問われるべきは安倍政権の姿勢だ。きょう告示される沖縄県民投票。辺野古の沿岸には軟弱地盤が横たわり、新基地建設は工期も工費も見通せない。展望なき難工事を続ける意味はあるのか。
県民投票は米軍普天間飛行場の移設に伴う辺野古新基地建設を巡り、沿岸埋め立てについて賛成、反対、どちらでもないのどれかで答えてもらう。投票は二十四日。
この際、県民のみならず国民みなが認識すべきことの一つに建設工事の現状がある。
政府は二〇一七年四月、護岸建設に着手。昨年十二月、辺野古崎の南側区域で土砂投入に踏み切った。しかし、北東側の埋め立て区域の海底には軟弱地盤が存在する。安倍晋三首相は一月末、地盤改良のための設計変更が必要になると国会答弁で認めた。
ボーリング調査の杭(くい)が何もしなくても沈む「マヨネーズ状」と形容される地盤。地元紙などの取材によると、水深三〇メートルの下に厚い部分で六十メートルの層になっている。
防衛省側は、六十五ヘクタールにわたるこうした地盤を固めるため約七万七千本もの砂杭を打ち込む計画という。専門家は国内では例がない難工事になると予測している。
北東側には希少サンゴが多数生息する。環境に計り知れない影響を与えるのは確実だ。工期も工費も大幅に膨らむだろう。
県は昨年十一月、地盤改良に二万本の杭を打ち込むと想定して新基地完成までに十三年の工期と二兆五千五百億円の工費が必要との独自試算を出した。杭の数が四倍近くではどうなるか。
一方、岩屋毅防衛相は県の埋め立て承認撤回に対し行政不服審査法上の審査請求をしていることなどを理由に何ら見解を示さない。
そもそも防衛省は三年前までのボーリング調査で軟弱地盤の存在を把握したが、公表しなかった。
昨年三月、県民が情報公開請求で問題を指摘しても詳細を追加調査中として認めない。設計変更不可避の事態が基地反対論を勢いづけると考えたのか。素知らぬ顔で別海域では土砂投入を進める。不誠実極まりない。
県民投票で判断されるのは、埋め立ての賛否だけでなく不都合を隠したまま工事を強行する政権の姿勢でもある。工期が不明なら政権が繰り返す「一日も早い普天間返還」は現実的約束と言えない。
日米安保は重要とはいえ、本当に新基地は必要なのか。湯水のように税金を投入していいのか。私たちも県民と共に考えたい。
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