日本で人気のフラ。一説によると日本のフラ人口は世界でもトップクラスなんだとか…そんなフラに関する様々なトピックを、本場ハワイからお送りする荒川れん子のコラム「フラの不思議」。
フラを学んでいくうちに、もっと上手に踊りたい、もっとフラを、ハワイ文化を理解したいという情熱がどんどん高まる方も多いかもしれません。現在はハワイのクム・フラ(フラの先生)達が日本でワークショップを行うこともあり、本場のフラの息吹を間近で感じる機会も多くあります。ただ、学べば学ぶほど、その奥の深さに気づくことも事実。そして本場での教えを請う『フラ留学』を考える方もいらっしゃるでしょう。数日間の短期のものからハワイに拠点を移す長期滞在まで様々なフラ留学の形がありますが、今回はフラを学ぶためにハワイの高校へ入学した方をご紹介します。
北村夢さん。現在ハワイ大学に通う大学1年生。彼女は私と同じハラウに属するフラシスターですが、高校から単身ハワイに渡り、フラを勉強しています。 彼女が初めてフラに魅せられたのは、2歳の時。家族でハワイ旅行に来た際に観たフラのショーでした。もちろん、彼女自身も記憶にないそうですが、お母様によると、ショーを観てからずっとフラの話をしていたとか。帰国後もその熱は冷めず、ある日、ベイビー夢ちゃんは地元の街のどこかでフラのシルエットを描いたイラストを見つけ、お母様をそこに連れて行ったことで、ご両親もその情熱に驚き、フラを習わせてみることにしたそうです。 本格的に習い始めたのは小学3年生から。数々のケイキ(子ども)フラ競技会で優勝するなど、実力を伸ばし続けました。そして、もっとフラを学びたいという気持ちが強くなり、中学生の頃からハワイへの留学について調べ始めたそうです。そして高校生活をハワイでスタート。授業の中にフラなど文化的な科目もある私立高校に入学しました。まだ高校生の女の子が、大好きなフラのある生活とはいえ、たった一人で海外に引っ越す不安はなかったのか聞いてみると「両親が、ダメだったら帰ってくればいいじゃない!と言ってくれたので、そっかぁ、嫌だったら帰ればいいだけのことなんだ、と思えました」と。がんじがらめではない考え方が、その勇気を後押ししたのかもしれません。
実際、学校が始まってからの最初の2年程は、淋しいと感じる余裕もないほど忙しかったそうです。留学生にとってネックになるのはやはり語学。ローカルの子達と同じ授業を受けるために英語の勉強も並行して行わなければなりません。学校のカウンセラーには「留学生でフラの授業をとっている子なんていない。やめなさい」とまでいわれたとか。でも夢ちゃんにとっては、フラのために叶えたハワイ留学。いえ、フラ留学のために実現させたハワイでの高校生活な訳です。本末転倒にならないよう、足りない単位などは夏休み中のサマースクールで補うなど必死で頑張ったのでした。 高校では週に4回フラの授業を受けていたそう。それに加えて、ハラウの練習。大変さよりも楽しさの方が勝る充実感を覚えていたと話してくれました。
ただ、私も含めてフラを習っている場合、家族の協力が必要な場面が多くあります。ファミリーを大事にするハワイ文化ゆえだと思いますが、家族が側にいない私達外国人は淋しい思いをすることや、一人で何でもやらなければいけないことも多く、ホストファミリーにできるだけ迷惑をかけないように頑張ることは容易ではなかったでしょう。それでも「周りの皆が助けてくれたお陰でどうにかやってこられた」と語る夢ちゃん。同じ世代の女の子達よりもしっかりした印象を受けます。そのことについて触れてみると「日本にいた頃はフラばっかりしていたので勉強もできなかったんです。体も弱かったし、自分に自信がなかったんですよね。でもハワイに来てから全部自分でしなきゃいけなくなったり、自己主張をしなければいけない場面が多かったり、親から見ても少しは成長したのかなといってもらえて嬉しかったです」と照れくさそうに話してくれました。
そんな環境の中で、大きな目標の一つであったメリーモナーク出場という夢も叶えました。「初めての時は最初から最後まで何も憶えていないんです。ただただステージが真っ白にみえました。でも今年2回目の出場で少し周りの動きも見えてきました」と話してくれましたが、その勇姿は、私もフラシスターとして誇りに思うほど堂々たるものでした。
そんなフラを中心に生活している夢ちゃん、将来はフラの先生に?と思いきや、そこまで考えてはいないとか。とにかく今フラが楽しい、もっと学びたいという気持ちのままに、目の前のことを頑張りたいとのことでした。 そんな彼女からフラ留学を目指す方へのアドバイスというと?「二つの選択肢があるとして、Aは簡単だけど後に残らない。Bは大変だけど乗り越えたときの世界が広がる。私はBを選びたくてフラ留学を実現させました。もし留学していなかったら・・・考えるだけでも怖いです。きっと、ちゃらんぽらんで何もできない女子大生になっていたかも(笑)。やったことがないことは具体的に想像するのが難しいかもしれないけど、想像できなくても、楽しそうだなと感じるなら一歩ステップを踏み出してみたらどうかなと思います」
“可愛い子には旅をさせよ”といいますが、夢ちゃんを見ていると、しっかりとした目標とご両親の理解に感謝できる心があれば、道を外さず、成長できる環境があるのだなと感じます。弱音を吐かない子なので、言葉にならない大変なこともたくさんあったでしょう。でもそれを自分自身で解決し前に進む姿は、力強ささえ感じます。同じ日本人として、フラシスターとして、これからも助け合っていけたらと思いますし、そんな夢ちゃんから大人の私が励まされることも多々あるのです。フラは人と人を繋げる素敵な文化。長期でフラ留学をするのは中々難しいと思いますが、短い期間でもこのハワイから学ぶ文化に触れるチャンスが皆さんにも訪れることを願っています。
プロフィール
荒川 れん子
現在ハワイ在住フリーアナウンサー。本格的にハワイに拠点を移し14年目。その大半をモロカイ島という小さな島で過ごせたことに感謝の日々。現在はオアフにも拠点を持ち、できる限りモロカイと行ったり来たりしている。
ソニー・ミュージックアーティスツ所属
オフィシャル・ブログ『ALOHA♡Life』