実は、肺という臓器はいざというときにフルパワーを発揮できるよう、部分的に休んで“予備力”を備えています。たとえば、私たちが安静にしているときには、肺のてっぺんの部分は血流も落ちて、末梢の「肺胞」にも少量の空気しか入り込まない状態で休んでいます。しかし、体を動かして鼻から大量に空気を吸い込むと、鼻で産生されたNOが肺胞に届くことによって、休んでいた肺の毛細血管が拡がり、酸素が効率よく血液に取り込まれて全身に届けられます。肺の“予備力”が総動員された状態です。
口呼吸の場合には、この鼻パワーを利用することができず、NOの量も数百分の一にとどまるため、肺の“予備力”を呼び覚ますことができません。花粉症による鼻づまりで鼻呼吸がしにくくなるということは、単に空気の通るルートが変わるだけでなく、精巧にできている呼吸システムをフル活用できなくなることを意味するのです。
■加湿器がカビや細菌を撒き散らすことも
また、花粉症の時期は、空気が乾燥しやすい季節でもあります。花粉症で鼻がつまって口呼吸をしていると、よけいに喉が乾燥しやすくなるでしょう。この季節は、多くの人が室内の空気が乾燥しないよう、せっせと加湿器に水を注いで湿度を上げる工夫をしていると思います。
かぜやインフルエンザ予防の観点からも、加湿器を利用して部屋の湿度を高く保つことはよい習慣なのですが、実は、加湿器が空気中に撒き散らした「カビ」を吸い込むことによって、「過敏性肺炎」という肺の炎症を起こすこともあります。一般的な感染によって肺に炎症が起きる「細菌性肺炎」などとは、メカニズムが異なる肺炎です。...続きを読む