ロプト帝国を考察してみる

 まぁ、まず聖戦の系譜全否定になることかもしれないけど言わせてもらう。
 
 宗教戦争は偽りだ。
 
 本当にそういわざるを得ない。確かに戦争のとき、宗教で気勢を上げたりよりどころにする人は多い。
 しかしそれは戦争の理由ではない。
 そんなもので戦争が起こるなら今頃大変なことになっている。あちこちで違う宗教を信じている人は多いし、そいつらが戦いを始めれば大変なことになる。
 別に相容れない宗教なら別の地区に住んでかかわらないようにするだけでいい。(ただし略奪や破壊行為を片方がしない場合に限る)
 現在あるケルンにモスクを立てる騒動もケルンにイスラム教の施設を作るのに反対しているわけじゃない。ケルンにイスラム風の建築物があることのほうが許せないのだ。
 大聖堂という壮麗な建築物を中心にした中性ヨーロッパ風の市街地にアラビア風の建物があるのはさすがに酷いだろう。

 このことを念頭に踏まえて、デザイナーズノートの資料も参考にロプト教団がどういうものかを考える。
 まずはガレが作ったらしい。ガレがどこかに行って帰国してきたときにすごい力を身につけて一気に支配を拡大したらしい。
 これが暗黒竜の力のようだ。どこから手に入れたかというのは記述がないから難しい。おそらく死につつある竜族から話を聞いて極秘裏に契約し、力を得たと考えていいだろう。
 アカネイアか、エレブかどちらかの竜だとは思うがそれ以上は不明。(このあたり、FEオールスターズ(仮称)に使ってみたい。)
 戻ってきたガレは12魔将の乱を起こしグラン王国(グランベル王国の前身)を手に入れている。12魔将いるということは、烈火のモルフみたいなことも出来たのだろう。(トラキアで12魔将は死んだ敵将や重要人物の姿をしている。)
 何名かを自分の言うことだけを聞く「モルフ」に仕立てておけば、クーデターもたやすいことだろう。
 そしてガレはグラン王国を手に入れ、虐殺を繰り返している。死者10万人とも言われる当時としては異例の大粛清だ。
 これに他の虐殺も加えれば15万近くは死んだのではないだろうか?
 暗黒竜は人を恨んでいる(ロプトゥスやメディウスの言動から)事を考えても、これでは帝国の運営にすら響くことだ。
 ちなみに中世では100万人で大都市といわれるほど。いや、ひょっとしたらもっと小規模かもしれない。しょっぱなからこれをやって200年もつ大帝国というのも何か怪しい気がする。
 この後、奴隷身分に落とされ徹底的な階級社会を作ったと歴史書には記されているが、正直無理にもほどがあるだろう。
 リアリティを求めるのは酷かもしれないが、初代がいきなり民衆の大虐殺やらかした帝国が200年持つはずがない。何かからくりがあると見たほうがいいだろう。
 虐殺劇の後、80年間は反乱もなく特に歴史書には語られていない。
 歴史書からしてみればこの時期の虐殺劇はある程度書いてもいいはずだ。殉教者をあげつらって弾圧や虐殺の話を描ければそれはその宗教に正当性を持たせる大きな味方となるが、「奴隷身分に落とされて~」としか描かれていない。
 もし弾圧があったなら「この時期、多くの者が反乱を企てたが失敗し~」くらいは描くはずである。
 この時期はやはり、ある程度ロプト教徒の恩恵を人が受けていた時期ではないだろうか?
 階級社会を徹底させたということは、それだけ民衆に受け入れさせる必要がある。
 恐怖という手段もあるし、ロプトゥスの力を引き継がせたというのもあるがそれで80年間持つとは思えない。
 グラン王国はそれなりに広く、人口も15万人殺されて帝国の運営ができるほどだから300万以上はいてもおかしくはない。
 こんな運営できなくなるほどの大打撃を与えた勢力に土地の有力者が反乱を企てもおかしくないし、エッダ教団がその人物あるいは地名を歴史書に出すことも出来るだろう。
 それをしなかったということは、この時期ロプト帝国は民衆の人心掌握に努めたと考えられる。
 自ら起こした宗教の徹底化とそれによるインフラ整備、ことに教育や水源確保などを推し進めロプト教団がいてよかったと思わせるようにしなければならない。
 その整備に駆り出されたのが異教徒で、彼らが奴隷身分に落とされたというのもその労苦から来るものと思われる。
 後々生活も改善されただろう。そうでなければこの80年間、目立った反乱無しに収められるとは思えない。
 人々を恐怖で陥れるというのは簡単だが、それを続かせるのは難しい。
 FEで言えば蒼炎のアシュナードも身分社会を崩壊させ、実力主義をいきわたらせた事と戦争への勝利で内部からの離反者を少なく押しとどめることに成功している。
 何かしら功績がなければ、そして民衆の心に訴えかける何かがなければ帝国の支配は不可能だ。階級社会を徹底させたということは、おそらく民衆に恩恵を与えたのだろう。家畜以下の待遇というのは誇張されたエッダ教団側の表現と見ていい。
 
 で、この80年のあとマイラが反乱を起こす。マイラはこの当時の皇帝の弟だ。
 ロプトを既存宗教の中核にすえて人民との融和を図ろうとしたという。まぁよくある話で北欧神話がキリスト教の神話に続いたり仏教の神がヒンドゥーの神に列席していたり日本の神道だったり、ケースは多くある。
 ガレが建国して90年、ロプト帝国も耐性が硬直化して綻びが見えてくるころだ。ならば新しい風を吹き込もうとしたのは間違いない。
 このマイラは反乱まで起こすが失敗する。しかしこの時何故か時の皇帝はマイラを生かしている。
 ここが疑問だ。このときのロプト皇帝は2代目か3代目で、おそらくだがロプトゥスの影響も受けていない。
 ロプトゥスの影響を受けているならば弟殺しに躊躇しなかったはずだ。実際ユリウスはユリアを殺せとしつこく言っている。
 ここで大胆な説を出してみるが、ガレ以降のロプト皇帝はロプトゥスを封印し、その影響をほとんど受けずにいたのではないだろうか?
 先の80年間の安定した期間を設けるにしてもロプトゥスは邪魔だ。弟殺しを渋った件にしても、やはりロプトゥスの影響があったとは考えにくい。
 ガレの影響と生贄の風習でこの時期の皇帝も暗黒皇帝に連なっただけで、皇帝本人はそれなりにまともな皇帝だったと考えていいだろう。
 そもそも生贄の風習自体、ロプトゥス本人がしていないのだから(子供は首都で再教育させており、選定の結果死ぬことはあっても殺しそのものが目的ではない)この生贄ということすら創作の可能性すらある。(わずかに残ったユリウスの意識に左右されるなら、その程度の存在でしかない。)
 生贄を出す宗教は絶対悪として描くことができるのだから。
 話を戻すが、マイラはヴェルダンの地で生きてそこで教会をつくり多くの信望者を集めていく。
 これを皇帝は見過ごしているところからして、側近がこっそりと逃がしたとは考えにくい。むしろ皇帝はマイラの思想に共感していたのではないだろうか?
 ロプトを既存宗教の中核にすえればロプトゥスの支配をすべての人民に受け入れされる案なのだから、ガレが作り歴史の浅い新興宗教であるロプト教にとっては願ってもない話である。
 マイラはロプト帝国の保守派との内部抗争に負けただけの可能性も否定できない。反乱は大抵死罪になるし、この時期ならロプト帝国内部にマイラの反乱に共感するものは多かれ少なかれいるだろう。
 しかしあっさりと反乱は収まっている。1年も経たずにである。保守派に書類を偽造され、反乱の罪を一方的に着せられヴェルダンに追いやられただけなのかもしれない。
 何にせよ、この一件をエッダ教徒は高く評価し歴史書にも載せている。反乱や生贄というのがエッダ教徒の誇張表現であり、なおかつ内部抗争説を採るとロプト帝国が割と普通の帝国に見えてくる。
 ……あれ?
 
 そしてこの帝国、また70年も続いているのである。
 さすがに後半になると反乱も多数続き、おまけに自由解放軍が同時多発的に連携を取って反乱を起こす。
 この同時多発の反乱にはロプト帝国内部の内通者が不可欠だっただろう。ロプト帝国の連絡網を使えば各地に号令を発することも不可能ではないし同時に反乱を起こすのは非常に難しい。
 そしてこの反乱鎮圧に21年かかってまだ勝機が見えないのである。明らかに反乱軍には戦いのプロが加担していたと診て間違いない。
 おそらく序盤は上手くいき、反乱ももはや戦争と呼べるほどに拡大したと思われる。あちこちで泥沼の戦いが続けられただろう。
 しかしロプト帝国が勝ち、解放軍はダーナ砦へと追い詰められる。そしてこのときになって初めて竜族が登場するのである。
 

 普通に考えればもっと苦しんでるときや自由解放軍設立あたりに来てもいいはずである。
 少なくともフォルセティ(人間好き竜)がもっと前に何かしらのアクションを起こしていてもいい。それが何故か敗北寸前になった時に現れている。
 さすがに竜族に人と同じ力を与えるのに躊躇したのかもしれない。しかしそれにしても遅い。
 で、ここで考えられるのがガレのロプトゥスを封印するよう2代目あたりのロプト皇帝に竜族が進言したのでは、ということだ。
 それならばロプト帝国時代にスルーしていた理由もなんとなく説明がつく。ロプトゥスは封印されているから竜族がずっと手を出す理由もないし、単なる人間の一時代であれば竜族は特に口を出すこともないだろう。
 そのロプトゥスの封印を時の皇帝が解き、大急ぎで竜族がロプトゥスを止めるために来たのではないだろうか?
 だから緊急措置で竜族の血を与え神器で戦わせたという理由もある程度説明がつく。後のメディウスのときは自らの牙を削って剣にさせたのだがこのときは竜石と血を分け与える緊急措置的な対処法をしているのだ。
 ストレートに武器を作らせるなら結構な月日がかかる。だが武器に竜石を固定させ血を飲ませるなら武器を作るよりも速い日数で済む。
 それにフォルセティが「かなり難しいな。ナーガの力に他の聖戦士の力を合わせなければならない」と言ったのも応急措置的な武器では実力を完全に発揮できないで戦った聖戦士を目の当たりにしたから、ということも考えられる。実際ナーガで簡単に倒せるのに。
 

 この応急措置的な武器でロプトゥスを撃破、その後神器を調整し再び15年間の「聖戦」に突入した。
 あえてこの名前を変えているのもロプト帝国を倒すことが正義であり聖戦だと呼びかけることにより民衆の心をつかむ為だと思われる。一方ロプト帝国は未開拓領域、シレジアやトラキアなどを転々としそこの有力な勢力を頼みつつ戦闘を続けたようだ。そうでなければ15年も続く戦いにはならないだろう。
 聖戦終了後、すぐに国家が建国され12聖戦士が国を切り取っていることを考えるとその平定戦もかねていたのではないかと想定される。
 穿った味方をすれば、ロプト帝国が隠れているというデマを流しユグドラル全土を支配しようとしたのかも……
 だからこそ、名前を「聖戦」として侵略のイメージから遠ざけたかったのかもしれない。
 実際、聖戦終了後1年間で各地に国が作られそれぞれの聖戦士はその領地を任された。反乱鎮圧や外交などは上手く行った……最低でも足がかりはつかめたと見ていいのではないだろうか。
 ロプト帝国の記述で最後に書いておくべきことは、解放軍のリーダーで初代のナーガの使い手ヘイムが残した言葉についてだ。
 彼の墓ともなったブラギの塔には当初「ロプト帝国関係者を迫害してはならない」と石碑が建てられていたが何者かの手で破壊された。
 ヘイムの遺言を破壊したものは厳しく罰せられるべきだが、その犯人が特定された様子もない。
 エッダ教団の管理下にあるブラギの塔ということを考えても犯人はエッダ教の誰かで、ロプトを絶対悪とするために不必要なこの石碑が邪魔だから破壊し、隠蔽したのだろう。
 聖戦の登場人物はフォルセティ以外、エッダ教団が編纂したであろう歴史書などを読んで育っているだろうから彼らの言動はエッダ教団よりと見る必要がある。
 そして、肝心のフォルセティの言動は「ロプトゥスを倒せ」ということを強調している。
 「討つべきは悪しき心であって人ではない」というのも、絶対的な悪人ばかりロプト帝国にいなかったからこそ出せる発言ではないだろうか?
 
 
・補足
 エッダ教団についてだが、正直言うと影が薄い。
 クロードもコープルもそれなりに誠実な人物でスルーフも仕事熱心というところからそんなに悪い印象はない。
 しかし、教団が腐敗していたという憶測は十分成り立つ。終章で大部隊の傭兵を雇えるだけの資産を有していたにもかかわらず、末端の修道院は苦しい現状が殆どだ。
 おまけに各地の教会は治療に金を取るほど経営が逼迫しているか腐敗しているかのいずれかだ。通常、教会は無償で治療を行うことが多いのだから。少なくとも、金を持ってなくても治療はするだろう。(後で寄付の約束させられるかもしれないが)
 こんな連中なのだから、世俗的な野心がないといわれても信用できない組織ではある。おまけにロプト関係者を見つけたら火あぶりにするべきだと主張しているようだ。
 
 
・総括
 資料は少ないが、中立的な立場から描いた当時の資料が少ないのとエッダ教団の事実を考えるにロプト=絶対悪と言い切れなくなってしまっている。
 むしろエッダ教団が積極的にロプトを滅ぼし事実を隠蔽しようとしている節が見受けられる。そもそも火あぶりを行う連中ほど信用できない連中はいない。
 
 
 戻る
 
 
 
 
 

Powered by
FC2携帯変換

閉じる
この広告は3ヶ月以上更新がない場合に表示されます。
ホームページの更新後、24時間以内に表示されなくなります。
この広告は3ヶ月以上更新がない場合に表示されます。ホームページの更新後、24時間以内に表示されなくなります。
inserted by FC2 system