馬鉄時代の円朱別線
～簡易軌道・殖民軌道って何？～
馬鉄時代の円朱別線
簡易軌道・殖民軌道というのは、北海道の開拓地の交通手段として発達した線路幅762mmの軌道です。殖民軌道の歴史は1924(大正13)年の根室線に始まり、その後、根釧地方や宗谷地方を中心に建設されました。戦時中には名称を変更して簡易軌道となり、1972(昭和47)年の簡易軌道茶内線の廃止で約半世紀の歴史に幕を下ろしました。
殖民軌道には馬が台車を牽く馬力線とガソリン機関車牽引の動力線があり、簡易軌道になってからはディーゼル機関車や「自走客車」と称するレールバス、原乳を運ぶミルクタンク車などが投入されました。しかし、実に昭和30年代後半に至るまで、上の写真のような馬力線も存在していました。
標茶線の自走客車(所蔵：標茶町)
簡易軌道・殖民軌道は、「簡易軌道(殖民軌道)○○線」という正式の名称と「○○町(村)営軌道」という実際の運行管理者を表す名称を持ちます。例えば、「簡易軌道問寒別線」と「幌延町営軌道」は同じ線区なのです。また、「あの車両は国有で、この車両は町有」というように、車両や建物によって所有者が異なるという一見風変わりな鉄道でもありました。
簡易軌道・殖民軌道の特色は「自走客車」や「ミルクタンク車」といった地域色豊かな車両や「馬力線」に留まりません。「道路建設の不可能な地域に道路の代わりに敷設した」という建設目的や「敷設は国が行い、運営は利用者が行う」という経営形態などは、他の鉄道・軌道にあまり見られないものです。また、戦後は北海道と北海道開発局という2つの官庁の狭間を揺れ動きました。それらの独自性・特殊性に解釈を試みることは、簡易軌道・殖民軌道の世界をより一層興味深いものにするのではないかと思います。