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『宮崎駿の悪意と贖罪』(岡田斗司夫無料メルマガより)

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先日、ジブリ実験劇場 『On Your Mark』 についての記事を書きました。


同じ題材で、 ”オタキング”岡田斗司夫さん が無料メルマガ(27日分)で私見を述べられていました。


当然ですが、私よりもかなり深いところまで掘り下げていらっしゃるので、そのメルマガを転載させていただきます。









宮崎駿の悪意と贖罪
---------------------------

おはよう! 岡田斗司夫です。

いやー、びっくりしました。

宮崎駿の短編アニメ『オンユアマーク』がネットに動画、UPされてるんですよね。
http://dout.jp/864

「ジブリ実験劇場」と銘打たれた作品で、もともとはCHAGE&ASKAのコンサート会場での上映ムービーとして作られました。

この作品、一般的には「核戦争後の世界で、希望を語った=どんな時代でも夢と希望を失ってはいけない」と解釈されているようです。

荒廃した世界で、翼をもつ天使のような少女を監獄から助け出して大空へとかえす。

そんなシーンから、てっきり「良い話」だと思ってるアニメファンが大多数です。

でも、僕の解釈は違います。

この話は、宮崎駿の強烈な悪意と絶望と、そして贖罪意識から作られているのです。

なぜかというと・・・

描かれている世界は「原発が未曾有の大事故を起こし、人が住めなくなった地球」です。

Twitterで「核戦争後じゃないんですか?」という質問を受けたんですけど、違います。

冒頭のシーンをよく見てください。

建物や街が壊れずに残ってるでしょ? 周囲には「放射能汚染標識」があり、朽ちた鉄条網が見えます。

つまり、あの死の街は「放射能に汚染されて、鉄条網で隔離された」「その鉄条網が朽ちるに任せている=もう隔離が意味ないほど、世界全体が人類の住めない環境になっている」わけです。

核戦争・核ミサイルなら、街は破壊されているはず。

でも街は美しいまま。ただ誰も住んでいません。

背後に見える真っ黒な巨大な建物は「棺」です。

「棺」とはチェルノブイリ原子力発電所が大事故のあとに、放射能汚染を封じ込めるためにベトンでビルごと固めた処置のことです。

死の街の背後にそびえたつ「棺」と、放射能汚染標識に朽ちた鉄条網。

セリフやナレーションなしに、宮崎駿はこんな恐ろしい世界を描いています。

地球のあらゆる場所は放射能に汚染され、人が住めなくなった。

なのでドーム都市を造り、人類は生き延びています。

まるで『進撃の巨人』のような情況です。

わずかに生き残った人類はドーム都市に隠れ住んでいます。

しかし、そのドームの中でも人は争いあい、殺し合っている。

主人公は警察官です。

でもその警察は、カルト宗教組織の本部に突入し、逮捕令状なしに機関銃を連射します。

彼らがやってるのは「犯罪者を逮捕」ではなく「敵を虐殺」です。

すでに警察が、警察では無くなってる世界。

女や子どもを殺し、降服を認めず全員を虐殺する作戦に主人公は参加します。

そこには法の秩序も正義も、そして大義もありません。

逃げ場のない主人公は、安酒場で友達と酒を飲みながら、妄想します。

俺たちのやってることに、もし意味があるなら・・・

もし正義や真実があるとしたら・・・

彼の妄想は、いま飲んでる安酒場から離れて、くつろいだ自室でワインを空けている自分を想像します。

花やプレゼントを贈られて、今日の「仕事」を祝福されている妄想です。

その妄想の中では、彼は友達と一緒に「女の子を助ける」ヒーローです。

でも、どんなにリアルに想像しても、妄想の中ですら少女を助けることはできません。

ついには、いつも乗ってる耐放射能装甲車が秘密ボタンを押したら空が飛べる、という荒唐無稽な想像までするようになりました。

いつしか、フィルムの中で彼の妄想と現実とは混在します。

なにが真実か、宮崎駿は語りません。それが目的のフィルムでは無いからです。

宮崎駿が『オンユアマーク』で語っているのは、彼自身の贖罪です。

アニメ監督とは、人に夢を与える職業。

この世に存在しない世界で、存在しない人物が、現実ではありえないような都合の良い展開で幸せになる。

観客はそんな「宮崎駿のウソ」に癒やされ、勇気と元気をもらって、映画館から出て行きます。

現実世界は国際情勢も経済状況も環境問題も、すべて宮崎駿にとっては絶望的です。

だからこそ、彼は「ウソの世界」を描くのです。

『オンユアマーク』の主人公は、滅亡後の世界で生きています。

でも、人はそんな世界でも夢を求めます。生きがいを求めます。

現実にそれがないなら、ウソの、空想の、アニメの世界でもいいんです。

お互いを殺し合いながら絶望している原発崩壊後の世界で、現実の辛さゆえに夢を見てしまう、アニメのような虚構の妄想の世界を信じたいと思ってしまう二人の男の話です。

ラストは「翼の少女」を大空へかえすシーンです。

少女は「喜びの顔」で大空へ帰り・・・ません。

その前に、二人を見下ろして、優しく微笑むのです。

まるで慈母のように。

すべてを認め・許してくれる微笑みです。

世界を滅ぼした人の業を許し、妄想の世界でしか正義に生きられない主人公を許し、そしてアニメ作家の宮崎駿を許します。

「またあなたは、空を飛ぶ女の子の話を作ったのね。原発で作った電力で、資本家から集めたお金で、あなたを信じるファンの人たちに向けて、いつもの【空を飛ぶ女の子】の話を」

少女が大空へ帰った後、主人公の乗ったオープンカーは道を外れて止まります。

人が生きられないほど、放射能に汚染された世界です。

翼を持った少女は、当たり前だけど奇形種でしょう。

主人公ふたりは、口や鼻や目や,身体中から血を流して死んでいるはずです。

でも、そんなシーンは具体的には描かない。ただ暗示するだけです。

二人の死を描かずに、ただ「車が止まった」シーンを大俯瞰で描くだけ。

「わかる人にだけわかる」という救いの無いラストだけど、逆に「オレの作るアニメなんかおとぎ話だよ。でもオレは夢を語る。それしかアニメ屋にはできないから」という宮崎駿のメッセージがまっすぐに伝わってきます。

「現実が絶望でも、オレの語る夢がウソっぱちでも、それでも人は明日に希望を抱かないと生きていけない」「だからオレはアニメを作る」と宣言しているのです。

このアニメが描くのは「絶望」と「絶望の世界でも夢を欲しがる、人の切なさ」です。
『風立ちぬ』を語る 宮崎駿とスタジオジブリ、その軌跡と未来 (光文社新書)
で詳細に解説しました。
http://goo.gl/EDk71v


僕たちはウソっぱちのアニメで「自然の大切さ」「人間の素晴らしさ」を教えて貰います。

それは「宮崎駿の語る夢」でしかない。

それでも、僕たちは「ウソっぱち」に癒やされ、感動し、勇気を与えて貰うから生きることができるんです。

ジャーナリズムや科学など「真実」は、僕たちにチカラを与えてくれます。

アニメや小説などの「ウソ」は、僕たちに勇気と希望を与えてくれるのです。

じゃあ、また明日。バイバイ!












どうですか?


ここまでアニメから深く読み取ることができるって、素敵なことだと思います。


自分の思慮の浅さが身にしみ、更に精進しようという気にさせてくれます。


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【関連記事】
もう一度観たい『On Your Mark』~震災から3年を経て… [2014/03/23]











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