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【大相撲】

北勝富士よ、もっと稽古を! 小結になって満足では終わり

2019年3月14日 紙面から

◇北の富士評論「はやわざ御免」

 「運び屋」を見てきました。期待通りの面白さでした。

 90歳のじいさんが麻薬の運び屋となり、FBIや麻薬捜査官を手玉に取る痛快無比の映画。クリント・イーストウッド扮(ふん)する90歳の老人、とは言ってもこのじいさん、酒は強いわ、若い女性、それも2人相手に精力絶倫ぶりを発揮するスーパーじいさん。若いころから家庭をほったらかして遊び、無一文になり、図らずも運び屋となってしまったが、最後は捜査官に協力して麻薬組織を壊滅する。裁判では司法取引で無罪になりかけたが、自ら私は有罪と言って映画は終わる。

 どうやら実話らしく、いかにもアメリカ人が好きそうな話である。私も大好きだ。とにかくあの助平さがたまらない。館内はほぼ満員、そして8割方は私と同年配のジジイばかりである。しかし後ろ姿には「よし、今晩は頑張ろうか」と書いてある。俺も同感である。まだ76歳。やればできる。諦めるのはまだ早い。

 何だか勇気が湧いてきたみたいだ。単純なものだね、男なんて。我ながらあきれてしまう。それでもこの映画は、見て損はない。

 さて冗談はこのくらいにして、本業に戻ろう。十両の炎鵬は幕内の土俵に初めて登場した。琴恵光の強引な小手投げに頭から土俵に突っ込んで負けたが、場内から盛大な声援が飛ぶ。初黒星となったが、体が良く動いているので勝ち越しはできるだろう。入幕するとさらに人気は高まろう。楽しみである。別に、宇良がいないから浮気をしている訳ではないので、その辺はよろしく。

 3日目に御嶽海の鉄壁の守りを崩せず完敗を喫した貴景勝は、連敗は絶対に避けたいところである。対戦する北勝富士はさほど取りにくい相手ではない。一度待ったの後の立ち合いは、互いに頭で当たり合った。両者けれん味のない立ち合いは、見ていて気持ちが良い。若手は、こうでなければいけません。

 先手を取った貴景勝が、左から押して攻め立てる。押し込まれた北勝富士は、右のど輪で攻め返した。だが、力の入った攻防もここまで。北勝富士が我慢できずに引いてしまう。稽古十分の貴景勝が、その手を食うわけがない。余裕で残し、逆に頭を低くして押してくるところを左から引き落とすと、北勝富士は頭から土俵に突っ込んだ。

 いい勝負だったが、最後は稽古量の差が出た一番となった。北勝富士はもっと稽古せよ。先日、師匠の八角親方と飯を食った。北勝富士の稽古不足を指摘していた。押し相撲が稽古をせんでどうするつもりだ。小結になって満足しているようでは終わりだ。

 貴景勝は多少押し込まれた場面もあったが、これといって悪いところは見当たらない。頑張れ。

 玉鷲は先場所とは別人となってしまった。体がまるで動いていない。だから相撲は難しい。

 4日目は上位陣安泰であったが、白鵬だけがまずい相撲を取ってしまった。久しぶりに左から張り差しを見せた。すっかり手の内を読まれ、右差し手の方から攻められ、土俵際で棒立ちとなった。それでも辛うじて残し、やっと勝ちを拾ったが、内容は完全に負けていた。残る土俵が心配になってきた。3日目も書いたように、すんなりとはいかないだろう。

 豪栄道は今のところ元気いっぱい。とはいっても安心するのはまだ早い。いずれにしても、今場所も誰が優勝するか分からない。

 さて今夜は北新地に出掛けるが、一軒くらい寄り道してみようか。何しろ俺はイーストウッドである。70、80は、はな垂れ小僧だ。それではいざ、出発。 (元横綱)

 

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