【大相撲】天性の相撲勘、とにかく御嶽海はうまかった2019年3月13日 紙面から ◇北の冨士評論「はやわざ御免」そろそろ荒れる春場所の様相を見せてきたようだ。大関高安は大栄翔の一気の押しになすすべなく敗れ去った。立ち合い右からかち上げて出た高安だったが、この立ち合いはどうやら見破られていたみたいだ。大栄翔がその右腕を左からの追っ付けで押し上げると、重さを誇る高安の腰が浮いてしまった。おまけに横向きにされては、重い腰も何の役にもたたない。大栄翔の技能的な横攻めにあっけなく土俵を飛び出した。 落ち着いて御嶽海の猛攻をしのいだ2日目の高安はまことに強く感じたが、やはりこの大関は強さともろさが同居しているようだ。もうひとつ確固とした強さが見られないのが惜しまれる。もう30歳近いのだから時間は限られている。4日目からの立ち直りに期待する。 栃ノ心は北勝富士にあっさり土俵を割って2敗目。このままではかど番脱出は難しいかもしれない。長引くけがも影響しているが、精神的に参っていると思われる。大関になるころの勢いを取り戻すのは至難の業である。4日目は錦木と対戦するが、四つに組みやすい相手なので、立ち直りのきっかけをつかめるとよいのだが。 それでは、本命の貴景勝の相撲を振り返ってみたい。対戦する御嶽海にはこれで5連敗とか。はっきりいって、イヤな相手である。負けん気の強い貴景勝は死んでも苦手とは言わないだろう。しかし、相撲は正直である。初日から2日間の目の覚めるような当たりと出足も御嶽海には全く通じない。貴景勝懸命の立ち合いの当たりも御嶽海は一歩も後に退かない。 右をのぞかせて先に前に出たのは御嶽海。じりっと攻め返し、左も差してもろ差しを、となった御嶽海。勝利を確信したように慎重に寄る。貴景勝の丸い体がすっかり伸び上がって万事休し、土俵を割った。御嶽海の完勝。今、大関を目前にした絶好調の貴景勝が何もできなかった。この一番を見た限り、大関に一番近いのは御嶽海の方かと思ってしまうのである。 とにかく、御嶽海はうまかった。早く踏み込み強い当たりを封じ、体を寄せて突き放すタイミングを与えない相撲勘のよさは天性のものというべきか。この2人の戦いはこれから数年も続くが、貴景勝の「目の上のたんこぶ」となって悩ませ続けることだろう。 もう一人の大関候補と言われる玉鷲だが、勝ちを急いで早くも2敗となった。目安の13勝は風前のともしびとなったが、今場所決めなければいけないと思わないことだ。10勝ならば、まだ希望が持てる。諦めてはいけない。動きが先場所と比べて硬いのは肩に力が入り過ぎている証拠。気を楽に、伸び伸びいけばよい。白鵬と豪栄道が好調だ。しかし、このままいくと思わない方がよいだろう。 さて、4日目もテレビ放送は休み。また前相撲でも見に行こう。そして、久しぶりに映画を見ようと思う。クリント・イーストウッド監督・主演の「運び屋」が面白そうだ。彼の作品は当たり外れがなくて良い。感想は4日目に発表しますので期待してください。そんなことどうでもいいといわれそうなので、映画評論はやめましょうか。 (元横綱)
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