離婚はつらい体験です。しかし、後で振り返って、本当は何が起きていたのかを理解するのも大切です。私自身も昨年離婚を経験し、この過ちから夫婦関係について多くのことを学びました。結婚生活の失敗は、重要な学びと自己反省の機会でもあったのです。
表面的には、私たちの結婚生活に失敗の要素はありませんでした。浮気もなく、夫婦関係はうまくいっているかに見えました。しかし実際には、私たちは単に問題から目を背けていただけでした。あれからときが経ち、私も少しはことの顛末を理解できるようになりました。 今回は、私自身が離婚する前に聞きたかった夫婦関係にまつわるアドバイスを紹介します。
1. コミュニケーションの正しいとり方を見つける
どんな人間関係でもコミュニケーションは重要です。これは、きっと聞き慣れたアドバイスのはず。しかし、問題はそれほど単純ではありません。コミュニケーションのとり方は人それぞれで変わります。それで言うと私たち夫婦は、まるで別の言語を話しているかのようでした。元妻は率直なタイプでしたが、私はよそよそしく、コミュニケーションを最小限にしようとするタイプだったのです。
タイプがどれほど違っても解決方法はあります。まず第一に、同じ波長で話すのが難しいのを認めること。そして、どんな話し方をすれば相手に通じるかを理解することです。
私たち夫婦は、お互いの本音を打ち明けませんでした。重要な話題は避け、仕事や友人たちのゴシップなど当たり障りのない話題に時間を費やしました。きちんとしたコミュケーションが必要なのはわかっていましたが、どうすればいいかわからなかったのです...。すでに手遅れになってから、米紙「The Wall Street Journal」の記事によい手がかりがあるのを見つけました。
夫婦は穏やかに思いやりをもって話し合うべきです。怒りにまかせるのではなく、問題を解決するために議論をしてください。相手の話にゆっくり耳を傾け、理解した内容を確認し、誤解をなくすよう努めてみましょう。
University of Michigan's Institute for Social Researchの心理学教授であるOrbuch博士は「10分ルール」を提案しています。毎日10分間、仕事以外のことを、つまり、家族や子ども、家庭生活や夫婦関係について、2人だけで話し合うのです。テーマやスケジュールをあらかじめ決める必要はありません。
話題は何でもかまいません。哲学について話しても、夢について話しても、何でもOK。ただ、毎日10分間向かい合えばいいのです。米Lifehacker編集部のWalter Glenn氏は、効果的なコミュニケーションをするために独自のルールを設けているそう。
相手にフラストレーションを吐き出す機会を与えるのです。これはパートナーとしての役割の一つでもあります。フラストレーションの原因があなた自身であれ、他の誰かであれ、ただ黙って聞きましょう。ケンカになってもOKです。ただし、ルールはしっかり決めておいたほうがよいでしょう。私と妻は以下のルールを守っています。ケンカの後始末が重要だとGlenn氏は言います。ケンカそのものは悪いことではないのです。私も元妻もあまりケンカをしないタイプでした。衝突しないことが必ずしもよいとは言えないでしょう。
- 中傷や侮辱はしないこと。「あなたのアイデアは馬鹿げている」と言うのはOKですが、「あなたは馬鹿だ」と言うのはNGです
- クールダウンが必要なときは、「休戦」を提案します。いくら腹が立っても黙って席を立たないように。「ちょっとクールダウンが必要みたいだ。続きは後でやろうよ」と一言声をかけています
- 子どもの前でケンカを始めた場合は、必ず仲直りするところを見せます。ケンカが始まったら子どもたちを向こうへやり、ケンカが終わってから呼び戻すのではダメ。それでは子どもたちの恐怖心は消えず、学びもありません
正しいコミュケーションのとり方については諸説ありますが、次のシンプルなルールに要約できるでしょう。必要なときは口を閉じ、耳を傾けること。お互いを尊重し、ゆっくり話し合う時間を持つことです。簡単そうに聞こえますが、実践するのはなかなか大変。このルールを繰り返し頭の中で唱えていれば、二人の親密さも増すはずです。
2. 「愛着スタイル」の違いを知る
夫婦関係が行き詰まったときは、心理学で言う「愛着スタイル」に目を向けることも大切です。愛着スタイルとは、他者との情緒的な関係の築き方のこと。愛情を素直に表現できる人もいれば、引っ込み思案なタイプもいます。そして夫婦の愛着スタイルが正反対だと、多くの混乱が生じてしまうのです。
私は元妻に比べてはるかに引っ込み思案な性格です。妻が私の気を引こうとすればするほど、私は妻から逃れようとしました。とくに愛情表現については、私は明らかによそよそしくそっけない態度をとっていたようです。当時は、どうしようもない問題だと考えていましたが、今では解決できることだと認識しています。「Wall Street Journal」が次のように指摘していました。
秘訣は、お互いに何が必要かを具体的に話すことです。例えば、「あなたが友人たちの前で愛情表現ができないのはわかっているわ。でも家では毎日ハグして欲しいの」など、自分のして欲しいことを具体的に伝えます。
愛情表現の仕方は人それぞれでいいはずです。ただ、「お互いが少しずつ歩み寄る必要がある」とニューヨークで結婚と家庭問題のセラピストをしているSharon Gilchrest O'Neil氏は指摘します。Sharon氏自身も引っ込み思案だそうで、夫から、家ではキスをして欲しいと言われているそうです。
愛着スタイルを変えられると知ってから、私の態度も改善されていきました。今でも率直な人間とは言えませんが、以前よりはましになったはず。自分は変われることを理解し、それぞれに合ったコミュニケーション方法を見つければいいのです。人は、自分の振る舞いは変えられないと思い込んでいます。また、少しくらい変わっても大した意味はないと考えがち。しかし、ささいなことからでも夫婦関係に変化は与えられるのです。
3. 優先事項の変化を軽視しないこと
いずれは、夫婦関係の中で優先事項が変化するときがやってきます。私たちの場合それは、大学を卒業してそれぞれのキャリアをスタートしたときでした。
それまでの二人のゴールはとてもシンプル。大学を卒業し、仕事を見つけることだけでした。ただ、その仕事を見つけてお互いのゴールや優先事項が変化した後も、私たち夫婦はそれについて話し合う時間を持たなかったのです。
多くの人にとって、お金に関することが問題のようですが、私たちの場合は、思い描く将来像のズレが問題でした。
突然環境が大きく変わるときには、「将来の展望」と「コミュニケーション」が重要となります。この2つが欠けると、夫婦関係は取り返しのつかないことになってしまうのです。私たちは、学業と仕事で一日14時間が埋め尽くされる生活から、突如として自由な時間が増える生活に変わりました。ところが、それに合わせた対応をとりませんでした。心理系ブログ「Psych Central」では、急激な環境の変化への対処方法を次のように説明しています。
Orbuch博士は「生活環境の変化が個人や夫婦関係に与える影響についてよく話し合ってください」とアドバイスしています。話し合うことで、二人が変化に対応できそうか、また、変化にどう対処すればよいかが見えてくるのです。
妥協点を探るのも重要でしょう。今回はパートナーの願いを聞き入れ、適当なタイミングで見直しの機会を持つと約束するのもよいかもしれません。
大きな変化に対応する上で大事なのは、「違いを受け入れる」、そして「個人の問題にしない」ことです。例えば、リベラルな態度を学び始めたパートナーは、保守的なあなたからは侮辱的な態度に見えるかもしれません。
変化の渦中にいながら、私たちは話し合いの時間を持とうとしませんでした。お互いの優先事項が変わってきているはずなのに、そのことについて話そうとしなかったのです。今後の5年間をどう過ごすか、じっくりとお互いの意見を交換すべきでした。それぞれが夫婦関係に望むこと、現在や未来に期待することを確認し合うべきだったと思います。
4. マンネリは自然解消しない
どんな人間関係にも高揚期と停滞期があります。停滞期が何ヶ月も続くようなら、それをマンネリと言えます。誰かと長い時間を過ごしていて、ほとんど変化がなければ、退屈するのはどんなカップルにもあることです。私たち夫婦にもマンネリがありました。でも、とくに解消しようとはせず、ただ過ぎ去るのを待つだけでした。
マンネリは行き過ぎると引き返せなくなり、夫婦関係そのものがつまらないルーチンの固まりとなってしまいます。これはよくあることで、実際、多くの友人たち夫婦も同様の問題を訴えていました。心理学ブログ「Psychology Today」が指摘するように、マンネリを解消するには、一緒に新鮮でエキサイティングな活動に参加するとよいでしょう。
パートナーとこうした活動に参加して、協同で作業したり、同じ体験を共有したりすることで、2人の距離を近づけることができます。また、楽しさも倍増するはず。わざわざ自宅で障害物競走をする必要はありません。スカイダイビングのクラスに通ったり、バンジージャンプをしたり、積極的にアウトドアへでかけましょう。ほかにも、ガラス吹きをしたり、近所のまだ行ってない場所をサイクリングしたり、街を散策したり、近隣の街に週末旅行したりするのもおすすめです。
シンプル過ぎるアドバイスですが、効果抜群です。大げさなことをする必要はありません。グルーポンで少しクレイジーな買い物をしたり、マニアックな映画を見に行ったり、新しい公園にでかけるだけでOK。退屈しているなら、生活に変化を与えてください。自ら行動しなければマンネリから抜け出せませんよ。
5. 手遅れにならないうちにカウンセラーに相談する
事態が悪化したのならセラピストやカウンセラーに相談してもよいでしょう。私たちの場合、手遅れになるまでカウンセラーのところへ行かなかったのが問題でした。
やっとのことで相談した後、後回しにしすぎたことがはっきりしました。妻が帰った後、私は残ってカウンセラーと話し何が悪かったのか理解しようとしたのですが、「あなたたちは解決可能な問題を手遅れになるまで放っておいたのだ」と言われしまったのです。
私たちはあまりにも長く事態を放置していたのです。何年も問題を直視せず、結婚生活を惨めなものにしてしまいました。普段、私はセラピーやカウンセリングとは無縁の人間です。もっと早く相談していれば、少なくとも2人の間に何が起きているかわかったはずでしょう。
もちろん、カウンセラーやセラピストが問題を解決してくれるわけではありません。ただ手助けをしてくれるだけです。それでも十分役に立つでしょう。手遅れになってからでは、カウンセラーも助けようがないのです。
夫婦関係はさまざまです。門切り型のアドバイスが有効とは思いません。しかし、私の失敗から何かを得て頂ければ幸いです。
Thorin Klosowski(原文/訳:伊藤貴之)
Photos by Nick Criscuolo, Paul Hudson, Pascal, JD Hancock, Enrico.