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古関裕而さんNHK朝ドラに 地元福島要望実る タイトル「エール」

 NHKは二十八日、二〇二〇年春から放送する連続テレビ小説に福島市出身の作曲家、故古関裕而さんと妻の故金子(きんこ)さん夫妻をモデルにしたドラマを放送すると発表した。タイトルは「エール」。俳優の窪田正孝さんが主演する。東京五輪の年に、福島を舞台にした物語が全国に発信される。

 主人公は福島市で代々続く呉服屋に生まれた古山裕一。気弱だった少年が音楽と出合い、独学で作曲の才能を開花させる。跡取り息子として期待され、銀行に勤めたが音楽への思いが断ち切れないでいた。歌手志望の女学生と知り合い、文通で愛を育み、音楽の道を歩むことを決意。夫婦で苦難を乗り越えながら、戦時歌謡を作る葛藤や苦悩、戦後の人々を勇気づける曲作りの姿などを描く。
 NHKは音楽で人々を励まし、心を照らした古関さん夫妻の物語をフィクションとして再構成する。脚本は「コードブルー-ドクターヘリ緊急救命-」や「医龍-Team Medical Dragon-」「ハゲタカ」などで知られる林宏司さんが務める。
 窪田さんは東京都のNHK放送センターで記者会見し、「全身全霊で演じる。全国、福島の方々にエールを届けられたら」と語った。NHKの制作統括の土屋勝裕さんは「東日本大震災の発生から十年がたつ前に福島を応援したいと思い、(福島県に関係のある)ドラマの題材を探していた」と明かした。
 金子さんをモデルにしたヒロインは三月から四月にかけてオーディションを行い、六月までに決定する予定。

■誇りに思う 福島市長

 古関さん夫妻をモデルとした夫婦の物語がNHK連続テレビ小説に決定したのを受け、福島市の木幡浩市長は「激動の昭和で人々に明るいエールを送り、今も歌い親しまれているからこそ実現した。改めて誇りに思う」と喜んだ。古関さんを生んだまちとして、音楽によるまちづくりを進める考えを示した。
 福島商工会議所、同青年部は市と連携し、署名活動を展開してきた。渡辺博美会頭は「最高の気分。努力が実を結んだ。放送をきっかけに福島市の良さが全国に発信され、交流人口の増加や消費拡大による地域経済の活性化につながってほしい」と期待した。

■この上ない喜び 知事がコメント

 内堀雅雄知事は「県民にとって、この上ない喜びであり福島市、福島商工会議所など関係の皆さんのこれまでのご尽力に心から敬意を表する。放送される二〇二〇年は東京五輪の野球・ソフトボール競技が福島県で開催される。福島県としても、古関さんが作曲した東京五輪の選手入場行進曲『オリンピックマーチ』とともに、復興が進む福島県の姿、さまざまな魅力を世界中に発信できるよう、全力で取り組んでいく」とのコメントを発表した。

■実現へ署名16万人

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの復興を進めるため、福島商工会議所青年部(YEG)は二〇一四(平成二十六)年、古関さん夫妻の朝ドラ実現へ動きだした。
 二〇一六年十月、福島市、福島商工会議所などと「古関裕而・金子夫妻NHK朝の連続テレビ小説実現協議会」を設立。金子さんの出身地、愛知県豊橋市とも連携して十六万人を超える署名を集め、NHKに要望してきた。
 福島YEGは、一九六四(昭和三十九)年の東京五輪開会式で演奏された古関さん作曲の入場行進曲「オリンピック・マーチ」を、二〇二〇年東京五輪の新国立競技場で再び演奏してもらおうと活動している。昨年七月に「ふくしま古関楽団2020」を結成し、各地のイベントで古関メロディーを演奏している。
 また、高校野球、東京六大学、プロ野球球団などの応援歌を数多く手掛けた古関さんの野球殿堂入りを目指して昨年十月、福島市、福島商工会議所、福島商高同窓会、福島民報社が発起人会を組織した。同十一月一日に野球関係団体、大学同窓会、マスコミが加わり「古関裕而氏の野球殿堂入りを実現する会」が発足し古関さんの顕彰活動などを展開している。

※古関 裕而(こせき・ゆうじ=本名・古関勇治)
 1909(明治42)年、福島市大町の呉服店「喜多三」に生まれる。県師範付属小(現福島大付属小)在学中に作曲を始め、福島商業学校(現福島商高)時代から本格的に作曲・編曲に取り組んだ。1930(昭和5)年、コロムビア専属の作曲家となり約5千曲を世に送り出した。夏の甲子園大会歌「栄冠は君に輝く」、1964年東京五輪の開会式で演奏された入場行進曲「オリンピック・マーチ」などを手掛けた。1969年に紫綬褒章受章、1979年に福島市名誉市民第1号となった。勲三等瑞宝章受章。1989(平成元)年に80歳で死去した。

※古関 金子(こせき・きんこ=旧姓・内山)
 1912(明治45)年、愛知県豊橋市生まれ。豊橋市立高等女学校(現豊橋東高)卒。1930(昭和5)年1月、古関さんの英国・作曲コンクール入選を報じた新聞記事に感動し、手紙を書いた。文通で交際を続け、6月に福島市で結婚した。日本コロムビアに入社した古関さんと共に9月に上京した。1980年に68歳で死去した。

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