韓国ナショナリズムから見た日米韓関係

 木村 幹 (神戸大学)

  自らの存在を発見し、何者であるかに悩み、そして、その中で懸命にその答えを探し求める。「近代」におけるネーション形成の過程は、「近代」における個人の形成過程に類似している。個人がそうであるように、ネーションもまた、自らが与えられた環境の中で、様々な葛藤に苦しみつつも、やがて、「自らが何者であるか」を説明する固有の論理を作り上げる。こうしてネーションの自我は安定し、ネーションは自らの定めた基準に従い、自らが自らの利益と信じる方向へと行動をはじめる。

 思うに、国際関係を考える上で、ナショナリズムについて語ることの最大の意義は、このような各々のネーションが独自に保有する、ナショナリズム固有の論理を明らかにすることにより、ある特定の政治的事象における、各ネーションの一見「非合理的な」対応を、「合理的」に説明することであり、また、来るべき国際問題に対する各ネーションの対応の予測可能性を増さしめることであろう。

 本報告は、以上のような問題意識から、韓国ナショナリズムとその固有の論理の形成過程と、それが独立より今日までの韓国の、対日、対米政策について与えて来た影響について考察する。より具体的には、その考察は以下のような順序で行われることとなる。

 まず、第一に、一九世紀末から李承晩政権期までの韓国ナショナリズム形成過程と、その固有の論理について考察する。ここにおいて重要なのは、与えられた国際的・国内的環境が、韓国に対して自らが「小国」との認識を強制し、韓国ナショナリズムが一貫してこの意識との葛藤を強いられたことである。韓国は、このような葛藤の中、日本や西洋諸国のそれとは全く異なるナショナリズムの論理を獲得することとなる。第二に、以上のような韓国ナショナリズムの論理において、日米がどのような存在であると位置づけられ、また、どのような役割を期待されているかについて考察する。ここにおいて、日本は言うに及ばず、アメリカもまた、近代の当初から、韓国ナショナリズムの論理において特殊な地位を占めた国であり、それ故、日米両国が、安全保障や経済問題のみに限らず、韓国ナショナリズムの世界観においても、極めて特殊な国であることが強調される。第三に、このような韓国ナショナリズムから見た日米韓関係の、今後の展望について、日韓の認識のズレを中心に議論する。


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