【スポーツ】[陸上]福士、MGC 転ばず「取れたぁ」 36歳執念の中41日2019年3月11日 紙面から
◇名古屋ウィメンズマラソン▽ドーハ世界選手権代表選考会と東京五輪代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)シリーズ」を兼ねる▽10日 9時10分スタート▽主催 日本陸上競技連盟、中日新聞社▽ナゴヤドームを発着点とする特設周回コースの42.195キロ▽スタート時の天候 曇り、11.2度、湿度61.4%、南南東の風0.9メートル ベテランが2020年への瀬戸際からよみがえった。転倒、棄権した1月の大阪国際女子マラソンからの雪辱を期した福士加代子(36)=ワコール=が2時間24分9秒で日本人2位の8位入賞し、滑り込みで東京五輪出場権が懸かるMGC切符を獲得。好条件に恵まれたレースでは一気に5人がMGC出場権を得た。 福士が五輪ロードに戻ってきた。42日前の大阪ではジョギングのように走ることしかできなかった30キロ過ぎの勝負どころ。今度は力強くアフリカ勢を追いかけた。 「給水のときに行かれて(追いつく)タイミングを逃したけど、『まだある』と思い直した。理由はよくわからないけれど、後半に体がよく動いた。大阪の影響はなかった」 課題だったレース終盤の落ち込みを最低限に抑えた。40キロ過ぎで岩出に抜かれ、日本人トップは逃したものの、2時間24分9秒は11度目のマラソンで2番目の好タイム。ひな壇ではMGC出場権の獲得者に贈られる盾を「やっと取れたあ」と満面の笑みで掲げた。 2016年リオデジャネイロ五輪に出場後は東京五輪への道を模索していた。「年齢的にも本当の最終がそこになる」と競技を続けたが、ハーフマラソンでは日本記録となっている1時間7分26秒の自己ベストより4分以上も遅いタイムしか出せなかった。 「昔は奇跡の走り。今は継続して練習ができていない。こんなもの」と自分を受け入れるしかなかった。1月の大阪国際で五輪以来のマラソンに出ると決めた後、父の正幸さん(69)に告げた。「これで終わりになるかもしれない」。背水の覚悟だった。 大阪では転倒の影響もあって途中棄権。不完全燃焼に終わると、強行日程も顧みず名古屋へと目標を切り替えた。「結果的に大阪が『予選』になった。駅伝でも、予選の大会から決勝に向けて盛り上がっていく」。失敗に終わった大阪を経て、培ってきた勝負勘やスピードが戻っていた。 次走は、いよいよ9月のMGC。次々と台頭してくる若手との一発勝負が待っている。「こうすればいいという、タイムの出方がわかった。35キロ以降を上げられたら」。36歳にして、伸びしろはまだある。陸上では前人未到の5大会連続五輪出場へ、福士の最終章は続く。 (木村尚公)
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