そもそも、「鼻呼吸」と「口呼吸」はどう違うのでしょうか。
まず、鼻呼吸の持つ優れた作用について説明しましょう。鼻の重要な役割のひとつは、吸い込む空気(吸気)を加湿することです。鼻汁は、実に1日に1リットル近くも産生されて、鼻腔内の湿度を高く保ちます。口呼吸の場合も唾液によって加湿されますが、加湿効果は鼻呼吸には遙かに及びません。
また、鼻には大気中の異物の“関門”としての役割があります。鼻毛が大きな異物の侵入を防ぐとともに、鼻汁が小さな粒子を吸い取り、気管支や肺を守ります。さらに、鼻の穴の内部は鍾乳洞のように複雑な構造になっており、そこに生えている鼻毛との相乗作用で気流が屈曲することによって、直径10ミクロン以上の粒子の多くは鼻の粘膜で捕捉されます。
スギ花粉のサイズは約30ミクロンなので、そのほとんどが鼻腔で吸着され、そこでアレルギー反応が起きるのが花粉症です。この鼻の機能が落ちると、さらに奥に進んだところにある気管支でアレルギー反応が起こり、咳や喘息につながることもあります。
口呼吸になってしまうと、鼻呼吸に比べて加湿と異物侵入を防ぐためのフィルター効果が劣ります。乾燥した粘膜は傷つきやすいため、ウイルスや細菌の感染に弱くなってしまうのです。
■口呼吸では肺の「予備力」が使えない
そしてもうひとつ、最近、明らかになりつつある鼻の働きがあります。鼻で大量に産生されている一酸化窒素(NO)の効用に関する新しい知見です。...続きを読む