独立したらどうなる? ヒガチモ未来大予測!
ヒガチモでは8月末に住民投票が行われ、どうやら独立を果たしそうな形勢です。
とある掲示板で私のHPを読んだという方から、「独立するとして、指導者や体制など、ほんとにやっていけるのでしょうか?」とマジメな質問をいただきました。
で、ヒガチモへは女子高生を見に1回行っただけの私が、さっそく専門家きどりになって、風呂に入りつつ勝手な予想を立てたのですが、その掲示板(某ヤフー)は500字以上は書き込めないという反動的なシステムだったので、投稿できませんでした。
そこで、自分のHPに載せることにします(笑)。
独立ヒガチモの階級構造
東ティモールが独立した場合ですが、とりあえずこれまで独立運動を担ってきたゲリラの指導者らを中心に、政府作りをすることになるでしょう。完全独立までには移行期間を設けて、国連が手取り足取り指導をするようですし、独立派は75年にインドネシアが侵攻して来る直前に、短い期間でしたが東ティモール民主共和国という政府を作った経験もあるので、取りあえずはなんとかなると思います。
また、植民地時代にエリート層だったポルトガル系の人が、近場のオーストラリアへかなり亡命しているようなので、この人達も戻ってきて、独立派指導者らと一緒にエリート層を形成し、東ティモール政府の中枢を握るのではないかと思います。植民地時代の旧エリートが逆戻りするだなんて、フツーの新興独立国なら民衆が怒り狂うところでしょうが、東ティモールの場合は民衆の強烈な反インドネシア感情から、当面は歓迎されそうです。
で、民衆と権力者の間に立つ中間層ですが、経済面では華人(中国系)が実権を握るでしょう。まぁ、すでに大商店はほぼすべて華人が経営しており、経済的実権はすでに握ってるのですが、独立後は堂々としたものになりそうですね。
インドネシアでは華人は政府から弾圧され続け(※1)、民衆からもなにかにつけて襲撃目標になっていましたが、東ティモールでは「反インドネシア」ということで、地元民の華人に対する風当たりはそれほど強くないようです。そこでインドネシアの他の島から、ビジネスチャンスを狙った華人が集まってきそうですね。
あとマカオは今年12月に、中国への返還を控えているのですが、ここに「マカニーズ(※2)」と呼ばれる、ポルトガル人とインド人と中国人とマレー人と日本人(戦国時代の切支丹)の混血という、摩訶不思議な人達が1万人くらい住んでいて、ポルトガル語を母語とし、ポルトガル語圏にアイデンティティを見いだして生活しています。
彼らは本国から派遣されたポルトガル人と、民衆の中国人(※3)との間で、政治的な中間層を形成していましたが、中国返還後はポルトガル植民地時代の特権(※4)が失われるということで、これまでブラジルなどへ移民する人が相次いでいました。
しかし、東ティモールが独立すれば、同じアジアのポルトガル語圏だし、これまで生活を共にしてきた広東系の華人もいるし(※5)、かつ新しい国なので一旗挙げるチャンスがありそうということで、流れ込んでくるかも知れません。
つまり、まとめると
エリート層(政府のエライ人)=独立派ゲリラの指導者+旧エリートのポルトガル系
↓
中間層(役所の管理職やブルジョア)=マカオの混血ポルトガル人+中国系
↓
一般大衆(主に農民、漁民や零細商人)=フツーの東ティモール人+居残ったインドネシア人
ということになるかも知れません。
注釈:
※1 インドネシアはかつて「非同盟諸国」のリーダーで、中国の友好国でしたが、65年のクーデター騒ぎでスハルトが実権を握ると、一転して反共に転じ、中国と関係の深かった華人を弾圧しました。インドネシアが75年に東ティモールの独立を認めず、軍事介入で併合を強行したのは、独立派の主流が当時は社会主義路線を掲げており、東ティモールに社会主義政権が誕生しインドネシアへも波及することを恐れたためもあるようです。
※2 中国語では「土生葡人」。直訳すれば「土着ポルトガル人」。
※3 ホンコン・チャイニーズ(俗にいう香港人)と似たような、マカオ・チャイニーズのこと。
※4 つい最近まで、マカオでは法律はポルトガル語だけで書いてあり、ポルトガル語ができないと下っ端の役人にしかなれなかった。人口の圧倒的な割合を占めるマカオ・チャイニーズはポルトガル語なんかできない。
※5 インドネシアの華人は福建系が中心だが、東ティモールではマカオとの歴史的な関係か広東系が多い。マカニーズはマカオで生まれ育っているから、広東語は当然ペラペラ。
ヒガチモ経済の将来展望
東ティモールにはこれといった産業はありません。自給自足的な農業や漁業が中心で、輸出商品といったらコーヒーくらいなもの。で、このコーヒーも、あんまり上等じゃなさそうです(あくまで私の味の好みによる主観)。
海底には石油が眠っていそうですが、インドネシアの領海にまたがっているし、技術的にもすぐに採掘というわけにはいかないようです(簡単に油田が作れるのなら、すでにインドネシアが開発してるはず)。
他の東南アジア諸国では活発な、日本や韓国、台湾、欧米からの工場進出も、(1)原材料の供給地や市場とあまりにも離れていること、(2)工場立地に適した平野が少なく、インフラも整備されていないこと、(3)国民の教育レベルが低いこと、(4)独立したばかりでは法律なども未整備で安心して投資できないこと、(5)インドネシア残留派がゲリラに転じる可能性もあり、治安がはなはだ不安なこと――などの理由で、あんまり期待できないでしょう。
フツーの新興独立国では、経済的な実権を握り続けるためにも、旧宗主国が経済的な援助を与えたりすることもありますが、東ティモールの旧宗主国であるポルトガルは御存知の通り西欧の最貧国でそんなゆとりはないし、もうひとつの「旧宗主国」ともいえるインドネシアは、徹底的に嫌われて独立されちゃったわけですから、お人好しに援助するとも思えません。
当分は国連の働き掛けなどで、国際的な援助が集まるでしょうが、経済の自立は難しく、東南アジアの最貧国となることは確実です。
ただし、観光産業には可能性もありそうです。とはいえ、ビーチや自然を売り物にするなら、周りのインドネシアの島々と似たり寄ったりですが、地元の有力者の間では、「マカオを見習って、大々的にカジノをオープンさせよう」という構想があるようです。
マカオ政庁の財政収入は、半分以上がカジノからの上納金です。東ティモールも同じポルトガル圏だし、同じ広東系華人のつながりもあるので、マカオのカジノに「技術指導」を仰ごうというわけです。あんな辺鄙な島にカジノを作って、誰が遊びに行くのかと思いきや、オーストラリアの北岸からは近いので、それなりに繁盛するでしょう。
カジノといえば、一発当てて懐が豊かになったギャンブラー目当てに、フーゾク産業も欠かせません。マカオには、お隣り中国はもちろん、タイ、ベトナム、韓国、ミャンマー、ロシア、コロンビアと、世界各国から娼婦が出稼ぎに集まっています。東ティモールも似たような感じになって、今は静かなディリの町にも、ケバケバしいネオン街が登場しそうです。
となると、最大のお客さんは、お隣りインドネシアです。何しろインドネシアはイスラム教中心の国ですから、このような歓楽街はおおっぴらにはほとんど存在しません。インドネシア人も東ティモールに行けば、堂々と酒が飲めて博打が打てて女も抱けるということで、観光客がドッと殺到するでしょう。現にマレーシアと国境を接したタイ南部の町も、イスラム教徒であるマレー人目当てのフーゾク産業で栄えています。
酒と博打と女…、なんか独立後のヒガチモは、ロクでもない国になりそうな予感もしますが、ま、念願の独立がかなえば、とりあえずはメデタシということでしょう。