今季メジャー初戦、マスターズ・トーナメント(4月11日開幕)まであと1カ月となった。ゴルフ界はもうマスターズの話題で持ちきりだ。ゴルファーなら誰しもがマスターズと聞くとその瞳を輝かすのだけれど、残念ながらアーニー・エルス(南アフリカ)はその中にいない。1994年から23回出場し、フィル・ミケルソン(米国)に勝利をさらわれた2004年を含む2位が2回と、グリーンジャケットをまだ手にしていない。
「オーガスタには女神がいて、特別な選手だけにほほ笑むんだ」とエルスは言う。特別な選手とは、97年に12打差の圧勝劇で初勝利を挙げて4勝したタイガー・ウッズ(米国)、3勝のミケルソン、あるいは今なおオーガスタで好プレーを見せる92年覇者のフレッド・カプルス(米国)のことかもしれない。「そして最後まで女神がほほ笑まなかった選手もいる。僕はその中の一人に入ってしまったんだ」とエルス。それは、首位を走りながら大敗したグレグ・ノーマン(オーストラリア)や4度の2位に甘んじたトム・ワイスコフ(米国)を指しているのだろう。
「もう十分に戦ったから悔いはない。でもマスターズは僕にとっては悪夢だった」と話す49歳は少し寂しそうだった。マスターズの女神は本当にきまぐれ。女神はほほ笑まなかったけれど、メジャー4勝を含む米ツアー通算19勝、現在も生涯獲得賞金ランキングで米ツアーを戦うエルスの偉業は、少しも色あせることはない。 (全米ゴルフ記者協会会員)