数学を学びたい人のために~“好き”が一番

飯高 茂   学習院大学 理学部 数学科
代数幾何 /研究領域:代数多様体の双有理分類論、種数、双有理幾何、分類論 ]

50年前のイイタカシゲル(18歳)と今のイイタカシゲル(68歳)との対話

50年前:数学は結構好きなんです。でも点はとれたり取れなかったりです。数学がもっと出来るようになる秘訣(ひけつ)を教えて下さい。
今の:秘訣はないですね。だけど君はどうして数学をしたいのかい?

50年前:数学なら実験がないからこわい思いをしなくて済みます。化学実験で失敗したら大変ですから。お金がなくてもできるの。
今の:数学ならお金は原理的にかからない。

50年前:エンジニアの伯父さんに工学部に進むことをすすめられました。でもダム建設の技師さんは水をためるとき、とても心配でたまらなくなるそうです。数学ならそんな心配はないでしょう。
今の:そんな消極的な理由ばかりではどうかな。東大の理Ⅰを受けるのかい。

50年前:全国模試で国立理系で900番だったんですが、1000番以内に入れば受かるらしいぜ、と友達に言われたので受けようと思います。
今の:東大の数学科に入って知ったのだけれど、世の中には頭のいい人はたくさんいる。

50年前:そういうすごい人の話を聞くと怖くなりますね。自分は数学が好きで、友達に説明するとが「数学がわかった」と言って喜ぶんですよ。中学か高校で数学を教えたらいいなと思っています。
今の:その程度の気持ちでいいんだと思うよ。自分は世界の一流の数学者と負けないようになるなんて思っていたら、研究を始める前に疲れてしまうよ。張り詰めていると挫折に弱いね。数学オリンピックで金メダルをとるような人にはすごい人がいるけれど、そういう人が数学の大業績をあげるかと思うとそうでもない。自分の関心にしたがって黙々と数学をやり続けていつのまにか数学の新しい分野を作った人も結構いる。そう人は世界の科学コンテストにでたりしないものだよ。自分を大切に努力して倦(う)まず弛(たゆ)まず続けて欲しい。

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いいたか・しげる/1942年千葉県生まれ。
代数曲線の種数に出会ったのは、高等学校の数学科教員の研究室にあったソビエト科学アカデミーの出した数学通論という啓蒙(けいもう)書。種数という1つの不変数が曲線の本質を決定すると聞いて感動。見かけの曲線の次数より種数が大切だ、と知り高い次元の場合にも本質を決める不変数がないかと考えて、小平次元、および対数的小平次元の概念を提案。その後より精緻(せいち)な混合多種数を定義しその研究に邁進(まいしん)。

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