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【社説】

イラン革命40年 対立の火種をあおるな

 革命で打ち立てた、世界でも類のないイスラム共和制を守り続けてきたイラン。しかし、米国との対立や経済疲弊などで希望は見えにくい。地域の平和安定のためにも多国間の支えが必要だ。

 脱イスラム化や貧富の差の拡大に反発する民衆のデモが広がり、亡命していたシーア派聖職者ホメイニ師が帰国。四十年前の二月十一日、王制を打倒した。四月にイスラム共和国樹立を宣言した。その年十一月に学生らが米大使館を占拠。救出に失敗した人質が四百四十四日間拘束され、メンツをつぶされた米国とは断交、経済制裁が続いた。革命は周辺国には広がらず、イランは孤立する。

 革命の結果、もたらされたのは自由ではなかった。イスラム教に基づく政治が敷かれ、報道は厳しく規制される。八年間にわたる対イラク戦争下の結束、電化や道路などのインフラ整備が体制を支えた。経済低迷は続いた。

 二〇一五年、米英仏独ロ中との協議の末、核開発制限に合意、光は見えたはずだった。しかし、米トランプ政権は一八年、核合意から離脱、制裁を再発動させた。

 実生活への影響は大きい。

 英フィナンシャル・タイムズ紙によると、オーストラリアに移住していたイラン人エンジニア(44)は核合意後、帰国して貿易会社を起こしたが、制裁再開後に収益は半減したという。海外移住を目指す若者らも増えている。

 革命後生まれが、今や人口の六割。最高指導者ハメネイ師(79)ら指導部の高齢化も目立ち、世代交代も視野に入れねばならない。

 イランはイスラエルを国と認めず、サウジアラビアとは断交。シリアではアサド政権を支援し、ロシアと連携する。地域大国イランの混乱は中東、国際社会にも直結する。

 トランプ政権はイラン包囲網を画策するが、追い詰めれば国内の強硬派を勢いづかせる。むしろ、国際協調路線を続けられる利点を見いだしたい。

 欧州は米国抜きでも核合意を守る決意だ。ドルを介さないイランとの貿易で制裁を回避する仕組みを検討中という。

 日本も核合意を支持する。十三日にはイランのラリジャニ国会議長が来日、安倍晋三首相と会談した。イランは日本への第六位の原油供給国(一七年)。輸入禁止を求める米国の制裁は今のところ猶予されている。今年は国交九十周年の節目でもある。核合意など国際協調の基盤を守るべきだ。

 

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