【大相撲】土俵休まない玉鷲、攻め休まない! 貴景勝押し出した2019年3月15日 紙面から
◇春場所<5日目>(14日・エディオン アリーナ大阪) 先場所優勝の玉鷲(34)=片男波=が大関昇進を狙う貴景勝(22)=千賀ノ浦=との激しい攻防を制し、2勝目。貴景勝は2敗目を喫した。横綱、大関陣は2日続けて安泰。白鵬は妙義龍をてこずりながらも下して5連勝とし、鶴竜は大栄翔をさばいて4勝目。豪栄道は正代を圧倒して負け知らず。高安は4勝目を挙げ、かど番の栃ノ心は白星先行。全勝は白鵬、豪栄道に平幕の逸ノ城(25)=湊=と琴奨菊の4人。 モーレツ社員は今や死語。休まないのは美徳とされないこの時代に、現役一「休まない人」が大関とりに挑む若手をねじ伏せた。 注目の一番。先場所優勝の玉鷲に、大関とりの貴景勝。しかし、玉鷲は2日目から3連敗。目の前で仕切る貴景勝は1敗を守り、準ご当所とあって館内から地元貴景勝コールが湧き起こる。 玉鷲は「あまり考えずに。火がついたら硬くなっちゃう。長くやってるんで」とベテランらしい冷静さで貴景勝コールを受け流す。ただ、「若手に負けたくないっす」という思いは秘めた。 一歩も引かない。先に引いたのは貴景勝。「やられる前にやり返そうと思った」。先場所まで3連敗中の貴景勝を、気迫を込めて押し出した。 この日で、番付に初めてしこ名が載った2004年春場所からの連続出場が1156回、大旺と並び史上13位タイとなった。現役1位という肩書だけでなく歴代10傑に顔を出そうとしている。 「何回も休もうと思ったことはある。体よりも心が折れるかなと思ったことがある」と玉鷲は話すが、支えてきた師匠の片男波親方(元関脇玉春日)は「目標があると力が出るタイプ」。2月17日に愛知県蒲郡市にある元横綱玉の海の墓前に優勝を報告した。 「風が強かったので先にろうそくに火をつけて線香につけようと。そのろうそくが溶けて、玉鷲の手にかかってるんですけど、熱いとひと言も言わない。今は線香をつけるのが目的、ということなんでしょうね。新しい発見でした」と師匠は明かす。 お客さんを、家族を喜ばせたい、2桁勝利、その先にある大関へ…。目標が多ければ多いほど力が湧く。 (岸本隆)
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