マーケティング用語には辞書で見当たらない言葉が多い。「自分ごと化」もその一つだ。多くのブランドから、消費者にいかに自分向けのモノ(自分ごと)だと意識してもらえるかが購買の鍵を握る
▼沖縄の現状も「自分ごと化」がキーワードだ。日米安保条約に伴う沖縄への過重な基地負担を本土側がどう「自分ごと化」していくかが問われる
▼辺野古埋め立ての賛否を問う県民投票翌日の県外紙の社説をめくった。「県外の人々もわがこととして捉えるべき必要があろう」(北海道)、「今後問われるのは、事実上、基地を沖縄に押し付けてきた本土の姿勢だ」(京都)、「私たち本土の住民も(中略)いま一度、日本全体の問題として考えたい」(西日本)
▼本土側で議論を促す主張が増えてきた。「基地負担で沖縄はかわいそう」ではなく、「負担を押しつけているのは誰か」との自省の視点がそこにある
▼県民投票の結果を受けて首相官邸前で「沖縄埋めるな東京大抗議」が催され、「辺野古埋めるな」のコールが空に響いた。主催団体はなく個人の呼び掛けで若者も目立った
▼だが安保法制反対の集会ほどの盛り上がりはない。参加者は基地問題をわがこととして捉えているのだろうが、多くの国民には人ごとか。国家の強権にさらされる沖縄からの異議申し立てを対岸の火事と見ていては、いつかしっぺ返しを食う。