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【大相撲】

会心の一番、貴景勝の攻めに一片の迷いなし

2019年3月12日 紙面から

◇北の富士評論「はやわざ御免」

 2日目はテレビの仕事が休みなので、40年ぶりに前相撲を見に行ってきた。今場所、八角部屋に新弟子4人が入門。その中の1人、昨年、高校横綱となった斎藤大輔の相撲を見たかったのだ。

 私たちの新弟子のころの前相撲とは随分と変わっていたが、懐かしさで胸がジーンとしてしまった。私は1957(昭和32)年の1月に一度、検査を受けたが、体重が足りなくて不合格となり、この春場所の再検査でやっと合格し、前相撲をとっている。

 10代の子どもたちを見ていると、楽しみより、心配の方が先に立ってしまう。今場所の新弟子は40人。はたして5年、10年後に何人の子が残るのだろうか。頑張れと願わずには、いられない。

 八角部屋の4人は、斎藤だけ勝って、3人は負けてしまった。私は新弟子には、今のうちはうんと負けていいと言いたい。横綱になると負けられないのだからと、変な励まし方をしたもんだ。斎藤は、当然勝った。入門の際、私も多少関わっているので、力が入るというものだ。過大な期待をすると重荷になりかねないので、急がず力をつけることが肝要だ。

 しこ名は「北の若」。命名者は八角理事長。その理事長と今夜は久しぶりに食事をするので、早めに記事を書いている。前相撲の話ばかりで誠に申し訳ない。

 それでも、幕内の土俵から何もお伝えしなければ、私の気が済まないので貴景勝と錦木の一番を見ましょう。

 立ち合いは、錦木に先に仕切られて、少し立ちづらそうで、待ったかなと思わせたが、貴景勝は気にかけるそぶりも見せず、頭で当たり、突き放した。この当たりと突破力で錦木はすぐ土俵際まで後退する。出足良く追撃し、突き切った。まるで初日の相撲を見るようで、会心の一番であった。元稀勢の里の荒磯親方の言葉を借りるようだが、一片の迷いもない貴景勝である。

 もう1人の大関候補玉鷲は、一片の迷いどころか、大いに取り口に迷いが出ている。持ち前の伸び伸びとした相撲が取れていない。負けられない気持ちが先に立ち、本来の相撲が取れていない。先場所のことは忘れた方がいい。3日目からの立ち直りは玉鷲の心しだい。「勝とうと思うな、思えば負けよ」である。

 高安は御嶽海に食い下がりを許して苦戦を強いられたが、じっと我慢をして勝ちにつなげた。今までの高安とはひと味、違うようだ。違うといえば、地元の豪栄道は、北勝富士のお株を奪うような当たりで一気に押し出した。こんな気合の入った豪栄道は久しぶりだ。

 白鵬の相撲にも触れよう。遠藤に差し手争いでてこずり、時間がかかったが、遠藤も攻め手を欠いてモタモタしているうちに押し出された。特に評論するほどの中身はないが、ついでに書いてみた。

 何だかんだと随分、長文になってしまった。内容が内容なのであしからず。明日は心して頑張ります。 (元横綱)

 

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