8月2日にメジャー3rdシングル「君はロックを聴かない」をリリースするあいみょん。
昨年11月にメジャー・デビューを果たし、メジャー2ndシングル「愛を伝えたいだとか」で一気にその名が広まったあいみょんが、満を持してリリースする今作は、青春を切り取ったストーリーをあいみょんの魅力と共に、余すことなく表現されている。年代を問わず、その情景が浮かぶであろう今作について語ってもらった。
—“自信のあるものはこうです!って観せるのは大事”
—いきなり歌詞の話を訊きたいんですけど、「君はロックを聴かない」の中で”ドーナツ盤”って使われていることにびっくりして。
あいみょん:「レコード」っていうよりは、「ドーナツ盤」の方がしっくりくるんですよね。浜田省吾さんが大好きなんですけど、歌詞の中によく出てきてて。「初恋」って曲の中にも、「ドーナツ盤に刻まれた3分間の物語」ってう一節があったり。初めて聴いたときは、もちろん「ドーナツ盤って何?ドーナツの何なんやろ」って(笑)。
—(笑)。でもあいみょんに取って、それがしっくりくるということは、ごく当たり前の名詞なんですよね。それによって、こんなにも明確なストーリーがある歌詞にも関わらず、すごくリアルに映る気がするんですよ。
あいみょん:ああ、確かに。でも、すごく意識をしている部分かもしれないです。私にとって、詞を書くということは物語を書くことやと思っているタイプなので、起承転結をしっかりしたいとかもあるし。そこに「ドーナツ盤」とかわかりやすい名詞を入れることで、より印象づけられるのかなって、けっこう考えますね。
—「君はロックを聴かない」もそうですけど、あいみょんの中で描くストーリーと、実体験に基づく何かが交差するときの、境界線みたいなものはあるんですか?
あいみょん:基本的には私の妄想で書いてるんですけど、やっぱり自分の青春の思い出やったりは組み込むので、無意識にストーリーに入ってるかもしれないです。「青春と青春と青春」は特にそうかも。
—ちょうどその話も出たので、あいみょんは膨大なストック曲を持っているとのことですが、今回の2曲は?
あいみょん:ストックです。基本的には常に新しいものをって思っているんですけど、今回のサード・シングルのタイミングが決まったときには、既に「君はロックを聴かない」は完成はしていて、「すごく良い曲ができた!」って、自分でも思っていたんです。ただ、誰にも聴かせていなかったし、私だけのジャッジではダメなので、先に無理矢理ライブで演奏したんですよ。
—リリースするかも決まっていないタイミングで?
あいみょん:そう。そしたら、レーベルの方も「この曲は良いからサード・シングルはこれだね」って言ってもらえて。
—よっしゃ!ってなったよね(笑)。
あいみょん:うん(笑)。やっぱり、自信のあるものはこうです!って観せるのは大事やなって思いましたね。
—“青春って、誰にでもあるものだと思う”
—因みにリリースする曲は、あいみょんが選ぶの?
あいみょん:これまではなかったんです。「生きていたんだよな」は、初めてのメジャー・デビューだし、不安の方が大きかったんですよね。2枚目の「愛を伝えたいだとか」も、そこまで不安ではなかったですけど、大丈夫かな?って選んでもらっていて。
—何が不安というものをあいみょんの中に芽生えさせたんだろう?
あいみょん:最初は特になんですけど、生と死に対しての思いっきり歌っている曲に、どういう風に捉えられるのかなって。
—この曲に対して不安なのではなく、あいみょんにとっては日常かもしれないけれど、割と大きな題材を扱ったことでのイメージとか?
あいみょん:そうです。しかもそのあとに「愛を伝えたいだとか」を出すことで、最初とギャップもあったし、リアクションが不安でしたね。
—でも、その不安を掻き消すくらい、「愛を伝えたいだとか」は好評だったわけですよね。そして、そのリアクションが「君はロックを聴かない」をあいみょんに選ばせてくれたのも事実。
あいみょん:そう思います。インターネット内でのリアクションもそうですけど、「愛を伝えたいだとか」はたくさんのラジオで流してもらって。そのお陰であいみょんのことを知らなかった人や、いろんなアーティストの方にも聴いてもらえたことも大きいですね。前の2作も大好きな曲ですけど、今回のは更に「自信があります!」って言える曲だと思います。
—じゃあ、最初にフライングしてしまいましたが、「君はロックを聴かない」が生まれた経緯は?
あいみょん:曲って、ふとした時に降りてくると思っていて、例えば目の前に物があるとして、そこから膨らんでいくというか。これも「僕の心臓のBPMは190になったぞ」っていうワードが浮かんだときに、ストーリーを作り始めました。
—そのワードからここまで膨らませられるって、かなりびっくりですよ(笑)。
あいみょん:あはは(笑)。ヘンなところからですけど、純粋な男性像っていうのを想像しましたね。年代的には10代〜20歳前後が青春かなって思ってて、そういうタイミングのときって、何かを共有することで距離が縮まったりしたと思うんです。昔は流行ってる音楽とかを共有して、男女の距離が近くなってたし、好きな人の趣味を真似したいとか、そういう感情をうまく出せへんかなって。
—男から見ても、ムチャクチャ甘酸っぱいですよ(笑)。
あいみょん:ロックなんか聴かんのはわかってるけど、これで僕は救われたから聞いてくれっていう厚かましいけど熱い男(笑)。
—そういう部分をあいみょんが描けるのがすごい不思議だな。男性への憧れみたいなものなのかな?
あいみょん:私の中でもすごい不思議で(笑)。前作の「愛を伝えたいだとか」でも「結局、それは女の子の目線ですよ」って言われたことがあって。だから、もう1度10代の頃に戻れたらこんな青春がしたいとか、きっと私の理想やったりするんやろうなって。
—歌詞っていう想像の世界だからこそ、時間を超えて無意識に理想へ近づけてるんだろうね。
あいみょん:そうかも。私の身近でこういう恋愛をしているとか、そういう題材があったわけではなかったし、作ってみて「私は男性に尽くされたいんやな」って(笑)。
—(笑)。でも、こうだ!っていう決めつけのない曖昧さが、このストーリーの奥深さを出してる気がする。
あいみょん:この2人は両思いなのか片思いなのか、付き合ってんのか付き合ってないのか、そういう部分は聴き手に委ねたいんです。曲にメチャメチャ意味を持たせるよりは、聴く側がその曲の物語のラストを作ると思っているので。 ただ、この曲で少しでも懐かしくなってくれたならって思います。青春って、誰にでもあるものだと思うし、それは10代に限らず、30代・40代だって青春やと思うし。
—“イタズラも恋愛も、全てにおいて青春”
—そう訊くと、曲を聴くことで、あいみょんの描いたストーリーに入らせてもらった感覚もあって。僕はあいみょんと世代は違うけど、断定された世界ではなかったから、ある意味、どの世代であっても入りやすいなって。
あいみょん:そうやったら嬉しいです。私は共感して欲しくて曲を書いている訳ではないけど、それでも私の恋愛感や想像に入り込んでくれたんやったら、物語のラストを作ってくれたんだと思いますし。今は嬉しいことでありがたいことに、同世代の女の子のファンが多いんです。あとは、せっかくいろんな世代の音楽に憧れて、今の私の音楽があるので、老若男女問わずいろんな人にとって、残る音楽になって欲しいと思ってます。
—あいみょん自身がそういう経験をしてきたからこそだし、「君はロックを聴かない」の中にあるドーナツ盤みたいに、その人の何かになっていられる音楽は、あいみょんが言う”残る音楽”なんだと思うしね。
あいみょん:この曲でもそうですけど、私の曲でそうなってくれたら嬉しいです。
—もう1曲の「青春と青春と青春」のストーリーでは、場面展開も含めて”夢の中”が伝わってきますね。
あいみょん:夢と現実の狭間感があって、ホンマに夢ってわけわからんって(笑)。夢の中のくせに、ちょっと現実っぽさもあって。
—だからこそ、「まるで二人は駆け落ちして親から逃げているようだ」のように、メタファーがより引き立ててくれていて。
あいみょん:私、比喩表現の話をしてくれるのがすごい嬉しくて(笑)。昔から比喩がすごく上手なアーティストが大好きだから、憧れてたんですよね。実はすごい恋愛ソングを歌っているのに、超絶どうでも良いカステラのことを歌ってるとか(笑)。
—うん、あいみょんっぽい(笑)。題材を出さずに想像させるとことか。
あいみょん:文章を書くことがずっと好きで、読書感想文とかも得意だったんです。だから、勉強になると思って官能小説もメッチャ読みました。
—比喩のオンパレードだもんね(笑)。
あいみょん:そう。どれだけキレイな言葉を使ってイヤらしいこと表現するかとか、作詞に通ずる部分がありましたね。言葉のレパートリーとかボキャブラリーが全然足りないと思っているので、もっと本を読まなアカンと思ってますね。
—「電車の中 腰を丸めて文庫本を読む姿が本当神秘的で」の読んでる本が官能小説だったら面白いけどね(笑)。
あいみょん:あはは(笑)。でもこの曲の1節のきっかけは、アメトーークの「読書芸人」なんですよ。オアシスの光浦靖子さんが、女の子が文庫本を読むときの姿勢でモテる・モテないの話をされてて、その真逆を言おうと思ったんです(笑)。
—そんな話も入ってるのに、「君はロックを聴かない」と共通して、青春がありますよね。
あいみょん:本当にたまたまなんですよ。「青春と青春と青春」を入れようと思ったら、「あ、青春ってメッチャ言ってる」って(笑)。よく考えたら、私が「青春」って言葉が好きなんですよ。なんでも許される感があるというか。「あのとき、ピンポンダッシュしてムッチャ近所のおばちゃんを困らせた」とか言っても、「そうやな」って丸く収まるズルさがあるじゃないですか。
—しかも青い春って書くしね(笑)。青春でいうそのズルさって、恋愛でもあると思う?
あいみょん:うーん、イタズラって表現になると思うんですけど、例えば好きな女の子に男の子がイタズラするって、恋愛丸ごとやと思うんですよね(笑)。これって、メチャメチャ青春やと思うし、子供のときしかできないじゃないですか。大人になってからやってたら、相当ヤバイですけどね(笑)。この曲の「カレーライスの匂いなんかで誰かを愛おしく思う」の部分は、私の実家の近くって夕方になると、鯖の煮付けかカレーライスの匂いがするんですよ。だから、今でもカレーライスの匂いを嗅ぐと実家に帰りたくなるし、きっとそんなイタズラも恋愛も、全てにおいて青春やって思いますね。
—“いつか、スピッツと対バンできるまでに”
—曲全体的にも、Sundayカミデさんがプロデュースされた仕上がりからも、その淡さが伝わってきます。
あいみょん:そうですね。実は私が、Sundayカミデさんのただのファンなんですけどね(笑)。それこそunBORDE(レーベル)に入るってなったとき、「天才バンドがいる!」って嬉しかったくらい。しかも、Sundayカミデさんは私が初プロデュースなですよ。
—そうなんだ!お互いが初めまして状態で、どういった進め方をしていったの?
あいみょん:2人でバンドを組んでるみたいな感じでしたね。「あいみょん、ハモはどこに入れようか?」みたいな、バンドのアレンジをしてる感じで、すごく楽しかったです。
—やりとりが確かにバンドっぽい。そのバンド繋がりで、「excitement of youth」と題したライブが決定しているけど、初ワンマンというのが意外です。
あいみょん:そうなんです。早くワンマンをやりたい!っていうよりも、どうせやるなら、なるべく多くの人に観てもらえるタイミングがよくて、それが今回やっと叶った感じです。私だけを観に来てる人に、どれだけ満足してもらえるかって、今はそれだけ考えています。
—今回の曲もそうだけど、あいみょんがさっき言ってくれた”老若男女問わず”で、いろんな人に観てもらいたいよね。
あいみょん:うん。そのためにも、私は「怖くないよ」と書いておいてください(笑)。
—それ、最初のイメージ引っ張りすぎでしょ(笑)。
あいみょん:私の入りが「怖い」って来るのが多かったんです。だから、もう怖くないよ、19歳の頃の私は忘れてくださいって(笑)。
—書いときます(笑)。今回の2曲だって、スピッツのような甘酸っぱさと、少しの尖りがある楽曲なわけだし。
あいみょん:ああ、それムッチャ嬉しいです。私、今まで「誰に憧れてたんですか?」って訊かれたら「浜田省吾です、尾崎豊です、吉田拓郎です、松田優作です。」って答えてて。もちろん憧れてますけど、実は私はこういう人間で在りたい!って言うための、自分への言い聞かせだったんですよね。でも、メジャー・デビューしてこうやって音楽を作り続けていく上で、改めて私はスピッツに憧れてたんやなって。なんだかんだ、年中聴いてるのはスピッツやし。
—そっか。感想を言っておいて良かったです(笑)。
あいみょん:今、ようやく気づきました。あのときは突っ張ってましたね(笑)。スピッツっていう存在が、私の中でデカ過ぎて言えなかったんです。「ギターを弾くときに練習してました。」って当時は言ってましたけど「自分、メッチャ好きやん」って。いつか、スピッツと対バンできるまでになりたいですね。
取材:2017.07.20
インタビュー・テキスト:Atsushi Tsuji(辻 敦志) @classic0330
Photo:Atsushi Tsuji
【リリース】
君はロックを聴かない
2017.08.02 RELEASE / ¥1,080 (Tax in) /
【ライブ】
TOUR2017「excitement of youth」
2017.10.14 [Sat] 心斎橋Music Club JANUS
開場 : 16:45/ 開演 : 17:30
前売 : ¥3,300/ 当日 : ¥3,800/ DRINK :¥600
2017.10.28 [Sat] 渋谷WWW X
開場 : 16:45/ 開演 : 17:30
前売 : ¥3,300/ 当日 : ¥3,800/ DRINK :¥500
【アーティスト情報】
WEBhttp://www.aimyong.net/
Twitterhttps://twitter.com/aimyonGtter
Instagramhttps://www.instagram.com/aimyon36/