きのう行われた衆院予算委員会。統計不正を巡り、厚生労働省の大西康之元政策統括官を参考人として呼んだが、与党は質問せず、野党の質問も精彩を欠いた。全容解明へ与野党に奮起を促したい。
昨年七月から今年一月まで統計などを担当する政策統括官を務めた大西氏は、統計不正への初動対応のカギを握る人物だ。その後、別の統計の不正を巡る報告漏れを理由に事実上更迭され、与党側は現職ではないとして国会への参考人招致要求を拒否。野党側は「証人隠し」と批判していた。
与党が招致に応じたのは野党の要求を受け入れ、二〇一九年度予算案の審議入りを円滑にして年度内成立を確実にする国会対策上の理由からだ。積極的に全容を解明しようとする姿勢からは程遠い。
統計不正問題は政策基本となる政府統計への信頼を揺るがせただけでなく、雇用保険などの過少給付を招き、予算案組み替えという重大な事態を引き起こした。
与野党に関係なく、国会が行政監視機能を発揮して原因究明と再発防止を主導すべき問題だ。
参考人招致は本来、国会対策の取引材料とすべきではない。与党は態度を改め、自ら進んで全容解明に努めるべきではないか。
予算委には、統計不正を調査する特別監察委員長を務める樋口美雄氏も参考人として出席したが、あくまで労働政策研究・研修機構理事長の立場だとして、統計不正に関する質問には答えなかった。
この口実はいかがなものか。監察委の調査は、職員らへの聞き取りに同省幹部が同席するなど中立性や正確性を欠くと指摘された。立場を使い分けず、国会による調査には真摯(しんし)に応じるべきだ。
野党側にも注文がある。大西氏の招致は野党側の要求で実現したが、せっかくの解明の機会を生かし切れたとは言えないからだ。
大西氏は毎月勤労統計の不正を知ったのは昨年十二月十三日で、上司への報告は五日後だったと明らかにした。厚労省の機能不全をあらためて浮き彫りにしたことは成果なのだろう。
ただ、問題の核心は統計不正がなぜ始まり、長年発覚しなかったのか。昨年なぜ、ひそかに補正したのかだ。当時の担当者に直接たださなければ明らかにはなるまい。
全容解明には歴代の政策統括官ら統計担当者を参考人として国会に招致すべきだ。特別委員会を設置して集中的に審議する方法もある。大西氏の招致は全容解明に向けた一歩にすぎない。
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