日本で人気のフラ。一説によると日本のフラ人口は世界でもトップクラスなんだとか…そんなフラに関する様々なトピックを、本場ハワイからお送りする荒川れん子のコラム「フラの不思議」。
フラの世界では今、一年で最も緊迫した空気が漂うハラウが多い時期。というのも、来週はいよいよメリー・モナーク・フェスティバルが開催されるからです。毎年この時期に開催されるフラの最高峰の大会、いってみればフラのオリンピックともいえる競技会。選ばれたフラ・ハラウだけが参加できる、伝統ある世界一ハイレベルな大会です。私が所属しているフラ・ハラウは今年も参加しますが、残念ながら私自身は参加しません。いえ、正確にいうと参加できないのです。メリー・モナークへの参加にあたっては様々な規則があります。その中のひとつが、私達外国人(アメリカ人以外)にとっては非常に厳しいもの。ひとつのハラウから外国人は2名までの参加が許されるという規則です。つまり1ハラウあたり外国人は2名までしかメリー・モナークの舞台に立てないのです。この規則については各クム(先生)によって解釈の仕方が違う点もあるようで、“ハワイ在住者”や“グリーンカード保持者”はOKとみなすなど、ハラウにより若干相違があるようにも感じますが、我がフラ・ハラウのクムはそれも知りつつ「基本的な規則に従いたい」との信念があり、アメリカ国籍の者以外を外国人と位置づけています。私のフラ・ハラウには2名を遥かに超える日本人が存在します(といいますか、外国人は日本人のみですね)。しかも日本でフラの高い実績のある強者が多いのも特徴。そんな中で2名の枠に入るのは、正直、至難の業ではあります。ただ、我がフラ・ハラウの場合、私達外国人だけではなく、ダンサー全員がトライアルを受けなければいけないので、ローカルの子達も毎回ドキドキしながらトライアルの日を目指すのです。トップダンサーも新人も皆同じです。私は今年を含め、過去2回挑戦しました。1回目の時は日本人が2人以上いたのが初めてだったらしく、クムから外国人枠のルールについて聞くまでは、ほとんどのローカルは知らなかったようで非常に驚いていました。トライアルはチャント(詠唱)とカヒコ(古典フラ)。ローカルの中に所々日本人が入り、皆同じように挑戦しますが、評価は日本人だけ別枠で考えなければなりません。全員のトライアルが終わった後、皆を一堂に集め、結果発表が行われます。ローカルの子でもまだ充分でないと見なされた場合は、落選します。ただ日本人の場合は、例えその実力に到達していても枠があるため、どうしても選抜しなくてはいけないのです。その発表がクムにとっても辛いようで、毎回「ルールに則っているが、この規則のあることが非常に残念だ」と、時には声をつまらせながらの発表になるのです。その気持ちが痛いほど伝わるので、落選した私達も精一杯の笑顔で会場を去ることにしています。勿論、それまで必死に練習しているので、落選は非常に辛いこと。でも選ばれた人達を見ると、やはり納得いく結果なのです。私には彼女たちより実力も、情熱も足りなかったと理解できる結果。そして選ばれた人達に私達の分も日本人として誇り高く頑張ってきて欲しいと心から思えるのです。それは、それぞれが驕ることなく、努力を惜しまず、精一杯やってきたことが感じられるからかもしれません。
私の場合、ハワイに住んで約8年。人によっては「ローカルと見なしてもいいのでは?」とおっしゃってくれる方もいますが、私はこの規則の存在も解る気がするのです。やはりハワイの文化ですから、外国人でいっぱいになることに違和感を覚えるのも仕方ありません。相撲で外国人力士だけになってしまうと少し淋しい気がするのと似た感覚でしょうか。それに私が感じるハワイ文化の一つは“シェア”。このハワイの文化であるフラをシェアしてもらっているだけでもあり難いことなのですよね。ただ、人間、やはり欲もでてきます。もっと上手になりたい、もっと極めたいという気持ちが生まれるのも事実。そんな中でどうフラと向き合うかを考える機会を与えられる年に一度の出来事でもあるのかもしれません。メリー・モナークを日本ではインターネットで鑑賞する方も多いようですね。同じ日本人が頑張っている姿を是非応援して下さい。あのステージに上がるまで努力をしなかった人は誰一人いませんから。
プロフィール
荒川 れん子
現在ハワイ在住フリーアナウンサー。本格的にハワイに拠点を移し14年目。その大半をモロカイ島という小さな島で過ごせたことに感謝の日々。現在はオアフにも拠点を持ち、できる限りモロカイと行ったり来たりしている。
ソニー・ミュージックアーティスツ所属
オフィシャル・ブログ『ALOHA♡Life』