今日、警察庁がサイバー犯罪年度統計か何かをマスコミ向けに発表したようで、今日の夕刊各紙は1面で「仮想通貨被害677億円」(読売)、「標的型メール最多6740件」(日経)、「不振アクセス45%増 マイニング21人摘発」(毎日)の見出しが躍っている。
このうち毎日新聞が、コインマイナー事案を報じているのだが、「2018年に全国で21人が不正指令電磁的記録供用容疑などで摘発(逮捕・書類送検)された。」とあり、昨年6月の時点で16人と発表されていたところから、5人増えていることがわかる。当時「16人で打ち止め」とも聞いていたが、確かにその後、私のところへ新たに家宅捜索があったとの情報提供が数人あった。
問題は記事のそれに続く部分である。「サイト閲覧者 加担気づかず」の「加担」というのも意味不明だが、なんと、「摘発された人は「ネットの広告と同じ仕組みで、HPのプログラムが閲覧者に指示を出すのは適法だ」などと反論したが、有罪判決が出ている。」などと書いている。
この「毎日新聞 統合デジタル取材センター」は「裁判にもなっています。」と書いて、どういうつもりなのだろう?
有罪判決が出ている1件*1は、書かれているようなWebにサイト運営者が自らCoinhiveを設置した事案ではない。オンラインゲーム用の自作チートツール「MapleTools.exe」に途中のバージョンから仮想通貨Zoinのマイニングをする「cpuminer-sse2.exe」を埋め込んだ事案である。気の毒なことにこの被告人は何も争わなかったため、一審で懲役1年、執行猶予3年の有罪判決が確定してしまった。これによって予定していた人生が大きく変わってしまったとの噂を聞いている。
その他には判決は出ていない。何件かは略式での罰金刑を受け入れたとの連絡があった。不起訴になった事案(少年事件を除く)も1件連絡があった。
モロさんのCoinhive事案で今月27日に初めての判決が出ることから、多くの報道機関が準備に動いているのに、毎日新聞は何も知らないのか? 重大な誤報だろう。お詫び訂正が必須な誤報と言えよう。
それとも、警察庁がそのように発表、説明したから、それを伝えただけで誤報ではないとでも言うのだろうか。そういえば昨年にも、この仙台地裁事案を、WebのCoinhive事案と区別せずに情報を流して、混同を狙ったかのごとき報道があった。まるで世論を騙して既成事実化を図ったようだった。
正直「またか」と怒り心頭だ。毎日新聞は、誤報訂正の償いに、警察庁がどのようにこれを発表して誤解を誘ったかを糾弾してほしい。記者クラブ記者には不可能かもしれないが。
なお、読売、日経、朝日*2はこの警察庁発表を受けた記事で、コインマイナー事案について一言も触れていない。報じるべき発表ではないとして無視するのが良識だろう。