モロカイ島、そこはフラ発祥の地といわれています。日本でフラに全く関わっていなかった私がモロカイの地元フラ・ハラウ(フラ教室)を訪れたのは、単に“折角の本場なので見学させてもらおう”と思っただけのことでした。そして、初めて間近で見るフラの練習風景は、想像以上に魅力的だったのです。
優雅なモーションと吸い込まれそうな笑顔は勿論のこと、そこに至るまでの過程で時折怒号さえ飛び交うこともあるほど真剣な空気。見学している私でさえ少し緊張感を覚えるほどでした。でも基本的に職人技に興味がある私は、食い入るように見ていたのでしょうか。クム・フラ(フラの先生)が突然私に手招きをして『見よう見まねでいいから、後ろで踊ってみなさい』というのです!
私は余りに驚き『とんでもない!!私なんて無理です!』と言いましたが、そのクムの瞳はとても穏やかで包み込むように優しく『いいからやってみなさい。きっとあなたは踊れるから』というのです。その優しく強い眼差しにそれ以上NOとはいえず、練習中のフラダンサーの一番後ろで挑戦することに。
すると・・・まるで映画のように素敵に踊れちゃった!なんてことは全くなく、案の定ヒドいフラです。自分でも恥ずかしくなるくらい、それはマイケル・ジャクソンのスリラーに出てきそうな、フラとは程遠いものでした。しかし不思議なことに、そんなにヒドい踊りなのに私の心は気持ちが良くて仕方ないのです。
ダンサーを見ながら真似して体を動かしている。その動きもダンサーとは掛け離れた動き。それにも関わらず、楽しくて嬉しくて心が躍っていたのです。その姿を見てクムは『また来週も来なさいね。素敵なダンサーになれるから』と笑顔で見送ってくれました。
いや、どう贔屓目に見ても、誰もそんなこと思えなくて当然なほどヒドい動きだったのですよ、私。でも、クムの優しさと何ともいえない心地良さに魅せられ、次の週もその次の週も毎週ハラウに通うようになり、私のフラ人生がスタートしました。
モロカイのハラウは、単なるフラという踊りだけを教える場ではなく、地域ぐるみの教育の場でもあるように感じます。多くのダンサーは子供の頃からハラウに通い、クムを第2の母親のように慕い、仲間を家族のように思っています。勿論クムもダンサー達を我が子のように思い、愛情たっぷりの眼差しで、時には叱ることもあります。
モロカイという小さな島だからこそ、こうした絆がより強くなるのかもしれません。このような環境は、フラを通してたくさんのことを学ばせて頂けた非常に恵まれたものだと感謝しています。フラを始めてから日本でフラが大変人気があることも知りました。遠く離れたハワイを思いながら踊るって素晴らしいことだと思います。そんな皆さんに少しでもハワイで感じることをこのコラムでシェアできたら嬉しいです。
プロフィール
荒川 れん子
現在ハワイ在住フリーアナウンサー。本格的にハワイに拠点を移し14年目。その大半をモロカイ島という小さな島で過ごせたことに感謝の日々。現在はオアフにも拠点を持ち、できる限りモロカイと行ったり来たりしている。
ソニー・ミュージックアーティスツ所属
オフィシャル・ブログ『ALOHA♡Life』