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日韓関係がかつてないほど冷え込んでいる。元徴用工訴訟で日本の対韓世論は悪化し、韓国国会議長が天皇陛下に謝罪を求める発言をしたことで、関係修復の糸口が見えなくなっている。日経ビジネス、3月11日号特集「韓国 何が起きているのか」では政治から経済まで日韓をとりまく環境の変化を取り上げた。経済的な結びつきも大きい中、日本と韓国は良好な関係を取り戻せるのか。韓国通として知られ、長年の日韓友好の功績から、韓国政府から叙勲されたこともある女優の黒田福美氏に聞いた。

黒田福美(くろだ・ふくみ)氏
女優・エッセイスト
女優として活躍する傍ら、1980年代から韓国に往来するなど30年以上にわたって韓国との友好親善に努めてきた。2011年には韓国政府から「修交勲章興仁章」を叙勲。

黒田さんは日本の著名人のなかでも有数の韓国通として知られています。現在の日韓関係の状況をどう見ていますか。

 35年間にわたって韓国と関わってきました。これまでも様々な問題で、日韓の間には紆余曲折がありました。ですが、この半年間の出来事は、これまで起きたすべての問題を吹き飛ばすほどのインパクトがあります。

 いわゆる徴用工訴訟問題、慰安婦財団の解散、レーダー照射など、短期間に畳みかけるように問題が起きています。今までは何かあっても時間とともに印象が薄れましたが、今回は次から次へと問題が起きており、忘れる暇さえありません。韓国側が意図的に仕掛けているのでは、と感じてしまうほどです。

文在寅(ムン・ジェイン)政権は、北朝鮮と親密な関係を築いています。

 日韓関係に詳しい識者の多くは、「韓国は従北のために、米国や日本から距離を置こうとしている」と指摘していますが、私も同じように感じています。

「遺憾」では伝わらない

日韓間の一連の問題に対する、日本政府の対応をどう感じていますか。

 ネット上では「遺憾砲」という言葉も生まれ、「遺憾としか言えないのか」という非難の声さえあります。私は昔から、なぜ公式的な場面で「遺憾」という言葉がこれほど使われるのか、不思議で仕方がありませんでした。本来「残念」という意味ですが、日本では堅苦しい場面で使われるのに比べて、韓国では重みが違います。例えば、若い女性でも日常的に使います。同じ「遺憾」という漢字語があるために、通訳も意訳することはできません。日本政府が「遺憾」と言っても、韓国語に翻訳されると非常に軽い感じにしか聞こえないでしょう。

 

 国民性としても、言葉を額面通りにしか受け取らないところがあります。日本人が控えめに怒りを表現すると、「たいして怒っていない」と感じるのです。怒っているときは「大変憤りを感じている」とか、120%増しくらいに表現してちょうど100%の意味をくみ取ってくれると思った方が良いでしょう。日本が怒っていることについて、韓国側は気づいていないのではないでしょうか。