数ヶ月前のことです。私がハワイに移り住んで以来、最も悲しい出来事がありました。私にフラという新たな希望を与えてくれたクムフラ（フラの先生）、アンティ・モアナことモアナ・デュドワさんが亡くなったのです。 今年に入り忙しかった私は、モロカイに帰った時もタイミング悪く中々アンティ・モアナに会えず、電話でのやり取りが続いていました。しかし亡くなる一週間前、初めてハワイ入りした私の母がどうしてもアンティ・モアナに挨拶がしたいというので、かなりの強行スケジュールのなか会いにいったのでした。まさか、その一週間後に亡くなるなんて…。今思えば、呼んでくれたのかなと感じます。 アンティ・モアナはモロカイ島では知らない人がいない、島中の誰からも愛される人。

そして誰をも愛してくれる人でした。日本という異国の地から来た私でさえ、初めて会った時からオープンに受け入れてくれて、常に私が淋しくならないように気遣ってくれました。今でもアンティ・モアナがいつも言ってくれていた「れん子！こっちに来なさい！いっぱい食べるのよ」とか「れん子も私の姪っ子のようなものよ。ファミリーだからね」、「フラを辞めちゃダメよ。素敵なダンサーになれるからね」と聞こえるような気がします。誰に対しても同じように大きな愛を注いでくれたアンティ・モアナ。彼女の死はモロカイ中を悲しみで染めました。 アンティ・モアナのお葬式には今まで『Moana’s Hula Halau』に属したことのあるダンサー達が一堂に会しました。それはモロカイ島だけではなく、既に他の島やアメリカ本土に生活の拠点を移した人達も含め、その数およそ300人にも！ ダンサーだけでなく、皆がアンティ・モアナのために何かできないかと人々が集まり、手作りとは思えないほど盛大なお葬式となりました。モロカイ島の人口が約7,000人といわれる中、お葬式には3,000～4,000人も集まったといわれ、モロカイ島最大級のイベントとなったのです。

幼い頃を共に過ごしたフラダンサー達が久しぶりの再会を喜ぶのは勿論ですが、不思議なことに私のように大人になってからハラウ（＝フラの学校）に来た者にとっても、何故か皆を懐かしく感じる、そして繋がっている感覚。その時、１人のフラシスターが言いました「アンティ・モアナも来てるね」と。そうなのです。アンティ・モアナはいなくなってしまったのではなく、いつも私達を見守ってくれる存在になったのだとはっきりと感じた瞬間でした。そこかしこにアンティ・モアナが教えてくれた愛が生き続けているのが見えたのです。なんて偉大な人に出逢えたのだろうと涙が止まらなくなりました。

アンティ・モアナがいなければ私はフラを始めることも続けることもなかったでしょう。恐らく、何につけ、同じものでも出逢い方によって印象が変わることがあると思いますが、私がこの偉大なるクムフラに出逢えたのは、ハワイから頂いた一番素敵な贈り物だと思います。 これからフラを続けていく上で、いつか気持ちが行き詰まることがあるかもしれません。でもその時に、この人がクムだったから今までフラを続けてこられたと思えるクムと出逢えたら、それだけでフラに触れた意味があるのではないかと思います。フラは単に踊りだけではなく、いろいろなことを教えてくれるものだと思いますから。

もしモロカイ島に行く機会がれば、Moana’s Hula Halauの練習を見に行ってみてください。アンティ・モアナの妹、アンティ・ラクエルがその志しを受け継ぎ、後世に伝えています。時に厳しく、時に笑いに溢れる本場のハラウを間近で見られる数少ないチャンスだと思います。また日本ではアラカイの美和さんが、同じくアンティ・モアナの想いを引き継ぎ活躍されています。以前、美和さんのお教室のホイケ（発表会）にモロカイの皆と一緒に参加したことがありますが、アンティ・モアナの想いが忠実に再現されている素敵なハラウでした。遠く離れていても気持ちがあれば伝わるのだなぁと感動したのを覚えています。

まだまだ未熟な私には『ALOHA』の言葉が持つ意味が、とても大き過ぎるような気がして、的確に表現する言葉がみつかりません。でもアンティ・モアナが『ALOHA』そのものだったという確信があります。彼女がしてくれたことを同じように誰かにしてあげられたら、そこにアンティ・モアナが、ALOHAが、生き続けるのかもしれないと思うのです。

Moana’s Hula Hālau
毎週火曜：18:00〜Mitchell Pauole Centerにて練習

Moana’s Hula Hālau of Japan
ab.cyberhome.ne.jp/~moanas-j/