蝙蝠侯爵と死の支配者   作:澪加 江
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死の支配者と結婚式
法国からの使者


 

 

その日、彼女はとても不機嫌だった。

 

 

ガタゴトと揺れる質の良くない馬車に揺られながら、女は馬車の窓から外を見る。

緩やかな丘が続き、遥遠くにはドラゴンが住むという山脈が見え、その少し手前には鬱蒼とした森が見える。曇天の空と所々雪が積もった丘の灰色の色彩は陰鬱な空気を醸し出していた。

女の他に後二人同行者は居るが、二人とも退屈でつまらない堅物で、話をしても気分転換にはならない。

いっそ魔物の群れでも襲ってきてくれた方が彼女にはいい気分転換になるだろう。

視線を馬車のキャビンの中に戻した女は、対面に座る男へもう何度繰り返したかわからない問答をする。

 

「んでー? 一体いつまでこの馬車に揺られてればいい訳? いい加減動かさないと、体なまっちゃうんですけどー」

 

猫の様に背伸びをした彼女に、同行者の男はびくりと大きく震えた後で答えを返した。

 

「そ、それは後一日ほどで目的のエ・レエブルに着きますので。それまではもうしばしの我慢を」

「あーあ。ほんっとーに暇。いっそ人食い鬼の群れでも出てきてくれたらいい暇つぶしになるのになー」

 

女は猫の様な釣り上がり気味の目を細め、にんまりと酷薄に笑う。その表情に怯えの色を見せながら、同行者の男は縮み上がる。

彼女にとってみれば、男など路傍の石と変わらない。彼女はこの世界で圧倒的な強者の立場にあり、同じ戦士であるならば、彼女と並ぶ者は10本の指で事足りる。

 

「まあいいか。今回確かめるのはナインズ・オウン・ゴールとかいう魔法詠唱者だっけ?」

「今はそう名乗っている様です。私と会った時はモモンガと名乗っていました」

 

斜め向かいに座る男が口を挟む。顔の上半分を布で隠した怪しい男だ。もし下級神官の服を着ていなければ、街の衛兵に呼び止められる事だろう。この怪しい男こそ、今回の任務の発端となった人物だ。

女からしてみればそこそこの、しかし刺し貫けない相手ではない。そんなこの世界での強者の一人が、先日任務中に戦死したのだ。

 

「ふーん。まあ、それを確かめに行くんでしょ。法国の風花聖典の魔法ですら探れないって事は、相手は相当やる奴なのは間違いないだろうし」

「はい。ですので私が直接声と振る舞いを改める事になりました」

「モモンガだかナインズだかしらないけど、そいつも魔法詠唱者ならスッといってドス。あたしの敵じゃあないだろうけどね」

「漆黒聖典のクインティア様ならば確かに遅れを取る事はないと思います」

「あ?」

 

朗々と機嫌よく喋っていた女の空気が凍る。その目に怒りと苛立ちと仄暗い加虐心を隠さずに、女は腰から引き抜いた細長い棒状の刺突武器を、目の前に座る男の喉元に突きつける。

 

「次、その名前で読んだら殺すから」

 

ギラギラと光る目を見ない様にして急いで男は謝った。しばらくはそのままの姿勢でいた二人だったが、女の方が武器を引いた事で少し空気が和らぐ。

顔面を白くした男の「なんとお呼びすれば?」という質問に「クレマンティーヌ」と短く返した女は馬車の座席に寝そべり昼寝をする事にした様だ。数分もしないうちに静かな寝息をたてたところで、やっと同行者の男達は肩の力を抜く。お互いに目を合わせ、ゆっくりと静かにため息をついた。

 

「死から復活したというのに、こうもいきた心地がしないとは……。しかし、神官長直々の通達とはいえ、今回のご協力ありがとうございます」

「いえいえ。法国の、人類の為ならばこの位どうという事はありません」

 

朗らかな声。そう言って頂けると嬉しいです、と布を巻いた男は応える。

 

「まさかこんな事でもう一度王国に行くことになるとは……」

 

そうひとりごちた布の男は御者席側の窓を見る。外に見えるのは雪の積もった丘ばかり。辺り一面の白を見ながら、男は自らの身に降りかかった数ヶ月前の悲劇を振り返った。

 

 

 

 

若き分隊長、ニグン・グリッド・ルーインにとってその日の任務は何度も繰り返し行ったものだった。

 

定期的に行う事になっているトブの大森林にあるゴブリンの巣への攻撃。それは人類を脅かす存在の一つであるゴブリンを間引くために定期的に行われている陽光聖典の極秘任務だ。

才能を見出され、異能にも恵まれたニグンにとって、入隊以来ほぼ毎回参加している任務。

王国と帝国を隔てる人類未開の大森林。その深い森を分け入った先にあるゴブリンの巣。自然にできた岩場の割れ目を利用したそこに、いつも通り班を二つに分けて片方が中のゴブリン達を殺す。

今回ニグンは外でまつ残留組側を指揮する事になった。巣穴に潜った者たちが討ちもらしたゴブリンを倒しつつ、本隊の帰還を待っていた時だ。

森からひょっこりと一人の怪しい男が現れた。

いかにも魔術師といった出で立ちの男は、仮面で顔を、ガントレットで手を隠しており一切の肌が見えなかった。それだけでも怪しいのに、それぞれの装備は伝説級とも言える逸品ばかりで揃えられている。

そんな最大限の警戒をするべき不審な男は、感情の籠らない声で訳のわからない質問を重ねた。

ニグンはけして見つかってはいけない極秘任務に目撃者が出たことへの焦りと、底知れない男に、普段よりも口調は荒くなってしまった。更に油を注いだのが相手のこちらを見下す発言だ。

仮にも法国の特殊部隊を預かる身である。ニグンのもつ高い矜持を見くびる発言にニグンの我慢が切れた。

 

「さては貴様、化け物の類だな?」

 

相手の様子からニグンが辺りをつけたのはカッツェ平野で稀に現れるという死者の大魔法使い。そのモンスターがこのトブの大森林まで来たに違いない。そう言えばここに着くまでの街道で、火球の跡と何かが燃えた跡が見られた。きっとあれはこいつの仕業に違いない。

死者の大魔法使いならば、苦戦するだろうが勝てる。人間に偽装する知能を持った個体なのは厄介だが、幸い天使を操る自分とは相性がすこぶる良い。それにここには自分だけではなく部下もいる。数は力であり、死者の大魔法使いならば確実に斃せる。

意気揚々と招喚いていた天使をけしかけたニグン。

その余裕が崩れたのは、直後、魔法詠唱者の筈の仮面の男が向かわせてた天使を放り投げてきた時だった。

 

「ひぃっ!」

 

自らのすぐ横を風切り音をたてながら通り過ぎた天使は光の粒子になり消える。

ありえない事態に情けない声を出したニグン。追い討ちをかけるように化け物が差し向けてきたのは、見たこともない強大なアンデッドだった。

2メートルを超える背丈にタワーシールドとフランベルジュを携えたそのアンデッドは、ニグンへと突進する。

相手の召喚モンスターの突撃に、ニグンは急いで再召喚した天使を割り込ませる。

精鋭部隊に相応しい判断を見せたニグンの目に映ったのは、アンデッドに斬り伏せられて光の粒子に変わる天使の姿。

 

迫り来る盾に絶望の悲鳴が喉を震わせ────。

 

 

 

次にニグンの目が見たものは石の天井だった。

見たこともないそれに、何度も瞬きを繰り返す。前後の記憶は無いが、自分がこんな場所にいるのは記憶と繋がらないのは間違いがない。さっきまで森にいたはずなのだから。

混乱していると、猛烈な喉の渇きを覚える。強張った顔を動かし水を探すが見当たらない。無いのならば仕方ないと、立ち上がる為に手を虚空へ伸ばす。

 

「起きたようですね、ニグンさん」

 

その手を握ったのは法国でも希少な蘇生魔法の使い手である神官。そしてその周りには重々しい顔をしてこちらを観察する神官長達だった。

 

その後は長い長い質問攻めが待っていた。

自分が死んだという実感が湧かないまま、トブの大森林で起こったことを事細かに聞かれる。生き返ったばかりの最悪の体調。しかし相手は最高神官長を含めた高位の神官達である。ニグンは問われるままに答える事しかできない。全てを聞き終わった神官長達はは悩ましげな表情だ。きっと今から更にニグンの言った情報を精査するのだろう。

 

解放されたのは夜遅く。

休みを挟んだその翌々日から蘇生によって失われた戦いの勘を取り戻す訓練に明け暮れ、ようやく第一線に復帰できるまでには数ヶ月を費やした。

季節は冬。

春までにはまだまだ遠いそんなある日。呼び出されたニグンを待っていたのは、王国のある貴族が行う結婚式へ呼ばれた神官と共に参加するという任務だった。

 

 

 

 

馬車の揺れが少なくなったのは、エ・レエブルまであと半日という時だった。

 

馬車が進む道はそれまでの土と石がむき出しの地面から、石を敷き詰めて表面を滑らかにしてある路面に変わっている。丘を避ける様に大きく湾曲した街道は、小さな脇道から商人のものらしい他の馬車がちらほらと見られる。

 

「ふーん。王国にしてはしっかりしてんじゃん」

 

法国の紋章を掲げた馬車の、覗き窓から顔を出したクレマンティーヌは感心した声をあげる。

法国の最強部隊と言われる漆黒聖典の一人である彼女は、猫の様につり上がった目をニンマリと細める。法国から王の直轄地であるエ・ランテル、王国六大貴族に数えられるぺスペア侯爵の所領であるエ・ぺスペルと馬車を走らせてきたが、ここまできちんと整備された街道は無かった。

領主が力を入れているのか、それともレエブン侯爵なる貴族が裕福なのかはわからない。が、旅をしてきた身としてはこれほど嬉しい事はない。舗装のされていない悪路で馬車に乗っていてはお尻が痛くなってしまうからだ。

 

「新しい領主が街道の整備に力を入れているそうです。木材の輸送や加工が活発な場所なので、街道を整備して商人の行き来を活発にさせたいのでしょう。流石は先代のレエブン侯爵が自慢していた息子殿です」

 

クレマンティーヌの視線を追って発言の意図を察したのは、本来は一人で来る筈だったレエブン侯爵家所縁の神官だ。エ・レエブルでの十年の任期を終えて、昨年法国内の神殿へ栄転した彼は、その穏やかな人柄を気に入られていたらしい。新領主から是非きて欲しいとの誘いを受けた彼についていく形で今回の任務は計画された。

そんな神官に頷きを返すのは任務のもう一つの鍵である陽光聖典の一人であるニグン。

レエブン侯爵が新しく迎えた魔法詠唱者が人類を脅かす存在だという可能性があり、唯一接触したこの男が同一存在であるかの確認をする事になっている。厚い胸板と鍛えられた身体をした彼は、ゆくゆくは陽光聖典の隊長と期待されている有望株だ。

クレマンティーヌの敵ではないが。

 

「ふーん。今更その程度のできるやつで王国が変わるなんて思えないけど。あ、でもあれか。そんな少しは考える頭がある奴のところに魔神級の強さの存在がいるってなると話は違うか」

「私があったあの化け物と同一ならば、確かに王国への対応は一筋縄でいかなくなるでしょう」

 

人類圏最大の国家、スレイン法国。

その国家が有する特殊部隊、六色聖典。

その一角であり殲滅戦を得意とする戦闘部隊が半壊した。

トブの大森林で繁殖するゴブリンを間引きする任務の途中、外で警戒に当たっていた者たちが赤いしみになっているのを集落内で作戦を終えて帰ってきた隊員達が発見した。被害はそれだけではなく、集落のある洞窟内に居た隊員達も大きな揺れを何度か感じていたし、周りの木は一直線になぎ倒されていた。後日現場を検証した風花聖典によるとかなり遠く離れたところに大きなすり鉢状の穴が空いており、なぎ倒された木はそこにつながっている事がわかった。

何が起こったにせよ人類の危機かも知れない。詳しい情報を聞き出す為に最も状態が良い死体を法国へ持ち帰り、蘇生に成功した。

生き返った陽光聖典の隊員、ニグンに何が起こったのかを聞いたところ、出てきたのがモモンガなる人物の存在だ。

 

「化け物って決まった訳じゃないじゃん。帝国のフールーダの事もあるしー。案外新しく見つかった英雄級の人類かもしんないよねー」

 

神人という可能性もあるが、ただの司祭がいる中ではおおっぴらに話せる内容ではない。

含みを持たせてそう告げれば、ニグンは同意を示す。

 

「だと良いのですが……。私は一度敵対しておりますのでそう楽観はできかねます」

 

微妙な沈黙が場を支配し、石畳を走る馬車の音だけが車内に響く。

結局、一行がエ・レエブルについたのは夕日が赤くさす時間になってからだった。

 

 

 

明後日の結婚式の打ち合わせもあり、司祭は朝からレエブン侯爵の屋敷へ向かう。

護衛という名目で付いてきたニグンとクレマンティーヌもそれに合わせ、起床はまだ朝靄がかかる早朝だった。

空は曇天、気温は極寒。夜のうちに降った雪が若干溶け、石畳にへばりついている。いつもは軽装が多いクレマンティーヌも今回は温かい服装をしている。

祝いに相応しい白い神官服は着慣れない。魔法の品でも無いので冷気対策はされていない。

ぶるりと体を震わせ、移動用の馬車に乗り込む。

馬車はレエブン侯爵の紋章が彫られたもので、司祭とレエブン侯爵の親密さがうかがえる。断熱材代わりの赤いビロウドのクッションは手触りが良く弾力もある。

街の中の舗装は街道よりも更に丁寧な仕事をされている。その上に貴族の使う馬車で向かうのだから、屋敷までは驚くほど静かな道のりになった。

 

 

 

「久方ぶりです、ザルゴ助祭殿。いえ、今は司祭でしたか」

「この度は招待いただきありがとうございますエリアス様。お父上の事は聞きました。余りにも早く、亡くすには惜しい方でした」

「父も貴方のその言葉を聞いたら喜ぶでしょう」

 

レエブン侯爵の屋敷につき、最初の扉を開けたところで侯爵自身が出迎えるという厚遇。王国貴族らしからぬその出迎え方にクレマンティーヌとニグンは目を見張る。

法国に貴族はいないが、任務で偶に王国や帝国の貴族と関わる事がある。しかし、ここまで気さくな態度を見せた者は今まで見た事がない。

レエブン侯爵の見た目自体は日に焼けていない白い肌と貴族の一般的なイメージに近い。そこに整っているが蛇のように狡猾な印象を受ける顔立ちと、王国の大貴族に相応しい凝った装飾のある服を着ている。

そんな一癖も二癖もありそうな男は、この司祭に打ち解け、礼節を守りながらも親しい事を隠そうとしない。今まで接してきた貴族からすると、その態度はいっそ不気味なほどに高潔さを感じさせた。

 

「失礼。ザルゴ殿、昔話に花を咲かせるのは今しばらく後にいたしましょう。紹介したい者がおりますので」

「いえ、こちらこそついつい長話をするところでした。……ああ、彼等は私の護衛としてついている者なのだが、同席させて頂いてもよろしいでしょうか? なにぶん地位のある身になってしまったので自由が前ほど効かないのです。けしてエリアス様を信用していない訳ではないのですが」

「構いませんとも。さあ、司祭、こちらです」

 

あくまでおまけとはいえ、余りにも素っ気ない態度のレエブン侯爵にクレマンティーヌは内心で舌打ちをする。招待していない護衛に対する態度としては普通なのだが、司祭との差に不快感がつのる。

そんな内心をうかがわせる事なく三人が案内された部屋に入ると、上座の方にはレエブン侯爵と女性、そしてどこか侯爵と面影が重なる年嵩の男が座っていた。

 

司祭が座り、その後ろにニグンとクレマンティーヌが立つ。メイドがお茶の準備を終わらせると、レエブン侯爵が口を開いた。

 

「まずは改めて紹介します。婚約者のシェスティン。シェスティン、こちら去年までこの街の助祭を務めていたザルゴ司祭だ」

「はじめまして司祭様。この度は遠いところから呼びつけてしまい申し訳ございません。エリアス様が式を任せられるのはザルゴ様を置いていないと言うので。よろしくお願いいたしますわ」

「いいえ、こちらこそ。エリアス様にこんな素敵なお相手が居たなど驚きです」

「まあ素敵だなんて嬉しいです。エリアス様は中々言葉にしてくれないので殿方から褒められるのは新鮮ですわ」

「んん。誤解を生む様な事は余り口にするな。私はお前には言わなくても伝わっているだろうと思っているだけだ」

「ははは。本当に仲がよろしい様で良かったです」

 

和やかな会話を離れたところで聞きながら、クレマンティーヌとニグンは警戒を強める。魔法詠唱者の風貌をした者は近くには居ない。

しかし、この街に来てからの聞き込みで、レエブン侯爵が遠縁の魔法詠唱者をお抱えとしたのは間違いないとわかった。ひょっとしたら、隣に座る似通った風貌の男こそ、その噂の魔法詠唱者では? ニグンはかつて聞いた声を反芻しながら、男が口を開く瞬間に耳をそばだてる。

 

「イエレミアス殿もお元気そうで何よりです」

 

しかし、その緊張は司祭の言葉で霧散する。

レエブン侯爵の叔父だというその男とも言葉を交わし、話の内容は具体的な式の段取りに入った。

護衛という名目でついてきた以上、護衛対象である司祭を置いて屋敷を歩くわけにもいかない。

ニグンとクレマンティーヌは、何とか件の魔法詠唱者につながる手がかりは無いかとジリジリとした気持ちがつのる。その気持ちを汲んだのか、新たな人物が軽い足音と共にやってきた。

子供らしき足音の主は扉の前で引き止められ、扉の外に居る使用人と何やら会話をしている。ニグンとクレマンティーヌの二人はお互いに目配せをし、扉に近い場所に立っていたニグンがそっと扉に近く。

幸い分厚い樫の扉の向こうの会話も、子供特有のよく通る高い声のお陰で拾える。クレマンティーヌの視線を受けながら、ニグンは扉一枚隔てた向こう側へと意識を集中させる。

 

(それがどこにもいらっしゃらないのです)(だからと言って今ご主人様は大切な来客中です。中へは通せません)(そんな……ゴール様と仲の良いイエレミアス様ならば行き先をごぞんじだと思っていたのですが)

 

ゴール──ナインズ・オウン・ゴール。

間違いなく件の魔法詠唱者だ。ニグンは更に意識を耳に集中させる。

 

(でしたらアランさんに聞いてみると良いでしょう。今はゴール様専属の側仕えですから、詳しい予定をご存知だと思いますよ)(ありがとうございます。アランさんを探してみます)

 

遠ざかる足音に有力な情報は得られなかったかとニグンは肩を落とす。

とりあえず様子を伺うクレマンティーヌに首を振って成果を伝えると扉からそっと離れる。

半刻ほどに渡る式の詳しい打ち合わせを終えると、司祭はニグンとクレマンティーヌを連れ立って屋敷を後にした。

 

結局、式当日までナインズ・オウン・ゴールとニグンのあった男を結びつける手がかりは無く、当日までその姿を遠目に見る事すら叶わなかった。

 

 


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