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【政治】

強制不妊一時金320万円 請求額と開き、訴訟継続 来月施行へ

 旧優生保護法(一九四八~九六年)下で障害者らに不妊手術が繰り返された問題で、自民・公明両党の合同ワーキングチーム(WT)と野党を含む超党派議員連盟は十四日、会合を開き、被害者へのおわびと一時金三百二十万円の支給を柱とした救済法案を正式に決定した。四月初旬に共同で国会提出し、月内の成立、施行を目指す。

 長年にわたる非人道的被害の救済がようやく緒に就いたが、各地で起きている国家賠償請求訴訟の請求額は最大三千万円台後半で、大きな隔たりがある。同日、東京都内で記者会見した全国被害弁護団の新里宏二(にいさとこうじ)共同代表は一時金の額について「被害回復にならない」と批判。「裁判をやっている人は裁判での解決を目指す」と訴訟を継続する考えを示しており、問題解決に一気に進むかは見通せない状況だ。

 法案は、前文で被害者の心身の苦痛に「われわれは、それぞれの立場において、真摯(しんし)に反省し、心から深くおわびする」と明記した。

 被害者側が求めた「国」が主体の謝罪ではないが、与党WT座長の田村憲久自民党政調会長代理は「『われわれ』の中には国会と政府が色濃く入っている」と話した。

 一時金の支給対象は手術を受けた被害者本人。故人や遺族は対象外とする。手術の実施には当時の社会的風潮も影響したとして、本人が「同意」したとみられるケースも対象とする。

 厚生労働省によると、約二万五千人が手術を受けたとみられるが、個人が特定できる実施記録は約三千人分しか残っていない。記録のない人は、厚労省に夏ごろ設置される認定審査会で医師の所見や本人、家族の証言などを基に判断する。都道府県には相談、一時金請求の窓口を置き、支払い事務は厚労省所管の独立行政法人「福祉医療機構」が担う。

 一時金の支払時期は、記録の有無や審査の進み具合によって異なるため、厚労省の担当者は「現段階でいつとは申し上げられない」と話した。

 また、こうした障害者差別を繰り返さないため、旧法を巡る問題の経緯を国会が調査することも盛り込んだ。

 

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