比翼連理2

作:彩音

「ゆきな、どうしたの?具合でも悪い?」
御主人様のからかうような声が私の耳にそう囁いた。
「・・・・いいえ・・・・。」
初夏の公園のベンチで、私はそう答えるのが精一杯だった。目の前にはちょっとした池。
短めの藤色のフレアスカートに白いブラウス。この下に着ているのは縄だけ。紅い縄が私の体の服で見えないところを縛めていた。
ただでさえ白いブラウスに紅い縄。わかる人にはわかってしまうのではないかと心臓が羞恥に震える。乳房が縄でくびりだされているから乳首がブラウスに擦れて痛いほど勃起している。きっと、乳首は傍から見たってわかるに違いない。股間の秘めやかな割れ目に食い込んだ縄は私の敏感な部分を苛み続けていた。でも、それだけではない。
「ゆきな、顔が真っ赤だよ・・?」
くすくすとご主人様が笑う。その優しげな唇が私に耳もとに寄せられ、内緒話のように私を辱めた。
「もう縄は・・ぐっしょりだろうね・・?縄をかけておいてよかった。そうじゃなかったら立った途端に滑ったおま○こから抜け落ちるところだったからね。でも多分・・・立ったらベンチがぐっしょりかな・・?」
「あ・・・いや・・・。」
羞恥にどうしようもなく顔が火照る。それに追い討ちをかけるようにご主人様は囁いた。
「音・・聞こえそうだよ・・?」
そう、私の中には小さなバイブが押し込められていた。リモコン制御らしく、ご主人様がことあるごとに勢いを強めたり弱めたりするので私は声を人に聴かれないようにするので必死だった。
それでも羞恥の表情は隠せない。
私を怪訝そうに見ながら通り過ぎていく人も何人かいて、その度に身を焼かれるほどの羞恥に苛まれるのだった。
「ご主人様・・。もう・・・。」
自分が分泌する液でスカートはじっとりと濡れ始めていることを感じて泣きそうな声で懇願する私の髪を御主人様はにっこり微笑んでゆっくりと手になじませるように撫でた。
「そうだね。帰りたい?」
優しげな声で問い掛けるご主人様に私は必死で頷いた。
でも私は知っている。御主人様がこんな声を出すときはただじゃ終わらせてはもらえない。
「ひ・・うぅっ!」
かろうじて抑えた声。中に入れられたバイブがマックスの振動で私の襞を震わせたのだ。
「ぁ・・ご主人様・・・。」
「このままで池を一周しておいで?そしたらつれて帰ってあげるよ。ご褒美のアイスクリームも買ってあげる。」
にっこり微笑むご主人様はまるで楽しいことを思いついた子供のようだった。
アイスクリームなんかいらない。
帰って御主人様にたくさん愛してもらえたらそれでいい。
「さあ、行っておいで。」
「・・・はい。」
御主人様の声に促されるままに私は立ち上がった。
「・・・ぁ・・・。」
一気に顔が熱くなる。
座っていたベンチはべっとりと濡れて、スカートがお尻に貼り付いていたのだ。
「ご主人様・・・。」
私の懇願の声にご主人様はにっこりと微笑んだ。
「行ってらっしゃい?」
「・・はい・・。」
私はゆっくりと足を踏み出した。
「ぁ・・ん・・・。」
「そんなに色っぽい声上げてたらばれちゃうよ?」
くすくすと笑いを含んだご主人様の声。その声に私はさらに感じてしまう。
股縄が擦れ、バイブが私を苛んではいたけれど、これをやり遂げないとご主人様は私を連れて帰ってはくれない。
「・・行ってきます・・・。」
震える声で言って俯くと、私はほんの少しずつ歩を進め始めた。
そうでないと余りの刺激に感じてしゃがみこんでしまいそうだったから。
「・・・・ん・・・・。」
洩れそうになる声を必死で堪えながら歩を進める。途中でちらりと振り返ると、ご主人様はとても温かな笑みを浮かべて私を見守ってくださっていた。
・・・ご主人様・・・。
早く帰ってこよう。そしてご主人様につれて帰っていただいて・・・可愛がっていただくんだ。
その思いだけが私を前へと進ませる。池を半分回ったころ、遠目にご主人様がお店へとはいっていくのが見えた。本当にアイスクリームを買ってくださるつもりらしい。
「・・・ご主人様・・・。あと、半分・・・。」
すぐ傍は道路に面してるので、私はお尻の染みが見えないように気を使いながら少しずつ歩いた。バイブの振動と擦れる縄で息が荒くなる。だけど、後半分歩いたら御主人様が抱きしめてくださる。
そう思ったとき。
「え・・っ!?」
後ろからいきなり腕を引かれて体のバランスが崩れた。倒れそうになる体を後ろから抱きすくめられると同時、私の口が何か柔らかいものでふさがれる。
それがハンカチだとわかった瞬間、何か鼻の奥がつんとして私はそのまま暗い意識の底に沈んだ。

「・・・・。」
目が覚めるとそこは見知らぬ部屋だった。
頭が痛い。薬で無理やり眠らされたせいだろうと思う。
体の下が柔らかい。しばらく瞬きして目を慣れさせると私は周囲を見回した。
大きな窓。今いるのはどうやら大きなベッドの上らしく、横目にシーツの波が見えた。
「・・・ぁ・・・。」
体を起こそうとして、自分の体が何かで縛められていることがわかった。後ろ手に私の手首を拘束するこれはたぶん手錠。
「やっと起きたみたいね?泥棒猫ちゃん。」
「え・・?」
足元から聞こえる女性の声に私はかろうじて動く首を起こした。そこにいるのは年齢不詳のいかにもゴージャスな美女。
仕立てのいいスーツに身を包んでゆったりと肘掛け椅子に腰掛けていた。どこか小馬鹿にしたような、いらついたような冷たい笑みを浮かべて私を見ている。
そこに至って私は始めて自分が捕らえられてしまったことを知った。
「・・・あなたは・・・?」
私の小さな問いにその女性はゆっくりと立ち上がった。そのままゆっくりとした歩調で私の枕もとにまで歩いてくる。
「あなたの飼い主の家内よ。子猫ちゃん。もっとも今は・・ただ紙切れだけで繋がっているに過ぎないけど。」
「・・ご主人様の・・・。」
なぜかショックはなかった。
聞かされていたこともあるだろうけど、私はなぜか落ち着いていられた。こんなことをもしかしたら予測していたのかもしれない。
「あなた達・・丁度変態プレイの真っ最中だったようね?」
そう言うと奥さんは私のスカートを捲り上げた。もちろんその下には下着もなく縄で縛められた恥ずかしい下半身があるだけ。バイブはリモコンの範囲外になったせいかすでに動いてはいなかった。
「あ・・いや・・。」
「いやじゃないでしょう?見られて喜ぶ変態の癖に。こんな格好で外に出るなんて・・よくもそんな恥ずかしいことができるもの。」
「・・そんな・・・。」
恥ずかしさに私の頬は熱くなる。その私を蔑むようにふんと鼻で笑うと奥さんは私の顔の横にかなりの厚みがある札束を置いた。
「全く・・・そんな変態を夫に持つなんて我ながら不運だとは思ったけど。とにかく、飼い主ならほかで見つけて頂戴。いいわね?」
「これは・・。」
おかれたものに呆然とする私に当然といわんばかりに奥さんは腕を組んで私を見下ろした。
「手切れ金よ。それだけあったら上等でしょう?それとも何、もっと欲しいわけ?」
なんだか哀しくなって私は首を振った。
「お金なんて要りません・・・。私にはご主人様しかいないんです・・。」
私の言葉に奥様の頬がぴくりと引きつるのがわかった。だけど、これが私の本心。どれだけのお金を積まれても私はご主人様とはなれることなんて全く考えられなかった。
「・・・あんな変態な人でもいなきゃ困るの。あなたみたいな小娘と変態プレイに興じられるくらいならどこかのSMクラブにでもお忍びで行かれたほうがまだましなのよ。・・別れてくれるわね?」
決め付けて言う奥さんの瞳にどこか嫉妬の色が混じっていた。顔の横に置かれた札束がさらに厚みをましていく。けれどそれはきっとご主人様に対してとか、私に対してとかじゃない。
単純に夫を他の女に取られて自分のプライドが傷ついているだけ。
馬鹿ね・・・。私とご主人様はただ奴隷と飼い主だというだけなのに・・。
「いやです。あなたはご主人様がいなくてもいいかもしれないけど、私は他には誰もいないんですもの。」
私はただ淡々とそう言った。私の態度が気に障ったのか。それとも自分がお金以外の有効な手段を持たないのが見る見る奥さんの柳眉が逆立っていくのがわかった。
彼女は荒々しくお金をバッグにしまうと、他の部屋に繋がっているらしいドアに向かって呼びかけた。
「入っていいわよ!」
「・・・な・・・・。」
眼を見張る私の前でドアは開かれ、屈強ななりの男が2人入ってきた。考えたら細い女一人でいくら私が女だからって拉致ができるはずがない。きっと彼らが私を拉致するのに一役買ったに違いなかった。
「・・一体何をする気?」
大体見当はついている。それでも聞かずにはいられなかった。情けないことに声は震えていた。だけど、肉体そのものが凶器に見えるような男を二人も前にしてはそれは無理もないことだったと思う。
私の問いに奥さんは勝ち誇ったような笑みを浮かべた。まるで、私の敗北を確信したかのように。
「この人たちね?ちょっと後ろ暗いところでは有名な男優さんなの。玄人の女の人でもこの人たちが満足しないうちに壊れちゃうそうよ?」
「ひ・・いや・・・。」
恐怖で首を振る私に奥さんは目を細めて笑った。
「今ならまだ間に合うわ?さあ、夫と別れるの、どうなの?」
「いや!別れません!」
私の叫びに奥さんの顔が歪んだ。まるで般若のようにそれは醜く・・。
そして彼女は、傍に控えた男達に冷たく言い放った。
「思う存分やって頂戴。SMなんてやってる変態女だからどれだけ狂わせたっていいわ。」
そして、その冷たい眼差しが再び私を見た。
「せいぜい壊されないように堪えるのね。運良くまともでいられたらそのときは自分の愚かさを嘆いたらいいわ。」
「いやっ!やめてっ!人でなし!!!」
私の罵倒を背中に聞きながら奥さんはドアの向うへと消えていった。後に残されたのは後ろ手に拘束されたままベッドに横たわる私と二人の男達・・。
「い・・いや・・やめて・・。お願い・・。」
私の懇願すら無視して男達はニヤニヤと薄ら笑いを浮かべながら服を脱ぎ始めた。服の下には見るからに屈強な体。そして巨大な陽根。それらを見るだけで私は気が遠くなりそうなほどの恐怖にとらわれていた。
「お・・お願い・・やめ・・・。」
一人の男がベッドをきしませながら上がってきた。唇には薄ら笑いを浮かべて。もう一人もそれに続く。
「お前さんが強情だからいけないんだろ?せっかくだから楽しもうぜ。」
「心配しなくても気持ちよくしてやるよ。気持ちよすぎておかしくなるかも知れんけどなあ。」
「いや・・っ・・・いやああっ!!!」
ピッ・・ビビッ
下卑た笑みを浮かべた男達が私が着ていたブラウスを手荒く引き裂いていく。その下には縄を纏った裸体。男の一人がひゅうと下品な口笛を吹いた。
「こりゃ・・なかなか楽しませてくれそうじゃないか?」
「・・ぁうっ!」
ニヤニヤと笑いながら男は私の乳首を乱暴に抓り上げた。そうする一方でもう一人は私のスカートをはいでいく。
「いやっやめてっ!御主人さまぁっ!」
「少々叫んだくらいじゃこねえよ。しかしこりゃ玄人の縛り方だな。上手い具合に縛ってあるぜ。」
「あ・・あうっ!」
叫ぶ私をものともせずに私の股座を覗き込んでいた男が私の股縄をくいくいと引っ張った。
いや・・いや・・・。
御主人様の縄はこんなときでも私を感じさせてしまう。クリトリスを擦り上げた縄に声を上げ、私は自分の無節操な洞穴からどんどん溢れ落ちる蜜を感じていた。
「いやぁ・・いや・・。」
「へ・・。いやよいやよも、ってなあ。乳首なんかびんびんだぜ。」
捏ね上げる男の指に私の乳首は確かに痛いほどに立っていた。それが例え寒いところに出たら萎縮して硬く立ち上がってしまうのと同じくらいの生理現象だとしても今の私にとっては屈辱的なことだった。
こんな男達に触られて反応してる。相手はご主人様じゃないのに・・。
ちゅぶ・・じゅる・・・
「いや・・ぁ・・・。」
その硬く立ち上がった乳首をもてあそぶように唇と舌で舐めしゃぶられる。
「あ・・ぁあ・・。」
いつのまにか外されてしまった縄のせいで股間から圧迫感が消えた。
「お、バイブ入れてんじゃねえか。・・ああ、でもこりゃあれだな、リモコンのやつだな。ちっ、使えねえ。」
ずりゅ・・じゅ・・
「ふあ・・ああ・・。」
濡れそぼったバイブを摘み上げられて私の体を羞恥が襲う。同時に、ご主人様に仕込まれてしまった体はその羞恥にどうしようもなく感じてしまう。
指を二本突き入れられるとかなりの太さのそれを待ちかねたように飲み込み、締め付けているのが自分でもわかった。その指が中でぐにぐにと動くと浅ましくも腰が動いてしまう。
ああ・・いや・・
いやなのに開いていく体はどうしようもなくて。
男達は巧みに私の体から快楽を導き出していった。両の乳房は潰れるほどに揉みしだかれ、敏感になってしまった突起は舌でねっとりと舐められたかと思うとちゅうちゅうと吸われてはかりっと甘く噛まれて背中が震えた。
御主人様とのプレイではじめからぐしゃぐしゃになっていたいやらしい襞は指を突き入れられてはずんと背骨に響くほどの快楽に私を喘がせ、舌でクリトリスを舐めしゃぶられては狂おしいほどの快感を私に齎した。
じゅる・・ちゅ・・ぬる・・・
いやらしい音を立てながら男が私から溢れる蜜をすすり上げ、唇に敏感な突起をはさんではこりこりと捏ねまわす。指は襞をぐちゃぐちゃとかき混ぜて確実に私を追い込んでいった。
「あ・・・あああっ!」
私が最初の絶頂に達したのはそう遠い話ではなかった。恐らくものの30分も我慢できなかったかもしれない。
男達はにやりと笑うと一人が息を切らしてぐったりとした私の足を抱えあげ、その太い男根を凄まじい衝撃とともに押し込んできた。
「あ・・ああう・・っ!」
襞が限界まで広げられて擦り上げられる感触に私の背中がぎちぎちと反り上がる。
「あ・・あく・・・」
息を取り込もうとパクパク口を開く私の顔の上にもう一人の男が跨り、その太いペニスを押し込んできた。
「むぐぅっ!」
「楽しませてやったからな。今度は楽しませてもらう番だ。」
情け容赦なく突き入れられるペニスは子宮の奥を否応なしに打ち付け、喉の奥を吐き気を催すほどに擦り上げていた。苦しくて吐き出したくても吐き出すことは許されない。まるで機械式のダッチワイフのように振り回されるように体を使われるとまずは口の中の男が果てた。
「う・・うげ・・げふっ・・・ごほっ・・。」
飲めと言われなかったことは果たしていいことだったのか。えずく私などお構いなく膣を陵辱していた男が腰の動きを早めるととてつもないほどの衝撃が私を襲った。
「あ・・いや・・いや・・・あう・・ううっ・・。」
精液と涙に汚れた顔で喘ぐ私をまるでマネキンのように乱暴に突き上げると、男はにやりと笑った。
「締め付けいいぜえ?このままいっちまうか。」
「おい、俺がこのあと突っ込もうと思ってんのによぉ。」
相方のいやそうな声など構うことなく男はピッチを早めていく。
「いや・・やめて!外に・・外にお願い・・っ!」
私の声など当然聞き届けられるはずもなかった。男の腰の動きはさらに速くなり、小さなうめき声とともに一瞬動きを止めると、私の中に熱い迸りがはじけるのを感じた。
「あ・・ああ・・・。そんな・・・。」
呆然とする私をぼろくずかなにかのようにひっくり返すと、口を犯した男が今度は後ろから私の中に侵入する。
ぶちゅ・・・ぐちゅ・・・
男の侵入にあわせて私の太腿を先ほど放たれたばかりの精液が伝っていく。だけど、もう心が麻痺してしまったかのように何も感じることはなかった。
背中でかすかな音が聞こえたかと思うと手錠が外された。だけど、今の私にはそれにすら気づく余裕がない。男は私の顔を上げさせ、無理やり四つんばいにさせると私の口の中に精液と私の蜜に塗れたペニスを押し込んできた。
噛めないように顎を抑えられてはいたけれど、そんなことをしなくてもきっと今の私に抵抗する気力はなかっただろう。
どれだけ精液が中に、そして外に放たれたかはわからない。
永遠にも思われた時間は唐突に終わりを告げた。
「ゆきな!?」
「・・ぁ・・・。」
なにがどうなったのか。
私は、男にもみくちゃにされる体をなぜか突然現れたご主人様に抱えられると、そこで意識を失った。

気が付けば部屋だった。
目の前にはご主人様の心配げな顔。
「ゆきな・・・。大丈夫かい・・?」
かすかに腕が痛い。それだけじゃない。体のあちこちが痛い。
だけど、私は黙ってこくりと頷いた。
「すまない。油断していたよ。まさか君をさらうような手段に出るなんて・・・。」
「ご主人様・・・。」
「もう、心配要らないから。絶対に君を一人にしない。」
御主人様の暖かい手が私の髪を撫でた。その手が、出会ったときよりも細くなっていて、なぜか私は涙が出た。
「ご主人様・・・。好きです・・・。」
私が言ったのは、なぜかそんなことだった。

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