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【社説】

ゴーン前会長 巨額報酬を問いたい

 ゴーン被告については昨日、いわゆる人質司法の問題を指摘したが、一般的に巨額すぎるような報酬についても改めて考えてみたい。富を偏らせる政治や経済の仕組みに、ゆがみはないのかと。

 著しい収入格差は世界に広まっている。格差を研究する国際非政府組織(NGO)、オックスファムは二〇一八年、世界の富豪上位二十六人の資産約百五十兆円と、世界人口の半分にあたる三十八億人の貧困層の資産がほぼ同額だと報告した。数字を見て資本主義の暴走を感じはしまいか。

 国内に目を向ければ、企業が収入を人件費に回す労働分配率は約66%で、石油ショックに苦しんだ一九七〇年代中頃の水準まで落ち込んでいる。

 富裕層は富を増やし続け、勤労世帯の所得が減る流れが国内外で定着している。

 保釈されたゴーン被告は日産会長として一時、年十億円を超す報酬をもらっていた。これに対し、株主総会で批判が出ていた。

 九九年以降、経営危機に陥っていた日産の立て直しに尽力したのは事実だ。彼なしに今の日産はないだろう。

 しかし、経営再建に際し多くの系列会社が取引を停止され、社員も大量に去らざるを得なかった。多大な犠牲を払った上での再建だ。ルノーも再三困難に直面した。雇用不安を抱える従業員や株主らが、突出した報酬を批判するのは理解できる。

 もちろん巨額報酬をもらっている経営者は、ゴーン被告だけではない。

 突出した巨額な報酬が目立ち始めたのは、九〇年代以降の米国の金融界だった。自社株による報酬支払いを巧みに使いこなし、多くの経営者が天文学的な額の報酬をもらい続けた。

 生産性の高い人間が高い報酬を得るのは資本主義の原則だろう。だが一握りの経営者があまりにも巨額な報酬をもらい、一般労働者は残りを分け合うという構図は、社会のあり方としてどうか。不公平は、社会全体の不安定を招きはしないだろうか。

 フランスの経済学者、トマ・ピケティは一三年、著書「21世紀の資本」で資産課税強化による格差の是正を唱えている。しかし、政策に反映されてはいない。

 ゴーン被告の巨額報酬は、格差の現実を改めて可視化し人々に提示した。それが資本主義のゆがみであるなら、たださねばならないだろう。 

 

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