにしていますし、その他、多くの項目を動作時にチェックし、国内でのみ使用されるよう、様々な対策を行っております)。今回の行動はその一環でもあるのです。  続いて、海外への販売について説明いたします。  日本国内において、弊社のタイトルは全てコンピュータソフトウェア倫理機構(以下、ソフ倫)の審査を受けて販売しております。すなわち、商品の内容は日本国内において適法とされる範囲にあり、日本国内では指定された販売方法を遵守する限り問題は生じないとソフ倫により保証されています(もちろん現行法の範囲ではありますが)。  但し、このソフ倫による保証はあくまで日本国内に対してのみ行われていることであって、海外への対応はされておりません。つまり、海外において(たとえどんな手段であれ)弊社の商品が販売された場合、その商品に対する保証は何も無いわけです。これはいささか無責任なのではないでしょうか?  日本国内と海外(その海外もいろいろな国家がありますが)では、作品における表現可能な範囲が異なっています。映画などが端的な例です。当該国の審査機構において、その国の法律・条例に合致するかどうか検査され、倫理規定に基づいてレーティングがかけられるというわけです。倫理規定の内容はいわば、各国における文化の違いであり、これを守っていくことは国家という概念がある以上当然のことです。この垣根をいきなり飛び越えることは今の所存在している社会秩序を無視することになります。日本には日本の歴史や文化があるのと同じく、海外のそれぞれの国においても、その国の歴史や文化がある以上、それは尊重されるべきことだと考えています。  ですから、もし、弊社のソフトウェアが海外で販売されるのであれば、海外で販売を行う販社に対し販売権をライセンスし、例えば、その販社が当該国の審査機関において審査を受けた上で販売するといった対応をすれば、物事はスムーズに進むと思います。当然、その場合は、その販社が提供するサーバ上でその地域にあわせた情報提供を責任持って行う必要があるでしょう(現状ではmangagamer(http://www.mangagamer.com/)のような試みもあります)。「郷に入らば郷に従え」という諺の通りだと思います。  今後、この規制範囲の国内外の差異が埋まっていったとすれば、それに対応してどこまでを広く公開してよいものか論議・検討していくことになると思います。これは国内外双方の問題ですので、弊社でも状況を注視しています。  また、これとは別に、この問題を起因として議論されている「日本国内における表現規制の問題」と「違法コピー等、著作権を根とした諸問題」もありますが、これは今回ご質問いただいている「海外との関わりについての問題」とは切り分けて考えなければなりませんので、ここではあくまで「海外からのアクセスを規制するに至った理由」とそれに付随する「海外への情報・ソフトウェアの提供」といった点のみについて言及しています。ご了承ください。 ---------------------------------------- (2)海外で、日本のエロゲーは大人気なのですか?それとも一部のファンが騒いでいるだけなのですか? ----------------------------------------  そもそも、国内市場においても(漫画やアニメといったよりメジャーなコンテンツ産業と比較して)限りなく小さな市場ですから、海外においてはそれよりも更に小さな市場でしかありえないと思われます(国内でいわゆる『エロゲー』を遥かに上回る市場規模のアニメーションですら、海外では苦戦しているわけです。事実GENEON USAなどは撤退していますよね?)。  他のコンテンツ産業すべてに言えることですが、市場投入し、シェアを得るには現地語に翻訳しなければなりません(ローカライズ)。ですが、私たちの制作するノベル形式のゲームは、アニメーションや漫画と比較して膨大な量の日本語の文章がソフトウェアに収録されています。つまり、数メガバイトに渡る文章を現地語へ翻訳するコスト考慮しなければなりません。もちろん日本語版をそのまま販売するという考え方もありますが、外国人の方の中にどれだけ日本語を理解する方がいらっしゃるのでしょうか? 日本語は孤立言語であり、日本以外でほぼ使用されません。そのことからも「日本語を読ませる」という事をベースにしているソフトウェアを海外へ販売して、シェアを獲得し、利益を得ることは今日のところなかなか難しいと判断しています。  過去には海賊版が。最近ではtorrentなどによる流出によって海外へも波及していますが、それが「大衆に受け入れられ大人気」という事と結びついていることはありません。本当に大人気ならば、もっとビジネスに結び付けようとする勢力が台頭するはずです。 ---------------------------------------- (3)エロゲー業界は、「自主規制」で、海外では販売しないように努めている、というのは本当ですか? もしそうなら、なぜ「自主規制」をするのですか? ----------------------------------------  ソフ倫からメーカーに対して「『JAPAN SALES ONLY』とパッケージに記載する事を徹底するように」と、通達が出ていることが、新聞各紙やテレビなどで報道されております(http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090614/trl0906141600001-n2.htm)。  なお、以下は、弊社独自の見解ですので、業界全体を代表するものではありません。  上記にもありますが、表現可能な範囲というのは各国において異なります。ソフ倫が示す倫理規定はあくまで日本国内の法律・条例に照らし合わせた結果、決められているわけです。ですから、その倫理規定に従って作品を制作している弊社が責任を取れる範囲はあくまで日本国内ということになります。  海外に直接販売するというのは、例えば、他の会社へ行っていきなり土足で上がりこみ、「うちの会社は土足でオッケーだから、お前の会社もいいじゃん」と、相手の都合も聞かず一方的に押し付けることと同じです。その会社にはその会社のルールが存在しているのですから、まずそのルールに適しているかそこをはっきりさせる必要があるのです。それは「いや、うちの会社は床で仮眠する奴もいるから土足は困るよ」という事情を知るということなのかもしれません。  ルールが異なり、そのルールは適用できないということであれば、水際で輸入を阻止するために当該国の税関は機能しなければなりませんが、そこを全て相手任せというのはやはり企業として無責任です。その国で営利活動をして利益を得たいということであれば当該国のルールを遵守するのは当然のことではないでしょうか? ですから、海外で販売をしたいのであれば、その国のルールに従って販売を行える販社を通じて販売することが望ましいと考えます。「餅は餅屋」という言葉もある通りです。 以上、3項目についてお答えいたしました。 もちろん、これらは全て、今日現在における対応ですので、時が過ぎ、状況が変化していけば、それに応じて柔軟に対応していく所存です。 何かご不明な点がございましたら、ご連絡頂ければご説明いたします。 なお、本文書の著作権と文責は私にありますので、御社に記事が掲載された場合、全文を公開することを予定しております。ご了承下さい。 それでは、長文になってしまいましたが、 何卒よろしくお願いいたします。