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ママリを運営するコネヒト社の島田CTOにきく、プロダクトを支えるチームの作り方

今回は「ママの一歩を支える」をテーマにしたサービス、ママリを提供するコネヒト社CTOの島田さんにインタビューをさせていただきました。創業のキッカケ、開発組織の変化、様々なことについてお話していただいています。

ママ向けNo.1アプリ「ママリ」を提供するコネヒトを立ち上げ、創業CTOとして参画したキッカケは?

島田さんは社長の大湯さんと創業から一緒にやられていますよね。大湯さんとの出会いと、創業のキッカケはどのようなものだったのですか?
大湯との出会いは共通の知人を介して学生時代に出会ったのですが、互いにその知人に「面白い人を紹介してくれ」ってお願いしていたんです。「同じことを言ってるし、引き合わせるか」とその知人が3人でご飯を食べるキッカケをくれて、そこで初めて彼と出会いました。と言っても、彼は留学中の一時帰国だったのですぐにアメリカに戻り、そのときは全然一緒に起業するとは思っていませんでした。 その半年後くらいに彼が帰国したときにまた会うことになり、そこでウェブサービスをつくるアイデアのディスカッションなどで盛り上がり、最初のサービスをつくり、起業しました。
なぜ起業したのですか?
オーナーシップを持ちたかったからです。当時私は大学院に所属していたのですが、学部で大企業に就職した友人と話すと、入社から随分経ってもまだ研修を受けていて、しかも時間を消費する毎日だと聞きました。僕は怠け者なのできっとそういう環境に身をおくと本当にダメになるんだろうなと笑 だからオーナーシップを持って、成長できる「起業」という選択肢を最初に選びました。
なるほど。起業のときにつくられたサービスは「ママリ」ではないですよね?
はい。残念ながら最初のサービスは私達が思っていたほど伸びず、ピボットをすることになります。そこから今の事業(ママリ)をはじめました。ママリは2014年につくったので、2018年1月11日でまる4年が経過したことになります。
当時から考えるとメンバーもかなり増えましたね。
あのときは片手に収まる数のメンバーしかいなかったですが、今ではチームメンバーも増え、エンジニアだけでも1つの部になりました。

VPoPという立場をつくることで意思決定をよりスムーズに

組織の規模がある一定以上になるとマネジメントの仕事が多くなり、なかなかプロダクトに向き合う時間が減ってくると思います。他にも、CTO業務や社外向けの調整業務が増えてくるとプロダクトの意思決定とかにおいて自分自身がボトルネックになるようなケースって出てきますよね。さすがにそうなると個人だけで意思決定をするのは難しくなって権限委譲をする必要があると思うのですが、その辺りはもうすでに実施されていますか?
はい、そこは権限委譲や役割の明確化を進めています。創業期から一緒にやっているエンジニアに今年の1月からVPoPになってもらっています。少し前にClouderaのCTOの翻訳記事が話題になりましたよね。VPoPといった立場を作る手法も注目されているやり方で、プロダクトの責任者にエンジニアをアサインするといったような手法です。
この辺りのCTOやVPoPの役割分担というのはどのように定義していますか?基本的にCTOはプロダクトには口を出さないということでしょうか?
いちメンバーとしてプロダクトはこうした方がいいんじゃないかという意見を言いますが、意思決定の責任者はVPoPに寄せるようにしています。
この辺りすごく難しいと思うんですけれども、いちメンバーという前提で言ったことであってもCTOとしての意見というバイアスがかかってしまうことってありますよね。そのような問題は起きたりしていませんか?
その辺りは問題ないと思っています。というのも私はあまりそう言った意見を表だって言わないようにしているんです。中途半端な情報しか持たずに言う意見は良くないと思っていますし、言うとしてもVPoPに対して「点でしか見てないので、的外れだったら申し訳ないのだけど、この視点では〜」という意図の前置きとともに言うくらいですね。 VPoP以外の人がいる場所で色々いうのは意識的にやらないようにしています。あとは技術における大局観を持ってサポートをすると言ったことは意識してます。
この辺りのプロダクトのつくりかたや、進め方というのはVPoPという立場を作ってから変わったことなんでしょうか?それとも役割としてそこまでもとからはっきりわかれていたのでしょうか?
VPoPを立てるまでは社長の大湯がプロダクトオーナーという立場で仕事をしていましたので、実際私においてはあまり変わっていないです。何をやるかは大湯が決めていたので、そこが入れ替わったというイメージですね。この辺りのプロダクトオーナーとの関係ということにおいては創業期からずっと変わっていないです。
私も大湯もこだわりが強い人間なので、 本気でディスカッションをしてしまうとお互いに正論を言えてしまうんです。そのためルールとして最終的な意思決定権は大湯が持つということにしていました。とはいっても私と大湯の間で意思決定が大きくずれることがあまりなかったので、スムーズに作れてきたかなと思っています。
あと我々は行った施策に対してレビューをするといった仕組みを初期から入れていました。Pull Requestがマージされると施策のレビュー用のissueが自動的にできるようになっています。そのため、施策としてやったというエビデンスが残り、振り返りをした上での意思決定が常に行われていました。そういった仕組みや習慣があるので、ディスカッションで揉めるよりも実際に作ってしまって数値を見ようといった話をしたことがあります。振り返りって放っておくと忘れがちなのでこの仕組みは凄く良いかなと思っています。
Pull Requestといっても様々な粒感のものがありますよね。新しい機能の実装もありますし、細かい仕様変更などもあると思うのですが、全てにおいて振り返りを行っているということでしょうか?
はい、基本的には行っています。もちろん粒度や内容によっては振り返る必要がないものもあると思いますので、そのあたりの判断も含めて任せています。サイクルとしてはスプリントの実施単位である2週間で振り返っていますが、中にはその期間では効果が出ないものもあります。そういったものは少し長めにしたりしていて、重要な数値に関してはVPoPが直接見ています。
ママリをリリースしてからプロダクトとしての戦略が大きく変わった事はありますか?
1つ上げるとすれば、Googleの度重なるアルゴリズム変更を経験して、メディア事業においてSEOに強く依存したモデルというのは非常に危険だと再認識しました。ブランドを作り、そこにちゃんと帰ってきてもらうというのが大事だなと今まで以上に強く意識するようになりました。そういった意味ではSEOのみに注力するよりも、リピーターとしてママリの事を知ってもらえるユーザーを意識するようになりました。

ママリを運営するマネージメントスタイル

現在エンジニア・デザイナーはどれくらいですか?
エンジニアが11名、デザイナーが1名です。まだエンジニアやデザイナーの人数が足りていないので一人で一つの機能を担当するようになっているところもあります。こちらは単一障害点になってしまっているので、これから人数を増やしていかないといけないなと思っています。
1on1なども含め、この12名のマネージメントは島田さんがやっているのでしょうか?その際に意識している点などがあれば教えてください。
はい、月に一回のペースで行っています。1on1において特別に意識していることはないのですが、 毎日全員の日報に目を通すようにしています。
やっぱりオンラインでもコミュニケーションが取れていないと1on1というものは機能しなくなると思うんですよね。普段から喋っていないのに1on1だから喋れるなんて絶対に起きないじゃないですか。だから毎日日報を見てコメントする等、出来る限りコミュニケーションを取るように意識しています。
ただ日報といっても決して硬い内容ばかりではなく、日報内には自分のポエムのような、今思っていることを書くコーナーを設けている人もいて、読んでいて個人的にはとても面白くて、ついリアクションしてしまうコンテンツもあったりします。この日報の仕組み自体は社員全員やっていて、 Slackの日報Channelに投稿しています。私はエンジニアに対しては毎日全員に返信をしています。
聞いて思ったんですけれどもベンチャー企業といえどかなりちゃんとしていますよね。学生時代に起業していると、比較的ゆるい会社になるようなイメージがあります。昔からこういった報告や日報といったものはちゃんとしていたのでしょうか?
これはかなり初期からですね。 たぶんなんですけれども、私も大湯も基本的にすごく真面目なんですよね。決してそういった意識がお互いにあるというわけではありませんが、片方が頑張っているのにもう片方が頑張らないというのは変だなという認識はあるんですよね。そのため、そういった雰囲気は従業員やメンバーに伝わってるのかなと思っています。
やっぱりその辺りはマネジメントにおいても意識していたりしますか?
それはやっていますね。みんなが気持ちよく働くためのルールは守りましょうねと。例えばやっぱり遅刻は良くないよねといったような内容です。エンジニアだから遅刻してもいいといった風潮はあったりすると思うのですが、僕らはチームなのでルールを決めたらちゃんとそれを守ろうね、と。これは職種に関係なく、みんな持っていてもらいたいと思っています。
一般論ですがエンジニアって自由な時間で働きたがりますよね。そのあたりはちゃんとマネージメントできているんですね。
やっぱりオープンさが大事だと思っています。入社前にそういうルールで仕事をしているので、入ってくださる方にもみんなでそれを守ろうというのを伝えて入社してもらってるのが大きいですね。
他にチーム作りとかで意識してることありますか?
できるだけ本人が迷ったときには寄り添って応援するということを意識しています。うちのメンバーは比較的自由に色々な事に取り組んでくれているんです。オープンソースへの貢献だったり開発ブログや勉強会の主催などです。そういったことをできる限り支援しています。実現するにあたって障壁があるのであれば出来る限り取り除きますし、最大限サポートするようにしています。
そういったチャレンジをしたいと言ったような意見はどう言った場で出て来るのでしょうか?
1on1で目標や自分の成し遂げたいことといったものを話してもらうときです。弊社の富田というAndroidエンジニアの例でいうと、彼は最近Kotlinにコントリビュートしました。
そういう思いを持ってくれている人がいるのであれば、全力で支援します。結果として、彼はKotlin本体にコントリビュートし、チームにとても良い刺激を与えてくれています。もう一人のAndroidエンジニアもKotlinのコントリビュートに取り組んでくれていて、コントリビューター率100%のAndroidチームを目指すぞ!と、良い雰囲気になっています。このようなメンバーのために、定期的な1on1でうまく背中を押ようにしています。
次は「献本エンジニアになる」という目標をもってくれているみたいです。彼の目標は僕の目標でもあるので、例えばAndroidアプリやKotlinの取材のお話があったときに富田を推したりとかそういった支援はできますよね。こういった事例をもっと作っていきたいと思っています。
一方で必ずしも個人の目標が会社としてプラスとならないこと言うのもありますよね。そこは特に気にせずに支援をするというスタンスなのでしょうか?
はい、直接的ではないとしても個人の技術力の向上に関しては巡り巡って会社にとってプラスになると思っています。そのため個人の目標において会社が助けられる部分は、出来る限り助けてあげたいと思うんですよね。
そのあたり、副業に関してはどう考えていますか?副業からは自身の専門性以外でも学ぶことがあり、個人の成長という点においては得ることはたくさんあると思うのですが。
この辺りは非常に難しいと思っています。 うちの会社はプロパーで30名ほどの会社です。このくらいの規模なので、一体感がすごく重要だと思っています。そういった中で副業を認めてしまうと、やっぱり一体感が薄れてしまうと思うんですよね。
一方で社員数が多くなると、多様性を認める必要も出て来ると思います。そのなかで副業を認めるという選択肢もあるとは思っているので、要するにフェーズ次第かなと思っています。

島田CTOのこれからのチャレンジ

これからCTOとしてマネージメント領域においてチャレンジしてみたい事ってありますか?
引き続きメンバーを信じて、可能な限り自立したエンジニア組織をつくっていきたいですね。当然マネージャーという存在は人数が増えれば必要になると思いますが、マイクロマネジメントが必要とされる組織はスケールしないと思いますし、何よりメンバーがのびのびと働くことができないですよね。なので良いサービスをつくるために各人が良いと思うことをやってもらって、それが成果に繋がるようにしたいです。それと、可能であれば1on1などもミドルマネージャーをたててその仕組みをつくること自体を委譲していけるといいなと思っています。
そういったミドルマネージャーやVPoE的な人ををたてるとしたらどういった難しさがあると思いますか?
うちはメンバーが増えたのが、ここ1〜2年くらいなんです。プレイヤーとして入ってきているので、マネージャーという立場をお願いしてしまうと入社した時点のミッションとずれてしまいます。そこは難しいですが、そのメンバー達がマネージメントなどの仕事をやりたいと思ってくれるようになるのであれば任せていきたいと思っています。
確かにこのあたりは以前にBASE社のえふしんさんのインタビューでもあった内容です。仕事内容も変わってくるので、お願いの仕方なども難しいですよね。
やっぱりそこは徐々に任せるなり、何らかの決めをして周りに納得感を持ってもらわないと難しいと思うんですよね。
そうやってだんだんと現場に現在持っているマネージメントの仕事を移譲していくとしますよね。最終的に島田さんはどうなっているのが理想のCTO像なのでしょうか?
技術にもっとコミットすべきだなと思っています。現状は組織や制度整備など守りの部分の仕事が存在しています。私は機械学習が専門なので、サービスにおいて非連続な成長をできるような技術的な領域に専門性を活かしてちゃんとコミットしていきたいとは思っています。現在はあまり多くのリソースを割けてはいませんが、そういった非連続な成長を創る領域へのコミットは創業者がやるべきだと思っているんです。
コネヒト社としてマイルストンとして置いているものはなにかあったりしますか?
現状「ママリ」は2016年に出産したうちの5人に1人が使うサービスになっています。そこのシェアを増やしたいと思っていて、3人に1人、2人に1人と今の領域の圧倒的なデファクトスタンダードになるところまで持っていきたいですね。
うちの会社のミッションが「人の生活になくてはならない物をつくる」なので、ここまでくればほとんどの人が使っていると思うんです。「ママリ」というブランドがいわゆる妊娠・出産・子育てナンバーワンのブランドになっているよね、というイメージです。
島田さんご自身のキャリアを考えた上で、人生の目標とかはあったりしますか?
自分自身の作ったプロダクト通して世の中の人が幸せなってることが非常に大事で、それは自分が出来る限りやりたいと思っています。 それをずっと実現できるような環境でありたいと思っています。
では最後に、理想とするCTO像だったりこういうCTOでありたいというようなものがあればお願いします。
大きく2つあります。1つはCTOという名に恥じないくらいの技術力があること。2つ目は相反するような考えになってしまいますが、CTOという肩書に拘らないことです。最終的にはユーザーの体験が一番大事で、そのためには良いプロダクトをつくり、ユーザーを満足させることが大事だと思っています。それに対して技術的な判断も含めてちゃんと経営として意思決定し、最適な解を出すことができるようなCTOでありたいと思っています。
ありがとうございました!
2018/03/29 11:30
和田 修一 / wadap

和田 修一 / wadap

Tech Leadersの編集長。エンジニアです。
CTOのインタビューをしています。

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