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【国際】英メディア「法務長官は政治より法を選んだ」 イラク戦争の過ち教訓か「法務長官は最後に、政治ではなく法を選んだ」。メイ英首相がEUから取り付けた離脱合意案の新提案について、明確に法的効力を否定し、下院での合意案否決の一因を作ったコックス法務長官を、英メディアはこう評した。政府の一員でありながら、政府を窮地に陥れる決断をした背景には、英国の「法の支配」とイラク戦争の教訓があった。 十一日深夜、メイ氏とユンケル欧州委員長が発表した新提案は、英領北アイルランドの国境管理を巡る安全策「バックストップ条項」回避に向けた内容。離脱後も英国は無期限にEUの経済ルールに縛られることはないという法的な確約の有無が焦点だった。 メイ氏が、新提案は「法的な修正」と主張する中、採決のカギを握っていた与党の強硬離脱派は「法務長官が法的効力を認めれば支持する」と明言した。 注目された声明で、コックス氏は「バックストップにとらわれる法的リスクは変わらず残っている」と指摘。強硬離脱派は合意案の不支持を決めた。 英国では、法は権力に勝るという法の支配の原則が根差す。法務長官は政権の閣外大臣であり、政府への法的助言者でもある。かつて、二つの義務が相反した例があった。 二〇〇三年、ブレア政権のゴールドスミス元法務長官は政府の圧力に屈し「イラク戦争は違法」とする自身の見解を曲げ、英国の参戦を許し、後に批判にさらされた。英BBC放送は「コックス氏はゴールドスミス氏の過ちを繰り返したくなかった」とみる。 英バーミンガム市大のデビッド・ハーン研究員は「コックス氏の見解は新提案の真の姿だった」とした上で、「政治に縛られない法の在り方は、選挙に代表される民意、自由公平な制度と並ぶ近代民主主義の土台だ」としている。(ロンドン・沢田千秋)
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