組織切片作成法
  ※まだまだ試行錯誤中ですが、ご参考までに・・・

パラフィン切片作成法    polyester wax包埋はこちら
<用意するもの>
無水エタノール*1
xylene(キシロール)
パラフィン・蜜蝋*2 (95:5)
固定標本
固定瓶
包埋容器*3
40℃と60℃程度の恒温庫*4

*1 普通に買えるエタノールは99%程度の濃度である。モレキュラーシーブスや無水硫酸銅を加えて無水エタノールを作っておく。
*2 パラフィンは高融点のもの(60℃程度)と低融点(54℃程度)のものがある。これらを混合して使うか、必要に応じて蜜蝋を加えて粘りを出す。またパラフィンは再製する(使用済みパラフィンを濾紙で濾して再利用する)と、組織との馴染みがよいとか薄切しやすくなるとかと言われている。
*3 大きな組織の場合(哺乳類など)、陶器の包埋皿などが売っているのでそれを使うと良い。しかし、棘皮動物の胚のように小さな組織の場合包埋皿は大きすぎるので、方眼紙やアルミホイルを箱形に折って包埋皿の代わりにする。
*4 40℃の恒温庫はパラ/キシ用。60℃の恒温庫はパラフィン用、用いたパラフィンの融点の2-3℃高く設定する。

<包埋法>
1) 固定標本をよく洗い固定液を抜く。この時、固定液の種類によって洗浄液に注意すること。つまり、ホルマリンやグルタールのような水溶液性の固定液の時はPBSで、カルノアやエタノールのような有機溶媒固定の時は、基剤の有機溶媒の濃度に合わせてアルコールで洗浄する*1
2) (50), 70, 80, 90, 95, (99), 100%の不連続なエタノールシリーズを数十分から数時間ずつ通すことにより脱水する。有機溶媒固定の時は、アルコールシリーズの途中から始める。 ※マウスの脳で、70%EtOHは1日程度(数回交換)、その他のステップは1時間程度と言われる。処理時間が長すぎると組織が堅くなるので注意が必要。
2.5) 卵黄や脂質の多い組織の場合、ここでクロロホルム処理を行う。クロロホルム:エタノール=1:1、100%クロロホルム、クロロホルム:xylene=1:1といったシリーズを通してもいいかも。クロロホルム処理は免疫染色に影響を与えないと言われているが、クロロホルム処理していない組織も用意して、確認してみる必要がある。
3) xyleneを数回交換し乍ら完全に脱水する*2。 30-60分×2~3回
4) パラ/キシ(パラフィン:xylene=1:1)に浸す。1回くらいは交換する。
5) パラフィンに移す。1-2回交換する。 60分×2~3回
6) 氷を入れた水を適当な容器に入れておく。
7) パラフィンの浸透した組織を包埋容器に移す。大きな組織は熱したピンセットを使って、棘皮動物の胚などの小さなものは熱したピペットなどで移す。
8) すぐに冷水につける。ただし沈めてしまわないこと*3
9) 解放面に息をかけてパラフィンの被膜を作らせた後*4、冷水中に沈める。
10) しばらく放置して、完全に固める。
11) 固まったパラフィンブロックは、涼しいところまたは冷蔵庫で半永久的に保存可能と言われている。

*1 先にも書いたが、ホルマリンやグルタール固定したものはPBSなどの水溶液でしっかり洗う。70% EtOHやブアンで固定した場合は、70-80% EtOHから、TCAで固定した場合は90-95% EtOHから、カルノアで固定した場合は100% EtOHからアルコールシリーズを通す。
*2 脱水が不足していると、xyleneに移したときに組織が白濁して使えなくなってしまうので十分にEtOHで脱水する。また、EtOHの残留が多いとパラフィンが浸透しない。ただし、EtOHもxyleneも処理が長すぎると組織が堅くなるので注意すること。
*3 四方が固まった後に次の行程に進む。
*4 パラフィンの被膜の形成が不十分だと、ブロック内に水が入り込み悲しい結果を生む(後に薄切しているときにブロックから水が出てくる)。


パラフィン切片の貼り付け
<用意するもの>
スライドガラス
パラフィン伸展台
貼り付け剤(お金のある人は各試薬メーカーから出ている製品をお使いください)
古典的には卵白グリセリンが使われる
1. 新鮮な鶏卵から卵白を採る。
2. よくかき混ぜる(プロトコールによって「泡立てるな」というものと「よく泡立てろ」というものがある)
3. 2-3重にしたガーゼでろ過する。
4. 当量のグリセリンを加えて撹拌する。
5. 防腐剤(チモールを一粒、あるいは、ホルマリンを数滴)加えて冷蔵保存。
自家蛍光、抗体の非特異吸着、染色のバックグランドなどが気になる場合は、アルブミン・グリセリンを使う。
25mg/mL 卵白アルブミン in 50% グリセリン  ※小分けして凍結保存する。
☆貼り付け剤を使いたくない場合は、シランコートスライドガラスやpoly-L-lysinコートスライドガラスを使う。

<貼り付け法> アルブミン・グリセリンを使って。(卵白グリセリンも同様にできる)
1) スライドガラスを超音波洗浄し、よく乾かしておく。
2) スライドガラスの切片を貼り付ける面に、アルブミン・グリセリンをごく少量垂らす。
3) キムワイプを折りたたんで適当な大きさにし、アルブミン・グリセリンをスライドグラスに薄くまんべんなく塗り広げる。 ※「ちょっと足りないかな?」と思うくらいが適量。
4) ホコリが付かないようにして(プレパラートボックスなどに入れて)保存する。 ※半乾きになったくらいが「貼り付け頃」!!
5) 伸展台を37-40℃に暖めておく。
6) アルブミン・グリセリンを塗った範囲に、蒸留水をたっぷり滴下する。
7) この蒸留水の上に切片をのせる。
8) スライドガラスを伸展台の上に置き、充分に切片を伸展させる。
9) 2-3cm角に切ったろ紙を使い、標本の位置を修正しながら余分な水分を除去する。
10) 割り箸などを枕にしてスライドグラスの一端を高くし、そのまま静置して余分な水分を一方に寄せる。
11) ろ紙を使って充分に水分を吸い取る。
12) 枕を外してスライドガラスを水平に静置させ、一番程度放置する。 ※ホコリが付かないようにカバーをすること!!
13) 貼り付け終わったスライドガラスを、プレパラートボックスなどに保存する。
14) 伸展台のスイッチを切っておく。

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