Motohiko Izawa

安土宗論が話題になっているので、つい『逆説の日本史10』を読んでしまった。安土宗論については不勉強なのでよくわからないが、『逆説の日本史10』に書かれている天台教学についての説明は間違っていると思う。

「爾前（法華経以前のことを特にこう言う）の約四十年間には真実の悟りは無かった」…釈尊が『法華経』段階になって初めて悟った、というのはさすがにまずいと思う (^_^;) 「方便」ということばをちゃんと理解されていないっぽい。

化法の四教（蔵・通・別・円）について、「このうち「蔵、通、別」は小乗の教えで、第四番目の「円」が大乗の（真の）教えとされている」と述べられているが、通教・別教も大乗で「小乗の教え」ではない。

「安土宗論は信長の八百長」というのが「歴史学界の定説」とのことだが（そうなんですか？）、研究史の紹介が少なすぎて、なんとも判断できない（中尾堯、高木豊両先生も「安土宗論は信長の八百長」と主張したことになってしまうのだろうか）。

しかし、仏教史の「最大の権威といえる人は辻善之助博士」なのかー。違和感があるなぁ。まあ、辻善之助の業績はすばらしいと思うけど、さすがに古すぎるのでは (^_^;)

辻善之助の日本仏教史は、先行研究と言うより、近代仏教史研究の「研究対象」という感じである（オリオン・クラウタウさんらの研究など）。まあ、このへんの線引は難しいけど。