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「On Your Mark」と宮崎駿の資質
2014/05/28 (Wed)
ASUKAが逮捕されて、ジブリのブルーレイから外されるらしい、なんてニュースが流れているので、「オンユアマーク」について書いてみます。
これは元々、チャゲアスのライブに流すために、
ジブリ(というか、宮崎駿)が発注されて作ったPVです。
「耳をすませば」の同時上映として、上映されました。
はっきりいってこの作品、歴代のPVの中でも、最強の1本ではないかと思います。
認知度だけでいえば、はるかにメジャーなPVはあるでしょうが、
クオリティに関していえば、これをしのぐものを作るのは、
まあ、無理だと思います。
そもそも予算のかけ方が違いすぎるのですが、
なにより宮崎駿という才能が本気を出しているので、
誰も敵いません
(予算だけなら、海外のもので、同じかそれ以上にかけられたものは
あるでしょうが、だからといって「オンユアマーク」を
しのぐものは作れません)。
ちなみに、発注が来ただけなので、
宮崎駿自身は別にチャゲアスのファンという訳ではないです
(それもまあ、すごい話で。思い入れがあるから
特別に気合の入ったものを作った訳ではなく、
あのくらいのクオリティは、宮崎駿にすれば、最低限のレベルの仕事
なのかもしれません)。
特に苦労した訳でもなく、本人は
気晴らしになって楽しかった、みたいなコメントを残しています。
で、まあ、見れば分かると思いますが、
どんなPVでも「オンユアマーク」には敵わないです。
これはもう仕方のないことですが
(同じ予算をもらっても、あれは作れないと思います)、
では、どうすれば「オンユアマーク」のようなものが作れるのか?
そのすべてを分析するのは手に余るので、とても出来ませんが、
一助として、部分的な分析をしてみたいと思います。
その部分というのは、「世界観」という観点で、
「オンユアマーク」は、「世界観」の構築がすごい作品なのです。
押井守が好きな「世界観」という概念
二言目には「世界観」を持ちだすのが、押井守です。
しかし、この定義は、いつもよく分かりません。
以下、「世界観」を持ちだす以上、押井守に触れない訳にはいかないので、
脱線になりますが、少し書いてみます。
そもそも「世界観」という言葉自体に、多様な定義が
ありすぎる上に(キャラクターの世界の見方とか、
作者の世界の見方とか、メッセージやテーマを主とする、ロジカルな
意味合いから、単に設定全般や雰囲気など。ちなみに押井守が指しているのは、
後者の設定全般のことらしい)、
押井守の発言を総合すると、『押井「世界観」』(押井守言う所の「世界観」)
というのは、
設定全般のことらしいのですが(どんな時代で、社会状況で、
どんな組織があり、テクノロジーがあり、その他、どういう
設定が入っているか、という諸々の要素)、
押井守の使う「世界観」という言葉の定義自体は、あいまい過ぎて、
なにが「世界観」なのか、よく分かりません。
たとえば、「エヴァンゲリオン」は、設定は多いけど、
統一感がとれてないから駄目、とダメ出しをしています。
そんなもん、お前の匙加減だろう、と言いたくなる、雑な定義です。
あるいは、ジェームズ・キャメロンとの対談の話。
キャメロンは、キャラクター、ストーリー、
世界観の順番で考えるらしいが、
自分は逆に世界観から考える
(だからキャメロンは駄目なんだ、というニュアンスを感じる話でしたが)、
という発言をしています。
しかし、そもそも、押井守の定義する「世界観」という言葉自体が、
キャメロンに通じていない気もします
(定義があいまい過ぎて、押井ファンにすら分からないものが、
初見の外国人に100%理解できるわけなどありません)。
で、押井守の言う「世界観」は定義自体は、よく分からないのですが、
毎回、それを真剣に考えているらしいということだけは伝わってきます。
インタビューで、作品の話をするときは、いつも「世界観」。
人の作品をけなす時も「世界観」、ほめる時も「世界観」
(「ブレードランナー」など)ですから。
その割に押井作品の世界観というのは、
世界観の構築(設定のアイデア量、世界の実感性、一貫性、スケール感、
多様な価値観など)において、
富野ガンダムにも、宮崎ナウシカにも、追いついていないだけでなく、
はるかな古典、手塚火の鳥にすら、追いついていない気がします
(たとえば、キャメロンは「アバター」で「ナウシカ」の
世界観をパクっていますが、押井守はパクられていません。
「マトリックス」がパクった「攻殻機動隊」のイメージは、
元々「ブレードランナー」から持ってこられたものなので、
押井のアイデアも入っているものの、まあ、パクリのパクリ、みたいな話です)。
とはいえ、ここら辺は、押井守が、なにを「世界観」のある作品の理想と
しているのかが分からないので、議論にもなりませんが
(富野ガンダムの「世界観」構築の方がすごいと言っても、
押井守が、自分の言っている「世界観」というのは、そういう意味ではない、
と言い出せば、話はそこで終わりです。要は、押井守しか
定義を知らない、という「無敵の理論」なわけで。
論理性、一貫性、客観性を持たない「教祖の言葉」みたいなものです。
教祖が白といえば白、黒といえば黒、という以外に
判断基準を持たない類の話であり、真面目に付き合わない方がいい気がします)。
ともあれ、押井守の好きな「世界観」(設定の構築という解釈)を
もとに「オンユアマーク」を見てみましょう。
「オンユアマーク」と世界観の構築
「オンユアマーク」は、セリフが一切無いにもかかわらず、
そこに歴然と世界観が存在しています。
そこは未来の世界で、チャゲアスをモデルにした二人組は、
特殊部隊の一員かもしれませんが、それほどエリートという感じではなく、
市の職員という雰囲気です。
巨大な高層ビルが立ち並び、「目」をシンボルマークにした教団に
部隊が、空から突入する場面から始まります
(当時は、オウム事件の直後であり、オウムをイメージしていると思います。
「目」のシンボルマークは、「ピラミッドと目」などでも有名ですが、
元は漫画版のナウシカからの引用で、後に浦沢直樹の
「20世紀少年」に引用されている気もします、「教団」+「目」という
組み合わせは)。
教団は、翼の生えた少女を捕まえています。
あるいは、彼らの呪われたテクノロジーで作られた、人工的な存在かもしれません。
教団は武装するほど非合法な集団ですが、
とはいえ特殊部隊の敵ではありません。戦闘は一方的に終わります。
未来世界での治安の荒廃と、特殊部隊の優秀さが描かれています
(後に、その特殊部隊を含めて政府を敵に回す決断を迫られるので、
主人公たちは悩みます)。
即座に武器で反撃する教団にも、狂気がうかがえます。
信者にどういう教えを説いていたのかは知りませんが、自分たちが
突入を受ける可能性があるほど非合法な集団である意識はあったのでしょう。
空からの突入というのも、意表をついていますが(アイデアです)、
何度もやっているような、手慣れた感じもうかがわせます
(非合法な集団が多い、アナーキーな世界なのでしょう)。
特殊部隊と政府の目的は、どうやら教団の壊滅ではなく、
少女の奪取にあったようです。戦闘後も、
教団関係者の死体をチェックしていきます。
おそらく、この程度の教団や非合法集団(巨大なビルを構えるレベルの)
などは、未来世界では珍しくもないのでしょう。
それだけなら目をつぶったり、泳がせたりするのでしょうが、
少女というレアな存在は、教団を壊滅させても手に入れたかったようです
(要は、ついでに壊滅させられたみたいです)。
少女は政府施設で実験されることになります。
その現場に居合わせたのが、チャゲアスをモデルにした二人組です。
宮崎アニメらしく、一目で少女に惚れたアスカは、
チャゲと、行きつけの居酒屋で酒を飲みながら、悶々とし、
部屋で一人、少女奪還計画を練ります。
その後、世界はパラレルに分岐し、奪還作戦に失敗した未来と、
成功した未来とが描かれます。
防護服を着た政府の科学者を注入ガスでふくらませて倒し(アイデアです)、
少女を奪還した二人は、宮崎走りで逃げていきます。
二人が使うのは、清掃局が使うような巨大な自動車である点も、
市の職員っぽさがうかがえます。
これらの、あらゆる要素は、チャゲアスというモデルの二人を除けば、
二人の着ている制服(ユニフォーム)も含めて、
すべて、宮崎駿が考えて、構築したものなのです。
何のセリフも無いのに、ここまで分からせてしまうというのもすごいです
(解釈は、ある程度、分かれると思いますが)。
これらの設定などが、すべて世界観です。
※「オンユアマーク」の解釈が全然違う件→リンク
記憶だけで書いているので、かなり違っていました。
分岐は2回あり、3度やり直しているようです。
原発後の世界を舞台にしている、という背景設定のようです。
原発のマークや、チェルノブイリの石棺をモデルにした、
建物が描かれているようです。
主人公の二人は、明らかに警官(菊のマークがついている)でした。
教団は「1984」がモデルだそうです。
少女の解釈については不明(教団を潰すのが目的か、少女を
手に入れるのが目的か)。
ということで、解釈が間違っていたり、読みとれていない情報が
ありますが、それは別にいいんです。
要は、世界観としての一貫性があり、伝わってくるものがある、
ということがポイントですから。
一貫性を持たせているのにも関わらず、解釈に多様性があるというのは、
深みがあるともいえます(より深い読み方に段階的に
進んでいける、ということで)。
他のPVと比較した場合、どうなのか
PVというのは基本的にイメージ映像なので、
普通、論理性には欠けるものです。一貫性はありません。
日常を切り取ることで、世界観を獲得している例もありますが
(レミオロメンの「3月9日」などは、そういうタイプの傑作ですが)、
あくまでも「日常世界」、われわれのよく知っている世界を引用
しているだけで、「知らない世界」を構築している訳ではありません。
アニメPVなら、そういうことが得意そうですが、
似た感じに、例えば森本晃司の「EXTRA」(ケン・イシイ)があります。
「エクストラ」には、世界観の構築らしき雰囲気がありますが、
展開としては支離滅裂な上に(イメージ映像の積み重ねだけで、
キャラクターの設定や、世界観、生活感などはありません)、
しかも「アキラ」の世界観を森本風にアレンジしただけなので、
元ネタのイメージが明白です(パイプを配した風景、
薄汚いビジュアルイメージ、抗争、金田のようなヒーロータイプの登場など)。
「アキラ」を引用するだけなら一貫性はあるのですが、
森本アレンジという増築のせいで、一貫性が無くなっています
(余談ですが、「アキラ」もまた、押井アニメより、遥かに
世界観の構築された作品です。押井がどう言うのかは知りませんが)。
村上隆のヴィトンの広告(細田守監督)などにしても、そもそも
世界観の構築など、念頭にはありません。
こんなもんでいいでしょ、感が漂っています。
アニメとはいえ、PVで世界観を構築しようとする人など
(オリジナルで、一貫性のある設定を大量投入して)、
そもそもいないのです。
ここまで世界観を作りこみ、
二人のキャラを主人公に、
そのままTVシリーズくらい作れるんじゃないかというほど
勢いのある作品というのは、
「オンユアマーク」くらいで、その特異性を表しています。
こんなものは、だれも真似できない気がします
(将来的に、匹敵するようなものを作る人が出てくるかもしれませんが、
少なくとも、これが作られた95年の以前には存在せず、
以後15年以上にわたり、出てきていません、と思います)。
これを「気晴らし」で作れてしまうあたりが、
宮崎駿のケタ違いの才能の表れでしょう。
最後にオンユアマークの世界観のおさらいを
・未来世界でビルが林立する、テクノロジーは進歩している
(背景世界、時代、テクノロジーの状況)
・特殊部隊が活躍するほど、アナーキーで治安の悪い世界である
(治安状況、人々の意識)
・新興宗教が巨大なビルを構えるほど、人心は荒廃している
(教団の組織、人々の意識)
・特殊部隊は、空から突入する、突入に慣れている
(特殊部隊の組織、いつもの方法)
・敵味方、マシンガンで武装するほど治安が悪い
(社会状況、人々の行動力)
・高層ビルな割に、中は木で作られた、いかにも教団らしい
美術である
(教団らしい胡散臭い背景美術、木への弾着などのアイデア)
・特殊部隊の目的は少女であるらしい
(目的と行動、ストーリーの軸)
・羽の生えた少女の登場
(設定、特殊な存在)
・主人公は少女に惚れる、欲得抜きの、いい奴である
庶民派な感じがうかがえる
・もう一人は、お調子者である
・政府による少女の実験
(背景設定、非人道的なことを平気でやる価値観など)
・主人公たちによる奪還計画
(行動とアイデア、ストーリーの軸)
・行きつけの酒場や、一人暮らしの部屋
(生活感とキャラの設定)
・政府の研究所
(防護スーツや、警報のサイレンなど、諸々の設定)
・乗っている車
(洋風で、鳥山明を彷彿とさせるイメージ)
・清掃車
(清掃車という巨大なものを出してくるアイデア性)
・草原や空など
(気分の演出)
要は、普通に見ている分にはストーリー軸くらいしか、
頭に入ってきませんが、実は、ストーリー軸だけでなく、
これらの背景や設定もストーリーボードなどで考えながら、
全てアイデアを出して、構築していっている訳です。
大きく分けると、
未来世界の背景設定、教団の設定、特殊部隊の設定、
職員として働く主人公たちの立場と性格設定、生活感、
少女の設定、研究機関の設定、さらにラストのアクションを
とりまく設定(道とか、飛行機とか、車とか)などなど。
映画なら普通の作業でしょうが、PVでこんなことをする人はいません。
短編映画レベルでも、ここまでする人はいないでしょう。
まさに、プロとしか言いようがない仕事です。
以上、世界観から見た「オンユアマーク」でした。
この頃のアスカは、いい奴キャラだった、というのも、泣ける話ですが、
ブルーレイから、「オンユアマーク」削除というのも、ひどい話ですね。
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