計画の破たんが明らかになればなるほど、問答無用の強引な姿勢が目立つようになった。

 昨年9月30日の知事選で、玉城デニー知事が当選したとき、安倍晋三首相は「結果を真摯(しんし)に受け止める」と語った。

 辺野古埋め立ての是非を問う2月24日の県民投票で、反対が投票総数の約7割を占めたときも、やはり同じ言葉を使った。

 5日の参院予算委員会で県民投票の結果について問われたときも、首相は「真摯に受け止める」と語っている。

 その言葉は行動に移されているか。

 政府は玉城氏当選からわずか半月で工事再開に向けた手続きに入り、昨年12月、土砂投入に踏み切った。玉城知事が菅義偉官房長官に直接会って工事中止を申し入れた翌日のことである。

 1月下旬には辺野古崎から南東に延びる「N4」護岸(約135メートル)工事を始めた。

 4日には、「N4」から大浦湾側に延びる「K8」護岸の造成工事に着手した。

 5日の参院予算委員会で岩屋毅防衛相は、県民投票の結果にかかわらず工事だけは継続する考えだったことを明らかにした。その方針を了承したのは安倍首相だ。

 工期も経費も明らかにしていないのに、工事だけは続ける。尋常の神経ではない。

 おごり高ぶって、人を見下し、謙虚さがないことを「傲岸不遜(ごうがんふそん)」と言う。

 政権の辺野古対応は、まっとうさや冷静さを完全に失い、民主主義の軌道を大きく外れてしまった。

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 大浦湾側の軟弱地盤の改良工事のため、砂の杭(くい)をおよそ7万7千本も打ち込む。

 県は、工期が13年、総事業費は約2兆5千億円に膨らむ、と試算する。

 軟弱地盤だけではない。今月に入って、地質学の専門家らが調査したところ、活断層が存在する可能性が高いことも明らかになった。

 政府は2017年に「辺野古沿岸域に活断層が存在するとは認識していない」との答弁書を閣議決定したが、データは公開されていない。

 近くに辺野古弾薬庫があることを考えれば、活断層が存在するかどうかは、安全性にかかわる極めて重要な要素である。

 安倍首相は「一日も早い普天間飛行場の返還」を強調するが、地盤改良に伴う工事の長期化は避けられない。

 辺野古に固執すればするほど普天間返還が遅れるのは確実だ。

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 玉城知事が正当な民主的手続きに基づいて埋め立ての中止を求めている以上、いったん工事を止め、話し合いを継続するのが筋ではないか。

 壊れかけた民主主義をまっとうな軌道に戻すのは、今しかない。この機会を逃して工事を強行し続ければ、さまざまな分野にマイナスの影響が及ぶのは確実だ。

 米海兵隊は「日本防衛を目的として」沖縄に駐留しているわけではない。海兵隊のオスプレイは離島防衛を目的にした装備ではない。

 今こそ基地負担を巡る国民的議論が必要である。