比翼連理1

作:彩音

寒い・・・・。
私は、凍える体を抱きしめた。
暗く、暖房もないこの部屋。
いいえ・・・。
あるのだけれど、つけていないだけ。
がらんとした部屋。
部屋の中にいるのは、私。
それと・・・ご主人様・・。
横たわり、冷たくなったご主人様の頬にそっと手を触れる。
・・・硬い・・・。
胸の前で組まれた手に触れる。
もう・・・動かない・・・。
この手が私を弄ってくださることも・・・辱めてくださることも・・・お仕置きしてくださることも・・・もう・・ない・・・。
「ご主人様・・・。」
そっと呼びかけてみる。
「もう一度・・・私の名前を呼んでください・・ご主人様・・・。『ゆきな』って・・・呼んで・・・・。」
空ろな私の声ががらんとした部屋に響く。
息が白い。
私は、凍るほど冷たいご主人様の胸に頬を当てて瞳を閉じた。

私がご主人様と出会ったのは雪の積もった寒い日だった。
「名前は・・・?」
「ゆきな・・です・・・。」
お触り禁止の高級クラブ。
私と彼が出会ったのはそんな場所だった。お金のために働いていた私は、常連のお客様だった彼と出会った。
生来の不器用と内気な性格が災いしてほとんど指名が着かない私の常連客になってくれただけじゃなく、マンションと何不自由ない暮らしをくれた。
唇をかわすこともないままに。
肌も合わせることないままに。
なんでここまで・・・。
そう尋ねた私に、寂しい子は嫌いなんだよ、と笑っていた。
優しい、とても優しい彼。
とても年上の、かっこよくはないけれど大きくて暖かい人。
だけど、そんな彼はもともとママのお客さんだった。
私は当然のようにママに疎まれて、店を追われるように辞めた。
そう・・。今日のように、寒くて・・・冷たい日・・・。
「僕のものにならないか?」
当然彼にも捨てられると思っていたから。
私は、自分の耳が都合のいい言葉を紡ぎあげているのではないかと疑った。
けれど、そんな私に彼は繰り返した。
「僕のものになって欲しい。世の中の何もかもを捨てて、僕だけのために生きて欲しい。」
もとから答えは決まっていた。
「私には、あなたが世の中のすべて・・・。」
抱きしめてくれた腕はどんな場所よりも暖かかった。
私はその日から、彼のためだけに生きる雌となった。

彼がくれたマンションの1室。彼は私の目の前に立つと、静かに言った。
「服を脱いで・・。」
今まで私をそんな風には扱わなかった彼。
その彼の要望に私は戸惑った。
「・・・脱いで・・?」
彼の声はどこまでも優しい。
私は、恥ずかしさに全身を染めながら着ていた服を一つ一つゆっくりと脱いでいく。
彼は決して焦らせない。
下着姿のまま立ち尽くす私をふわりと抱きしめて髪を撫でてくれた。
「いやかい・・?」
「いやなんて・・・。」
ただ、恥ずかしい。それだけ。
彼の大きくて暖かな手が私の肩を撫でて、細いブラのストラップをついと撫でた。
「君の全てが見たいな・・。」
囁きに溶かされていく。
私は、恥ずかしさに俯きながらも彼の腕の中で生まれたままの姿になった。
「綺麗だよ・・。ゆきな。とても綺麗だ・・。」
私の白すぎるほど白い肌を見ながら彼はそう言ってくれた。
胸を隠そうとすると微笑んで腕を取って首を振る。
「これから君は、この家の中で服を着ちゃいけないよ。いいね?」
「え・・・そんな・・恥ずかしいし・・それに、誰か来たら・・・。」
戸惑う私の頬にそっと触れて彼は微笑んだ。
「僕はこの部屋に帰る前に必ず電話をするよ。君はインターフォンに出なくていい。必要なものがあったら僕が買って来るか、二人で買い物に行くんだ。いいね?」
これからずっと・・裸・・・。
それはとても恥ずかしくて・・それでいてとても満たされることだった。
ありのままの私すべてを受け入れてくれるようで。
羞恥と喜びが入り混じった顔を紅く染めた私に彼は言葉を続けた。
「それから、家の中では僕のことを『ご主人様』と呼ぶんだ。」
「『ご主人様』・・・。」
「そう。いい子だ。」
そう言われて髪に優しく口付けられると嬉しさがこみ上げてくる。
『ご主人様』・・。私がこの人のものになった証・・。
じゅん・・・
何かしら体の奥が熱くなってくるのを感じて瞳を閉じた私の顎をご主人様がとった。
「あ・・・。」
あっという間のこと。
何か柔らかいものが唇に触れた、柔らかく私の唇を食んでいく。
それが、私たちの初めての口付け。
「ゆきな・・かわいい・・・。」
口付けと吐息の間。
そう囁きながら彼の指が私の髪を弄り、背中を撫で、柔らかくお尻を包んでいく。
「ん・・恥ずかしい・・・。」
知らずそう呟いた私の頬に柔らかく唇を押し付けて彼は微笑んだ。
「これからもっと・・恥ずかしいことを毎日、僕が望むたびにするんだよ?」
そういうと彼は私を抱え上げて寝室へと連れて行った。
シンプルなダブルのパイプベッド。
その上に私をそっと降ろして彼は微笑んだ。
すぐ目の前には大好きな彼の顔。彼の唇が私の顔をあちこちを愛撫しながらここでの生活について優しく説いた。
彼が出かけている間に掃除とベッドメイキングを必ずすること。
彼が帰ると電話したら夕食の準備をはじめること。
彼以外の誰にも会わないこと。
彼の求めにはいつでもどこでもできるだけ応じること。
どうしてもいやなときは「ノー」と言うこと。
「ずっと、ずっと僕だけのかわいい子でいておくれ?」
そう最後に付け加えて、彼は私に深く口付けた。
こんなにしたらお返事できません・・。
そう言おうと思ったけど余りにキスが心地よくて彼に身を任せきりにしてしまった。
絡まる舌が優しく私の舌を、口の中の粘膜を弄っていく。
重なり合った唇と交じり合う唾液。そこからまるで一つに溶け合えるような錯覚に陥ってしまう。
御主人様の手が私のおっぱいを優しく包み込んだ。
恥ずかしい・・。
ふさがれた唇ではそんなこともいえなくて。
ぴちゃ・・くちゃ・・・
唾液が交じり合い、啜られる音を聞きながら胸を揉まれると段々と自分でも感じてきて力が抜けてしまう。
「ゆきな・・。もう、乳首がこんなに硬くなっちゃって・・。」
「ひあ・・っ」
こりこりに硬く立ち上がった乳首を引っ張られると胸がきゅんとなるほど疼いてしまう。御主人様の唇が私の首筋を丁寧に辿ってちろちろと舐めていく。
少しくすぐったく手首をすくめたら「こら」と小さく怒られた。
「ちゃんと僕がやりやすいようにおとなしくね。もし邪魔したらお仕置きだよ?」
「え・・。」
優しいけどはっきりとした口調。戸惑う私の目をご主人様は覗き込んだ。
「返事は?『はい』っていってごらん?」
「・・はい・・・。」
ご褒美は目もくらむほどのキス。胸を優しく、時に激しく揉まれ、乳首をきゅうっと摘み上げられながらの息もつけないほどのキス。
こうして優しい躾が始まった。
「じゃあ、ゆきな。僕にゆきなのおま○こを見せてごらん?」
「え・・。」
初めてご主人様の口から聴いた卑猥な言葉に私は耳まで真っ赤に染めてただご主人様を凝視するだけだった。
「さあ、早く見せて?」
「そんな・・恥ずかしい・・・。」
自分からそんな場所をさらすなんて恥ずかしくてとてもできない。
私の体はまるで凍りついたように動かなかった。
「ゆきな、『はい』だろう?僕のものになってくれるんだよね?」
「あ・・・。」
いつまでたっても動けない私にご主人様は困ったように微笑んだ。
「しょうがないなあ。じゃあ、お仕置きしちゃうよ?」
「え・・そんな・・・。」
「だってゆきなが見せてくれないからしょうがないよね?」
そういうと立ち上がったご主人様はベッドから降りて、自分の荷物を持ってきた。
中から取り出したのは紅い縄に木製の洗濯バサミのようなもの。
「ゆきなは肌が白いから紅い縄がきっとよく似合うよ。」
「え・・?」
御主人様は戸惑っておろおろする私を、あっという間の手際のよさでとても恥ずかしい格好に縛り上げてしまった。
足はM字に開かされて、後ろ手に縛られて。胸は強調するようにきちきちに縛り上げられてしまった。
これじゃあ、何一つ自分では隠せない。
「ゆきな・・綺麗だよ・・。」
「いや・・恥ずかしい・・。」
何もかもがその目にさらされている。
つんと突き出して硬くなった乳首も。
もうぐしゃぐしゃに濡れてはしたない匂いを漂わせている割れ目も。
泣き出しそうにご主人様を見ている顔も。
御主人様は洗濯バサミを手にとると優しく微笑んで私を見た。
「お仕置きだから少し痛いよ?でも、初心者向けだからまだ大丈夫。」
そう言ってその洗濯バサミを私のかたくなって敏感な乳首につけてしまった。
「あうっ!!」
痛みより、そんなところをそんなもので挟まれたショックが大きくて。
私の目に見る見るうちに涙がたまってきてしまった。
「あ・・ご主人様・・ごめんなさい・・・外して・・。」
私の懇願にご主人様は小さく微笑んで私の髪を撫でた。
「そんなにすぐ外したらお仕置きにならないだろう?だから・・。」
少し言葉を切ってご主人様の指が乳首の洗濯バサミを軽くはじく。途端に鋭い痛みが胸の先端から全身に駆け抜けた。
「あ・・ああっ!」
もだえる私の頬を優しい指が撫でて、ご主人様は私の膝にそっと口付けてくれた。
「一回いったらはずしてあげる。」
「え・・いったらって・・・あ・・ああんっ!」
仰け反った体が縄にきしむ。
御主人様の指が私の恥ずかしく濡れた割れ目をそっと弄ったから。
「あ・・そんな・・ああん・・。」
「ゆきな、返事は?」
「あう・・は・・はい・・・。」
くちゅくちゅといやらしい音を響かせて私の襞を優しく撫でる指に返事も途切れがち。
私のそんな返事にご主人様は満足そうに頷いて、私のお○んこに唇を寄せた。指は限界まで割れ目を開いていてとても恥ずかしい。
「あ・・そんな汚い・・・ぁん・・。」
「ゆきなの体が汚いって?こんなに美味しいのに?」
そういいながらご主人様は大胆な舌使いで私のそこをどんどんと舐め上げていく。私は漏らした愛液をじゅるじゅると吸い取り、舐めながら私の敏感な突起を舌で突付いては声を上げさせる。
「あん・・ああん・・そんな・・ああ・・ひ・・。」
絶え間なく漏れる声。
その声を聞きながらご主人様は私の突起をきつく吸い上げ、舌でちろちろと舐めまわしていく。
感じすぎておかしくなりそうなのに足は固定されてとじることができない。御主人様はそんな私の体を知ってか知らずか敏感な突起の皮を指でむいてしまった。
「ひあぅっ!そんなあ・・・!あ・・あ・・やぁ・・いや・・。」
「本当にいやじゃないだろ?だって飲んでも飲んでもいやらしい液が溢れてくるよ?」
御主人様のいやらしい言葉が恥ずかしいのに体はどんどん熱くなって刺激をもっともっとと求めてる。
おかしい。私、こんなに淫乱じゃなかったはずなのに。
御主人様の指が膣の中に1本もぐりこんできた。
その指が私の襞を探るように動いている。もちろん、その間も舌の動きがとまることはない。
「すごい・・ゆきな。締め付けてるよ?中が吸い付いてるみたい。こんなに狭いんじゃもう1本入るかな?」
「あ・・ああん・・んあ・・・っ。」
1本でもものすごくいいのにもう1本入れられたりしたら・・。
想像するだけで腰が震えてきて私は自分がものすごく蜜を溢れさせていることを感じていた。
「入れるよ?」
優しい言葉と同時に中に感じる圧迫感に思わず背中が仰け反りそうになる。
「ああんっ!!」
ぎし・・。
縄がきしんだのがわかった。
だけど、快楽を欲しがっているくせにその快楽から逃れようとする体はもだえることを止められない。
「あん・・あう・・ふ・・あふ・・。」
とめどなく溢れるのは隠しようもない喘ぎ声と愛液。中を二本の指がぐりぐりと擦ると体の奥底から快感が湧き上がって、私は激しく首を振った。それだけでも辛いのに敏感な突起は相変わらずご主人様の舌にもてあそばれている。
「ゆきな・・かわいいよ・・。」
硬い剥き出しの突起をぺろぺろとした全体で舐めたかと思うと尖らせた舌でちろちろと舐める。唇にはさみこんで舐ったかと思えばきゅうっときつく吸い上げてまた舐める。
まるで拷問のような快楽の中、私は唐突に絶頂を迎えた。
「あ・・だめ・・だめ・・・っ!いっちゃう・・・っ!」
激しすぎる快楽にがくがくと震える体。
股間に生ぬるい感触を感じる。
「ゆきな。潮を吹いちゃったよ?そんなに感じた?」
余りにすごくてぼんやりとする私にくすくすと笑いながらご主人様がべったり濡れた手を私の目の前に突き出した。
いや・・恥ずかしい・・。
顔を背けても許してはくれない。
「ゆきな、見なさい。」
御主人様がそう言えば私は見なくちゃいけない。
恥ずかしがる私を満足そうに見てご主人様は胸の洗濯バサミを外してくれた。そう言えば、洗濯バサミのことは忘れていたように思う。
「あんっ!」
つけるときよりも外すときのほうが痛い。
私の目にまたうっすらと涙が浮かんだ。そんな私に優しく口付けてご主人様は私をそのままひっくり返した。
お尻を突き出した、とても恥ずかしい格好。
顔はベッドに押し付けられてて横にしていないと息もままならない。
「あ・・やぁ・・・。」
その格好のまま動けない私の背後でご主人様が何かをしていた。
ブブブブブブブブブブ・・・
聞こえるのはそんな音。
「え・・あ・・なに・・これ・・ああんっ!ふあ・・ひ・・やあ・・。」
震えるちょうちょが私のいったばかりで敏感になった突起に押し付けられたかと思うと開いたままの両の太腿に紐で固定されていく。「バタフライ」というものらしい。
「ゆきなはここが好きみたいだね。ここを気持ちよくしたままいっしょになろう。」
そう言うとご主人様の手が私の腰にあてがわれた。すると、私のあそこにとても熱い感触がぴったりと押し付けられる。
御主人様の・・・。
ぐちゅ・・ぐちゅ・・・
御主人様の熱いペニスは私の中に入らずに入り口をいやらしい音を立てながら擦っている。
「あ・・ああ・・。」
だめ・・欲しいのに・・。
いつまでたっても入れてくれないご主人様に私の腰が浅ましく動いた。それを見てご主人様がくすりと笑う。
「欲しいの?」
「・・・はい・・。」
「じゃあ、ちゃんとおねだりしなきゃ。どこに、何が欲しいのか言わないとあげないよ?」
こんなときにまで意地悪なご主人様。
でも、きっと言わなかったら本当にくれないかもしれない。
「わ・・私のあそこに・・ご主人様をください・・。」
勇気を振り絞っていったのに、ご主人様のペニスはやっぱり中に入ってくれない。
「あ・・ご主人様・・。」
「あそこってどこだかわかんないし、僕のなにが欲しいのか言わなきゃね。指?それとも舌?」
ああ・・恥ずかしい・・・。
「そんな・・・。」
「ゆきな・・・?」
恥ずかしいけど・・・欲しい・・欲しくてたまらない・・。
ぐちょぐちょと私のあそこを擦る熱さがもどかしくて、私は羞恥の中、半べそをかきながらご主人様に訴えた。
「ゆきなのおま○こにご主人様のおちんち○をください・・っ!」
小さな小さな声。
御主人様は私の背中にそっと口付けてくださった。
「今度はもう少し大きな声で言おうね?」
「ああああっ!」
そして押し入ってくる熱さ。
とても大きなご主人様のそれが私の濡れた膣を掻き分け、一番奥までゆっくりと入ってくる。
ぎゅぎゅっと子宮の入り口を突付いたかと思うと、今度は大きなストロークでぐちゃぐちゃと私を犯していく。
「ああん・・すご・・あ・・ご主人様・・ああ・・・っ」
「ゆきなの中、ものすごく暖かくて気持ちいいよ。食いしん坊さんに食べられてるみたいに締め付けてる。」
「ああん・・恥ずかしい・・・。」
だけど、欲しくて仕方ない。
御主人様の硬くて熱い欲望が私の襞の一番敏感なところをぐりぐりと抉っては出入りを繰り返し、また突き上げてくる。
快感がうねりのように押し寄せ、引くことはなくてそのまま私の中で増殖していく。そんな感覚。
自分の膣がご主人様を貪欲に欲しがってこれでもか、これでもかというほどに締め付けているのが自分でもわかるほど。
「ああ・・ご主人様・・。ご主人様・・・。いい・・・あああん・・・。」
クリト○スに押し付けられている震えがその感覚をさらに増長させて私は大きく喘いだ。
「あ・・だめ・・もう・・だめです・・・。」
「じゃあゆきな。いっしょにいこうか。」
頷く間もなくその高波は押し寄せてきた。
「もう・・や・・ああん・・・ああっ!!いくっっ!!」
私の体が絶頂にがくがくと震えると同時に私の中のご主人様も膨れ上がるのを感じた。質量を増したそれは勢いよく私の奥に打ち付けられ、私を立て続けに達させておいてからようやく熱い精液を吐き出した。
「ゆきな・・・かわいいゆきな・・・。」
御主人様が私に口付けたのを、私は遠い意識の中で感じていた。

御主人様の余命が余りない事を知ったのは私が彼一人のものになってから3ヶ月が過ぎた頃だった。
「いっそのこと心筋梗塞か何かでぽっくりいってくれたら楽なんだけどね。」
そう言って笑うご主人様を、私は本気で怒った。
もう、一人はいや。
御主人様を失った後のことなど、私にはとても考えられなかった。
別居している奥さんがいることも後から知った。
「金のせいで別れてくれないんだ。愛情なんかもうないくせにね。」
そう言って寂しそうに笑う彼は、私を縋るように抱きしめた。
紙切れなんかなくても、私たちは確かに愛で繋がっていた。
だから私は、「結婚」という形がなくても満足だったし、奥さんの存在など気にも留めなかった。

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