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【社説】

三・一運動100年 互いに歴史踏まえたい

 日本統治時代に朝鮮半島で起きた三・一独立運動から百年。日韓関係は荒波の中にあるが、市民の交流は着実に広がっている。この機会に相互の歴史に向き合い、日韓関係の重要さを再確認したい。

 文在寅(ムンジェイン)大統領が、ソウルで一万人以上を前にして行った演説は、大方の予想より穏やかだった。

 朝鮮半島の平和のため、日本と協力すると表明し、「未来志向」という言葉も使った。

 日韓間の懸案となっている元徴用工を巡る判決などへの直接の言及はなく、昨年の厳しい調子とは、様変わりだった。

 日本との関係改善の意欲を示したメッセージとして、率直に評価したい。日本政府もこの機会を逃さず、対話を重ねてほしい。

 昨年末以降、日韓関係は緊張と対立が続いている。元慰安婦問題、レーダー照射、韓国国会議長の「天皇謝罪要求」発言もあり、政府関係者や政治家同士が批判しあう場面も少なくない。

 しかし、こうした事態が続けば、日米韓の連携が揺らぎ、結果的に、当面の懸案である北朝鮮の非核化にも影響するだろう。

 もともと百年前のこの日、現在のソウルにある公園で読み上げられた独立宣言書は、日本を責めることが本旨ではなかった。

 日本が誤った道にいると指摘し、共に東洋平和を実現しようと呼びかける内容だった。

 日本で学ぶ朝鮮人留学生が先に独立宣言を作成し、三・一宣言に影響を与えたとも伝えられる。

 また大正デモクラシーを代表する思想家の吉野作造や、後に首相となる石橋湛山(たんざん)、民芸の柳宗悦(やなぎむねよし)らの知識人たちが、武力を背景にした日本の統治を批判し、三・一運動への共感を表明していた。

 韓国が誇りにする三・一運動には、日本側からの支援があったことをあらためて想起したい。

 日韓関係の悪化は、冷戦の終結や、韓国の経済力の向上など構造的なものがあると分析されている。今後も、さまざまな摩擦は避けられないだろう。

 しかし、歴史問題が日韓関係を左右する現状はむろん好ましくない。外交、安保、経済上の協力は切り離して対応すべきだ。

 市民同士の交流にも注目したい。日韓両国の年間往来者数は、昨年初めて一千万人を突破した。芸術、文学、医療など市民レベルの協力も広がっている。

 難しい時だからこそ、相互理解を深め、日韓関係を、より重層的なものにしたい。

 

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