北村薫~空飛ぶ馬~
お気に入りの作家、北村薫さんの「空飛ぶ馬」の紹介です。

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加納朋子「ななつのこ」
加納朋子「魔法飛行」
加納朋子「スペース」
加納朋子「掌の中の小鳥」
加納朋子「沙羅は和子の名を呼ぶ」
加納朋子「いちばん初めにあった海」
加納朋子「ガラスの麒麟」
加納朋子「螺旋階段のアリス」
加納朋子「虹の家のアリス」
北村薫「Skip」
北村薫「Turn」
北村薫「Reset」
・北村薫「空飛ぶ馬」
北村薫「夜の蝉」
北村薫「秋の花」
北村薫「六の宮の姫君」
北村薫「覆面作家は二人いる」
北村薫「月の砂漠をさばさばと」
宮部みゆき「火車」
宮部みゆき「スナーク狩り」
宮部みゆき「鳩笛草」
宮部みゆき「クロスファイア」
宮部みゆき「我らが隣人の犯罪」
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創元推理文庫 北村薫(著)

 『日常のミステリ』作家として知られる北村薫さんのデビュー作にして、“円紫さんと私”シリーズ第一段です。「殺人が起きないミステリ、しかも本格派!」という、非常に面白い作品です。初めて読んだときから、すっかりはまってしまいました。物語は、この後「夜の蝉」「秋の花」北村薫「六の宮の姫君」、「朝霧」と続いていきます。
 内容ですが、主人公は女子大生の“私”。そう、今もまだシリーズが続いているというのに、名前が明かされていないのです。そうすることによって、「読者=私」として物語に引き込むわけです。さすがは北村先生、デビュー作から魅せてくれますよね。この“私”が日常生活の中で謎を見つけ、それを探偵役である噺家“円紫”師匠が解決していきます。その謎とは、ささいな、でもハッと目が覚めるような事柄や人生の機微だったり。この円紫師匠が良いんですよ。全部で5つの物語からなる連作なのですが、私のお気に入りは「赤頭巾」と「空飛ぶ馬」。北村さんは、著書の中でこのようなコメントをしています。「小説が書かれ読まれるのは、人生がただ一度であることへの抗議からだと思います。」ぜひ、だまされたと思って一読くださいませ。新たな人生へ飛んでいけると思いますよ。最後に、この作品に作家の宮部みゆきさんが寄せているコメントを引用して、締めたいと思います。
 “本格推理の謎解きの興味やその過程の論理のアクロバットの面白さと、人間ドラマである「小説」の醍醐味とは、基本的に相矛盾するものであり、共存が難しいというのは、しばしば指摘されるところである。しかし、このふたつの要素がきわめて幸福な結婚をした場合、どんな作品が生まれるか? この問いに答えるのが本書『空飛ぶ馬』である。希有のカップルを誕生させた著者北村薫氏は、ヒロインの「私」と探偵役の噺家春桜亭円紫師匠とのやりとりを通して、私たちの日常にひそむささいだけれど不可思議な謎のなかに、貴重な人生の輝きや生きてゆくことの哀しみが隠されていることを教えてくれる。”
~宮部みゆき~