透明な氷をレンズの形にすれば、虫眼鏡のように太陽光を集めて火を起こすことも可能ですが、カメラのレンズともなると、火を起こすための光を集めるレンズよりはるかに高い精度と純度が必要になります。そんなカメラのレンズを、3Dプリンターと日本製の製氷器、そして氷河から採取した氷で作ったメイキングが公開されています。

I made a CAMERA LENS with an ICEBERG - Mathieu Stern

https://www.mathieustern.com/blog/2018/10/22/l437fjpq58g619vlkm6t1iwhk8s6dr

以下のムービーでは実際に氷でレンズを作っている様子や、そのレンズで撮影したムービーを見ることができます。

I made a CAMERA LENS with an ICEBERG - YouTube

氷のレンズを作ったのは、フランスの写真家Mathieu Sternさん。プロの写真家であるだけでなくレンズのマニアでもあるSternさんは、自他共に認める「Weird Lens Guru(変なレンズの達人)」です。



アイデアが生まれたのは2年前、「ガラスのレンズで光を集めて写真を撮ることができるのであれば、氷でもできるはずだ」と思ったのがきっかけ。



レンズ玉を支える本体部分は3Dプリンターで作成しました。



氷のレンズを作るのは日本製の製氷器。金属製の型で氷を成形します。



できあがった氷は半球状になります。



レンズに使う氷は、1万年かけて氷の分子が安定化するというアイスランドの氷河の氷を使うことにしました。



アイスランドにあるヨークルスアゥルロゥン(Jökulsárlón)湖の波打ち際では、砕けた氷河が波に洗われています。



Sternさんはまず波打ち際から透明な氷を選んで採取してくると……



製氷器にセット。



氷が溶けてレンズになるのに45分かかります。最初の4つは失敗に終わり、5時間かけてできた最後のひとつが無事レンズになりました。



さっそくレンズを本体に取り付けるSternさん。氷のレンズは溶けてしまうので、寿命は1分しかありません。



撮れた写真はこんな感じ。さすがに現代技術で作られたレンズと違ってぼやけた写真になります。







それでも、世界にひとつしかない1万年前の氷で撮った写真は心を打つ美しさだったとSternさんは語っています。