同性婚を認めないのは、憲法の婚姻の自由を侵害する-。そう訴えて同性カップルらが国に損害賠償を求め一斉提訴した。同性婚は今や世界の潮流である。多様な価値観で考えるべきテーマである。
物事は変わるものも、変わらないものもある。変わるのは人々の考え方が変わっていくから。価値観は文物や文化などに大きく左右され、他国との交流でさらに劇的に変化を遂げていく。
米国の同性婚の場合は、二〇一五年に連邦最高裁が「同性婚は合憲」と判断した。その前に「結婚は男女間に限る」とした連邦法に「法の下の平等を定めた憲法に反する」と判決を出してもいた。米社会を二分していた問題に区切りが付いた。
遡(さかのぼ)れば、こんな判決もあった。一九六七年。やはり米連邦最高裁が異人種間の結婚禁止法を違憲とした。白人と黒人の結婚は、一部の州では禁止だったのだ。
日本でも家制度により結婚相手も親同士が決めることが多かった。これが本人同士となったのは戦後の日本国憲法の定めによる。その憲法二四条には「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」と定められている。
「両性」の言葉について解釈が分かれている。つまり男女と判断すれば「同性婚は違憲だ」となる。一方で両性とは男女に限定されず、それぞれ両方の性を指すのであり、「同性婚は合憲だ」との解釈も生まれる。合憲説を支えるのは、法の下の平等であり、個人の尊重であろう。
十四日に国に損害賠償を求め、東京、札幌、名古屋、大阪の四地裁に提訴したのは計十三組の同性カップル。各自治体に婚姻届を提出したが、受理されなかった。
政府は昨年五月に閣議決定した答弁書で、憲法条文は同性婚を想定していないとの見解を示していた。それが日本の現実だ。
そのため同性カップルは法的な結婚ができず、お互い法定相続人になれなかったり、税制上の配偶者控除を受けられないなどの不利益を受ける。少数かもしれないが、私たちの社会に現実に困惑している人たちがいる。
国内では一五年以降に東京都渋谷区など十一の自治体が「パートナーシップ制度」を設け、同性カップルの存在証明をする取り組みが広がってはいる。だが、法律上の地位には至らない。
海外ではもはや欧米を中心に二十カ国以上が同性婚を認める。先進七カ国では日本のみ孤立する。
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