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【社説】

米朝首脳会談 核抱えるより胸襟開け

 「合意見送り」という予想外の結果だった。二回目の米朝首脳会談は、非核化を巡る立場の差と、トップ交渉の危うさを浮き彫りにしたものの、緊張を高めてはならない。早期の再会談を望みたい。

 「非核化の意思がなければ、ここには来なかった」

 北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は二十八日の会談前、報道陣からの質問に、こう答えた。

 非核化への決意を、正恩氏が直接表明したことは意味がある。

 トランプ米大統領も北朝鮮の経済発展について、「無限の潜在力がある」「米国が助ける」と非核化に伴う経済的メリットを強調した。決断を促す狙いだった。合意への期待が高まったのも、当然だろう。

 昨年六月に行われた初の首脳会談で発表された合意は、朝鮮半島の完全な非核化をうたっていた。ただし、具体的手順が欠けており「非核化宣言」にすぎなかった。

 このため今回は、非核化を進める具体的な場所、手順、時期などをどれだけ明確に打ち出せるかに注目が集まっていた。

 北朝鮮側は会談で、核開発の中心である寧辺(ニョンビョン)核施設の廃棄だけには応じるが、見返りに全面的な制裁解除を求めたという。事実なら、あまりに身勝手ではないか。

 北朝鮮には、寧辺以外にも核施設があるとされ、現在も核開発を進めていると多くの専門家が指摘している。そんな状況で、制裁を一気に解除するのは危険すぎる。

 ロシア疑惑での不利な証言が飛び出したことで、成果を急ぐトランプ氏が大幅に譲歩するのではないかとの懸念も出ており、合意見送りはやむを得なかった。

 しかし、一致点がなかったわけではない。例えば、信頼醸成のため連絡事務所を双方の首都に設置する構想について正恩氏は「歓迎すべきことだ」と答え、トランプ氏も「素晴らしいことだ」と応じている。正恩氏が柔軟になれば、再会談の可能性は十分ある。

 韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は、正恩氏と信頼関係を結んでいる。非核化が北朝鮮の経済発展に貢献することを説得してほしい。

 正恩氏の随行員の一部は、観光地や自動車メーカーを視察し、ベトナムの改革・開放政策「ドイモイ」(刷新)に関心を示した。

 正恩氏も、戦火を交えた米国との関係改善を実現し、発展したハノイを、自分の目で実感したはずだ。北朝鮮の国民は、核を抱えた孤立より、開かれた豊かな生活を望んでいる。

 

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