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『ASIA PACIFIC DANCE FESTIVAL』から得た大いなる刺激

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『ASIA PACIFIC DANCE FESTIVAL』から得た大いなる刺激

先月末になりますが、非常にハイレベルで興味深いイベントが行われました。『ASIA PACIFIC DANCE FESTIVAL(アジア・パシフィック・ダンス・フェスティバル)』という名で、文字通りアジア・パシフィック間のダンスを通した文化交流であると同時に、”ダンスには物語がある。ダンサーにもそれぞれに隠れた物語がある。そして観衆にも同じようにひとりひとりの物語がある。互いの物語をパフォーマンスを通して読み取ることで、さらなる理解を深めよう”という、とても意味深い目的をもつイベント。6日間に渡って行われたこのイベントに、私は一日は観衆として、二日間はハラウのダンサーとして参加させて頂きました。

会場となったハワイ大学内ケネディー・シアター

観衆として参加したのは『LIVING THE ART OF HULA』というタイトルのパフォーマンス。クムフラとしてもミュージシャンとしても著名なロバート・カジメロ氏とマーリン・サイ氏をグランド・ピアノ越しに大ベテランのソロ・フラダンサー達が囲み、フラについてそれぞれの物語をシェアし、その想いを込めた曲を踊っていくというトークショー形式。司会を務めたマイケル・ピリ・パン氏のポイントを非常に上手くとらえた進行に、ベテランダンサー達の語りは物凄く巧妙で、時に爆笑あり、時に涙が出そうなくらい感動ありの素晴らしいものでした。ダンサーは皆さん大ベテランで、フラ界で知らない人がいないほど著名な方ばかり。その方達の個人的なフラに対する考え方を聞ける機会は非常に貴重で、まだまだ(いえ、もしかしたら一生)足元にも追いつけはしないけれど、人に歴史ありと感じる話しが多く、今後の自分のフラ人生で教訓となりそうなことを多く教えて頂いた、とても刺激的な夜となりました。

『LIVING THE ART OF HULA』でのカノエ・ミラーのパフォーマンス

そして、ハラウの一員として参加した二日間のパフォーマンス。一日目はカヒコ(古典フラ)、二日目はアウアナ(現代フラ)でした。

Hālau I Ka Wēkiu

私たちはこの日に向けて猛練習していたのですが、それはクムがいつにも増して厳しかったこともあります。その理由がリハーサルの時に解りました。他に出演するのはフィリピンからいらした『Ballet Philippines』とフィジーからの『Oceania Dance Theatre』。両者とも地元で活躍するプロフェッショナルなのです。

Ballet Philippines

はじめは、そのパフォーマンスの素晴らしさに彼らのリハーサルを楽しみながら見ていた私たちですが、段々と焦りを感じる事態に。この場でハラウとして踊るのは、ハワイを代表してのこと。ホスト国である地でハワイの皆に恥をかかせる訳にはいかないと緊迫した雰囲気にさえなりました。各自のひとつひとつのチェック、お互いの注意・励まし合いなど、チームとしての動きが余念なく行なわれました。

Oceania Dance Theatre

結果、公演は大成功。自分の担当曲が終わり、舞台袖に隠れた時点でお互いが手を叩き合いハグを交わすなど、身体が震えるほどの達成感でした。

古典フラのハイライト、神話からそのまま飛び出したかのようなペレとポリアフの闘い。余りに素晴らしく、余りに恐ろしく(笑)、私は練習中にこのパフォーマンスを観て涙がでました。

最後は3グループ皆で簡単なフラのパフォーマンスで幕を閉じることに。鳴り止まないスタンディング・オベーションに、ステージ上では3グループがお互いを讃え合いました。文化交流の本当の意味を感じた貴重な時間となったのです。

最後は3グループ全員で

そして、それぞれのクム(先生)達も、それは同じだったようで、確実にお互いを刺激し合い、自分たちの今後のパフォーマンスに影響を与えたようで、クムのあんな清々しい表情を見たのは初めてだった気さえします。

このイベント、まだ歴史は浅く、宣伝も大きくはしていないため、日本の方には中々情報が届いていないかもしれません。でも、私はこのためだけにハワイを訪れても価値はあるのではないかと思える、フラダンサーにとって貴重な体験ができるものだと思います。通訳がないので、英語での理解は難しいかもしれませんが、来年までまだ時間もあるのでこの機会に英語の勉強も並行するなど、是非機会があれば参加をお勧めします。私は今回観られませんでしたが、沖縄の民族音楽や踊りもあったようで、徐々にイベントは広がりをみせているようです。

正直なところ、公演が近くなると寝る間もないほど大変だったのですが、こうしてハラウ内での絆が深まり、それが観衆に伝わり、観衆からの反応がまた出演者に刺激を与える。出演者たちだけではない、会場全体が交流している空気を肌で感じられたのは、このイベントの意図が反映していたからでしょう。是非皆さんとも同じ空気を味わえることを願っています。

ASIA PACIFIC DANCE FESTIVAL
アジア・パシフィック・ダンス・フェスティバル

https://www.facebook.com/APDanceFest?fref=ts

  

プロフィール

荒川 れん子

荒川 れん子

現在ハワイ在住フリーアナウンサー。本格的にハワイに拠点を移し14年目。その大半をモロカイ島という小さな島で過ごせたことに感謝の日々。現在はオアフにも拠点を持ち、できる限りモロカイと行ったり来たりしている。

ソニー・ミュージックアーティスツ所属
オフィシャル・ブログ『ALOHA♡Life』

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